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『一番当たるのは?』 作者:PAL-BLAC[k] / 未分類 未分類
全角1512文字
容量3024 bytes
原稿用紙約5.35枚
 ある日の午後、相羽氏はデパートの占いコーナーを訪れた。
 「ひとつ、運勢でも見てもらおうかな」
デパートの1階分のフロアを全部使っているだけに、占いの数もたくさんある。
手近なところで、入り口付近の手相占いに入ってみた。

ブースの中には、白髭を伸ばした老人が座っていた。
 「私の運勢を見てもらいたいんですけどね」
狭い、カーテンで仕切られたスペースに入り、占い師の前に座りながら言った。
 「では、手を出してください」
そう言って、年老いた占い師は手相見を始めた。
 「あなたのこれまでの人生は可もなく不可もなく流れたようですな」
 「よくわかりますね」
びっくりして相羽氏は言った。
 「今後の人生も、同じように流れるでしょう」
 「それじゃぁつまりませんね。何かありませんか?」
そう聞かれて、老占い師は落ち着き払って言った。
 「大きな運命の転機はそう簡単にはやってきませんよ」
 「そういうものですかねえ」
相羽氏は、代金を払って出て行った。

人間、平凡だとか、可もなく不可もなくなどと言われて潜在的に反発する人がいる。
相羽氏もそんな一人だった。
 「他の占いにも行ってみるかな」
そう考えて、手近のタロット占いのブースに入っていった。
 中には、黒いベールをかぶった中年の女性が座っていた。
 「何をお望みですか?」
そう聞かれて、相羽氏はさっきと同じ事を聞いてみた。
 「運勢を占ってもらいましょう」
 「では・・・」
そう言うと、占い師はカードをきった。
カードを並べ、一枚めくった。
 「あなたの上に、大きな変化の兆候が見られます」
相羽氏は、俄然興奮して聞いた。
 「それはなんなんですか?」
 「今後のあなたの生き方を変えるような大きな出来事のようです」
次のカードをめくる。
 「・・・ですが、その兆候は大変にわかりにくく、気づかないこともあるでしょう」
結局、変わらないんじゃないか。そう思って、相羽氏は後にした。

このままでは気持ち悪い。他の占い師に見てもらおう。
そう思うと、今度は、人相見の店の行列に加わった。
しばらく待たされて、相羽氏の番が回ってきた。
 「次の方、お入りなさい」
声に促されてブースに入ると、仕事に疲れた、といった風情の中年が座っていた。
 「実は・・・」
相羽氏が用件を言う前に、遮られた。
 「わかりますとも。相に出ておる。運勢を占ってほしいんですな?」
言い当てられて、相羽氏は仰天した。
 「よ、よくお分かりで」
 「いいですか。運勢というものは心構えひとつで変わるものだ。占いに惑わされてはいけませんな」
 「はぁ」
呆気にとられてうなずく相羽氏。
 「あなたは、人の意見に惑わされやすそうな顔をしておる。注意しなされ」
何がなんだかわからずに相羽氏の占いは終了し、規定の料金を払った。

 「さっきのは、本当に占いなのか?」
勢いに押し流されただけというような気が相羽氏にはした。
もうちょっと見定めて入らないと駄目だな。そう思った相羽氏は、店の入り口の看板を見ながら
どんどん奥に進んでいった。
奥まで行くと、「総合案内」という看板の出ているブースがあった。

 「ここは案内かな?」
総合案内のブースに座った青年に相羽氏は聞いた。
 「そうです」
 「数が多くてどこにはいろうか迷うんだよね」
そう言われて、青年は何度も頷いた。
 「わかりますとも。そういった相談が一番多いんです」
 「それなら話は早い。どこの占いが一番いいんだい?」
 「そうですね・・・。そこのブースでどこが一番当たるかを占ってもらってはいかがですか?」

                                              <了>
2003/11/09(Sun)20:20:57 公開 / PAL-BLAC[k]
http://www.smat.ne.jp/~pal
■この作品の著作権はPAL-BLAC[k]さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ま、ありがちな占い話です。

・・・本当に言われた日にはキレかねない位な案内役です(笑)。
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