- 『紅い髑髏(レッドスケル) 第三話』 作者:輝 / 未分類 未分類
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原稿用紙約6.95枚
―――帝都。王城にて。
「・・・・はぁ。」
机につまれた膨大な書類を前に、ため息をついている青年が一人。
そう、彼こそが若干21歳で第157代目帝王である、
フェルロン=サムエルその人である。
宿題に切羽詰った学生のような表情をしている彼は、とても巨大な帝国全土を統べる王には見えなかった。
「・・・疲れた・・・。」
そう一言呟いて、机にバンッと突っ伏した。
それと同時に扉がドンドンと叩かれる。
「陛下??入りますよ。」
「はぁ〜い、どうぞー。」
「・・・なんですか、その情けない返事は。」
扉を開けて、また新たな書類を抱えた青年が入ってくる。
彼の名はリーグ・クスファ。
軍の養成学校に通っていたころから、フェルロンにくっついてきた後輩である。
今は頼りになる帝王補佐だ。
リーグは書類を机の上に乗せると、未だ突っ伏したままのフェルロンを見、ため息をついた。
「陛下。何時間机に座ってますか?」
「・・ん?」
「前に寝たのは何時間前かとお聞きしているんです。」
「あ〜・・えっとぉ。・・いつだったかな?」
「全く・・・。」
再び深いため息をつくと、失礼、と一言言い置いてからフェルロンの腕をつかんで椅子から立たせた。
そのまま隣の寝室へと続く扉まで引っ張っていく。
「おい、リーグ・・」
「今から10時間はベッドで睡眠をとること!!
そうしないと公務の続行は認めませんよ!!」
「いや、だってなぁ・・まだ今日中に片付けなきゃいけない書類が・・。」
「そんなものは私が代理としてやっておきます!!」
フェルロンをベッドに押し込むと、リーグはさっさときびすを返した。
そのまま出て行ってしまうかと思ったが、彼は扉を閉める直前に小さく呟いた。
「・・陛下はもっと自分のお体を大切になさってください。
そうでないと、いつか本当にお倒れになられますよ。」
扉が静かに閉められる。
フェルロンはベッドに転がったまま、苦笑した。
「相変わらず心配性なんだからなぁ・・・。」
ベッドに横になると、疲れがどっと押し寄せてきた。
やはり、少し無理をしたかもしれない。
ここはリーグの言葉に甘えて、休ませてもらうことにした。
うとうとしかけて、ふと気付く。
「・・アイツらは上手くやってるかな・・・・。」
――そして当のアイツらは。
「・・・ガイさん。」
「何だよ、静かにしやがれ。見つかっちまうだろ。」
「いや、でもさぁ・・・。何スか、この格好。」
深夜の城に忍び込んだ二人。
壁から顔だけだして辺りの様子をうかがっているが・・・・。
その服装はまるでスパイ。真っ黒。
「アレだよ。いわゆるス○゜イ大作戦。」
「何だよ、それ・・;;」
辺りに誰もいないことを確認する。
城の中は、奇妙なくらい静まり返っていた。
「じゃぁ、俺ぁ右だ。」
「じゃぁ俺は左。」
それぞれ鞘から剣を引き抜いて。
刃先をキン、と打ち合わせる。
「目的はヘンルーグ卿を殺すことだ。それ以外のモンにかまうなよ。」
「はい。」
「落ち合い場所はさっきんトコな。夜明けまでに来い。来なかったらおいてくぞ。」
「オッケー。」
それだけ言って、二人共それぞれの方向へ走り出した。
思い出したようにガイが叫ぶ。
「死にやがったらブッ殺すぞ!!」
「そっちこそ!!」
一瞬目があって。
二人は同時にふきだした。
敵陣だというのに大声で笑いながら。
それぞれ目的に向かって駆けていく。
その言葉の無意味さは分かってる。
知ってるから。アンタの強さを。
信頼してるから。お前の忠義を。
だから、俺は全力で戦える。どこまでも走っていける。
「ありゃりゃ。」
ある一室に足を踏み入れたところで、ユアンは嘆息した。
「まいったなー、どうやら俺が当たりくじだね。」
口調は余裕そのもの。
しかし、辺りから迫り来る殺気に、慎重に気をくばっていた。
「ガイさんはハズレかぁ・・。怒ってるだろうなぁ・・。」
ドン、と壁のスイッチを突く。一瞬にして灯りがともる・・・。
そこには・・・。
「ヘンルーグ卿、我が主、いと高きフェルロン陛下への忠義のもと、アンタをこの場でぶっ殺すぜ。」
そこには、ヘンルーグ侯爵と、総勢30名の兵士が臨戦態勢で待ち構えていた・・・・。
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2003/11/08(Sat)11:45:58 公開 /
輝
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■作者からのメッセージ
えーと・・。どうやら次で一段落つきそうです。
皆様、あたたかい感想をありがとうございますm(_ _)m
こんなものを読んでいただいて感謝極まれりって感じです〜。
風邪は根性でなおしました笑
今週テストがあるもんで;;