- 『とある喫茶店にて 〜美容と健康の紅茶を〜』 作者:神崎盛隆 / 未分類 未分類
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原稿用紙約9枚
ある日。
主婦の私は、家事などを済ませてゆっくりとテレビを見ていた。サッカーの試合や野球。ニュースなど、どれもあんまし面白くない。その時、ある番組で手が止まる。その番組は、ダイエットや健康を中心に報道している番組で、今日は紅茶について報道されていた。私は純のコーヒー派で、めったに紅茶なんか飲んでいない。そして番組が進むに連れて、私はテレビに釘付けになる。
紅茶は美容にものすごく効果があり、健康にも良い―――
その言葉が、私の頭の中で響き渡る。そして私は、その日から紅茶にはまりだしたのあった。
番組が終わり、私はすぐさま近くのスーパーまで紅茶を買いに向かった。今日は休日だけにあって、子連れの親がたくさん買い物をしに来ている。そして紅茶などを売っているコーナーに、私はついた。すると今日は、『いろんな紅茶を飲もう!』という紅茶のイベントがそのコーナーで行われていた。それだけに、売り場にはたくさんの紅茶が並んでいる。中国産の物もあれば韓国産の物。いろんな種類があって、私はどれにすれば良いか途惑う。最終的には、近くにいた店員さんに聞いて、ちょっとお手ごろ価額の中国産の紅茶を買った。
どんな匂いがするか楽しみ。それに店員さんが言うには、市販に売ってある紅茶より、成分が多いらしいし♪
私は、胸を躍らせながあら会計を済ませ、急いで家に戻って、買ってきたばっかりの紅茶のパックを手に取り、コーヒーカップの中にいれ温かいお湯を注いだ。カップの中から紅茶の良い匂いが漂い始める。この匂いは、紅茶にしか味わえないかもしれない。そして紅茶が赤茶色になり、紅茶のパックをとって、少し飲む。コーヒーと違って苦くも無く、おいしい。その時、ふっと冷蔵庫にレモンがあることを思い出した。自動販売機とかの紅茶には、レモンティーやストレートティーなどがある。だから、この紅茶にレモンを入れればレモンティーになり、さらにおいしくなる。そしてさっそくレモンを取り出し、輪切りにして2・3枚紅茶の中にいれる。すると、最初の紅茶の匂いにレモンのいい香りが漂い始め、色が少しずつ黄色くなっていく。まるで、紅茶とレモンがダンスをしているかのよう。そしてスプーンで1・2回かき混ぜ、少しだけすすってみる。口の中でレモンのすっぱさと紅茶の味が交じり合って、とてもおいしい。
紅茶って、いろんな組み合わせでおいしくなるんだ・・・
心の中でしみじみと思う。
「なんか癖になりそう。それに、どこかのお嬢様みたいな感じがするわ」
頭の中で自分がお嬢様になったような気分になる。綺麗な花が咲く庭のテラスで、可愛らしい小鳥たちが飛ぶ中、おいしい紅茶をすすっている。そういうふうな想像を頭の中で浮かべる。
なんかこぉ、リラックスしながら紅茶の飲むと癒される。そうだ、明日の昼にでも近くの喫茶店でゆっくり休憩しよっかな。
いつのまにか、コーヒーカップの中の紅茶が無くなっていた。そして、カップに入っていたレモンを取り出し、再び紅茶をいれ、次の牛乳を混ぜでミルクティーにしてみた。紅茶の赤茶色と牛乳の白がうまく混ざり合い、綺麗な肌色になる。そしてミルクティーを少し飲んでみた。すると、なんか洋菓子が食べたくなり、棚からクッキーを取り出し、ミルクティーと共に1枚のクッキーを口の中に入れる。ミルクティーのほのかな甘味とクッキーの甘味がうまく絡み合い、こっちもやはりとてもおいしい。なんか純のコーヒー派から紅茶派に変りそうだった。
そして、次の日・・・
家の鏡で自分の顔を見ると、少し昨日より綺麗になったような感じがした。それに、なんか気分が爽快だ。やはり、紅茶の効果なのだろう。少し綺麗になった自分の顔を見て、心の中が喜びで溢れた。
そして家事を順調にこなし、ちょうど3時頃に、近くにあった喫茶店の中へ入っていた。喫茶店に来たのは、少し懐かしい。それにこの喫茶店は、ずいぶん前からあったらしく、なんか落ちつける空間だ。
「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
50代の後半ぐらいの年のマスターが、店に入ってきた私に尋ねてきた。その事に私は、紅茶とチーズケーキをくださいと言って、窓から見える綺麗な光景が見れる席に座った。青々と茂った葉が風に吹かれて揺れ、木の枝に小鳥が止まり、可愛げに鳴く。この光景だけでも癒されそうだ。
「今日もいい天気ですね」
マスターが、紅茶が入ったティーカップとチーズケーキが乗ったお皿をテーブルの上に置く。
「そうですね」
私は、ティーカップを手に取りながら答える。そして紅茶をすする。
「おいしいですね、この紅茶」
「ありがとうございます」
次に私は、カップを置いてチーズケーキに手をつける。この店のチーズケーキはとてもおいしいと、主婦達の中では評判がよくて、一度食べてみたいと思っていた。そして私は、フォークでケーキの一部を切り、口の中へと運ぶ。
「このケーキ、本当においしい!」
あまりのおいしさに、つい声を出して絶賛した。これを聞いたマスターは、ありがとうございますとにっこりを笑う。
そして私は、紅茶とケーキを一緒に食べて見る。今度は、もう声が出ないほどの美味しさで、しばらく黙りこんでしまった。
「音楽でもかけましょうか?」
黙りこんでいる私を、起こす様にマスターは、そう私に尋ねる。
「あ、お願いします」
そして、店内に音楽が流れ出す。やさしく包んでくれそうな曲の音色が、私の耳の中に入っていく。
「そういえば、最近こういう喫茶店を見かけなくなりましたね…」
しみじみと私は、そうマスターに聞く。
「そうですね。今じゃあ、ここらへんで私の所ぐらいしかないと思いますよ。ですが、私ももう今年で74。だから、明日にもこの店を閉めたいと思っているんです」
「え?そうなんですか。つい最近紅茶にはまりだした頃なのに…。それに、こんなに美味しいチーズケーキがもう食べられなくなるなんて。ちょっと残念です」
「そうですね。常連の人は、まだやっていけると言われてるのですが、もう年ですから」
「年はとりたくないですね…」
「ごもっともです。しかし、これも定めなのだから逆らえません。そうです、特別にこの紅茶の葉をあげましょう」
するとマスターは、棚から少し古びた箱を取り出して、私の前に置く。箱の蓋に『美健紅茶』と書かれている。
「年をとるほど良い物なるといわれている紅茶の葉です。その名の通り、あなた様の若い美容を保ち、健康になってください」
箱を開け、健やかな笑みを浮かべる。
「そ…そんな高級の物を私にだなんて……」
「お願いです、受け取ってください」
「…わかりました。ありがたくいただきます。どうもありがとうございます」
私は、マスターに浅く頭を下げる。
「どういたしまして。では、ゆっくりしていってください」
そしてマスターは、カウンターへと戻って行った。
それから、30分ぐらいが過ぎて――
私は紅茶を飲み終えて、私は席を立つ。
「ごちそうさまでした。代金はここに置いときますね」
財布から代金を取り出し、テーブルの上に置く。
「ありがとうございます。では、また会えることを・・・」
「はい。マスターもいつまでもお元気で」
私は紅茶が入った箱を持ち、喫茶店から後にした。
次の日――
この喫茶店は、閉店していた。喫茶店のドアには、マスターからの手紙が貼ってあった。まるで、私が来る事を予測していたかのように。
手紙の最後には、こう書いてあった。
『一杯の紅茶で、幸福と健康と美容と安らぎを』と――
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■作者からのメッセージ
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