- 『黒の大陸 X章 「形見」』 作者:Rue / 未分類 未分類
-
全角965.5文字
容量1931 bytes
原稿用紙約3.85枚
騒動も一段落し、
光慈と仁は本部へと歩いている。
第6居住区と本部との間は何もない荒野だ。
「傷大丈夫か?光慈。」
「ああ、血ももう止まった。」
「そうか。」
「それより・・・、」
光慈には気になることがあった。
仁の様子がさっきからおかしい。
疲れて力が入らないのか、
足を引きずっている。
「お前こそ大丈夫か?」
「あ?」
「足、引きずってるじゃねーか。」
「へへ、ちょっと疲れたか・・・、
うっ・・・!」
仁はその場にうずくまった。
「仁!」
光慈は肩に手をかけようとした。
しかし、仁はそれを払いのける。
「仁・・・?お前どうし・・・。」
仁の全身が軽く痙攣している。
光慈の言うことは聞こえていないようだ。
「仁・・・!?」
「うぁあああああ!!!」
間違いない。
仁は『SATAN』に感染したのだ。
「ああああああ!!!!」
仁は光慈に向かって突進してきた。
光慈は仁を受け止めたが、
吹っ飛ばされてしまう。
光慈はすぐに体勢を立て直した。
しかし、なお仁は突っ込んでくる。
「仁!!」
仁の動きが止まった。
まだ、人間の心が残っているようだ。
「う・・・光慈・・・。」
「仁!大丈夫か!?」
「へへ、大丈夫なわけ・・ないやろ・・・。」
「仁・・・?」
「光慈・・・頼んでええか?」
「な・・・なんだ?」
仁は大きく息を吸った。
「俺を・・・殺してくれ・・・。」
光慈は耳を疑った。
「な・・何を・・・。」
言い終わる前に、仁からナイフが
飛んできた。
光慈はとっさに受け取る。
「頼む・・・人の心を・・・
失う・・前・・に・・・。」
光慈の頭の中に、
仁との思い出が浮かび上がる。
しかし、光慈はそれを必死に消し去ろうとした。
「俺は・・ウィルスなんかに操られるなんて・・・
まっぴらだ・・。その前に・・・光慈、お前の手
・・・で・・。」
仁は再びうずくまった。
しかし、必死に立ち上がろうとする。
「・・・早く!!」
その時、光慈の中で何かが崩れた・・・。
「うぁああああ!!」
光慈は仁に向かって突進し、
その胸にナイフを突きたてた。
仁は光慈に寄りかかるように倒れる。
「ありがとな・・・親友・・・。」
仁は息を引き取った。
光慈は仁のものだったナイフを見つめている。
仁の父親の形見だったナイフが、
今は仁の形見になってしまったのだ・・・。
-
2003/11/09(Sun)23:05:18 公開 / Rue
■この作品の著作権はRueさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
これもW章と同じで作り直しです。
ついでに一部(本当にほんの一部)書き直してみました。