- 『君といた、夏。』 作者:あゆむ / 未分類 未分類
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 原稿用紙約18.15枚
 
 
 君といた、夏。1
 
 
 
 
 
 
 
 季節は、夏。
 
 梅雨も明けて、だんだんと本格的な夏になってきた。
 
 期末テストも終わって、私たちの学校はもうすぐテスト休みに入る。
 
 そのテスト休みが終わったら、夏休み。
 
 覚えてる?最初に会った日。
 
 私は今でも鮮明に覚えてるよ。
 
 こんな私を、君はバカみたいって笑うかな?
 
 
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 「夏休みの講座は欠点だった奴は全員出席するように。サボったら宿題た〜っぷり出るからな。反省文も。」
 
 「なんでぇー!?最悪〜!!」
 担任の言葉にみんな文句をいう。
 
 「うるさーい!!だったらちゃんと勉強すればよかっただろうが!!」
 みんなが騒いでる。確かに担任の言う通り勉強すればよかったんじゃないのかな。
 
 「ね、亜子は夏期講座出るのある?」
 前の席の加奈子が聞いてくる。
 「んや、なんとか全部でなくて良さそうなの」
 
 「うわぁいいなぁー!!私なんか3教科も出なきゃいけないよ〜〜・・・」
 
 「あははは、頑張ってぇ〜」
 
 「あーぁあ・・・ちゃんとやっとけば良かったなぁ。亜子はちゃんとやってたんでしょ?」
 
 「努力家だもん」
 私はふざけて言う。
 
 「・・・・・・・・・・」
 
 「冗談だよっ本気にしないでよ」
 
 「夏休みどこか行くの?亜子なら講座ないし遊び放題じゃん」
 
 「別にどこも行かないけど・・・」
 
 「けど?」
 
 「おばあちゃんの家に行くの。3年ぶりなんだぁ。部活とか受験とかで行けなかったから。」
 
 「何だ行くんじゃん。いいねぇ。いつから行くの?」
 
 「明日かな」
 
 「いつまで?」
 
 「新学期まで帰ってこないっvv」
 
 「はぁ!?なんで!?」
 
 「おばあちゃんの家大好きなんだぁvv食べ物おいしいし海は近いし近所の人もみんな良い人ばっかだし田舎だしっ」
 私が一気にそう言うと、加奈子は呆れ顔で私を見た。
 
 「なによぅ。いいじゃん久しぶりなんだから!!」
 
 「はいはい。楽しんできてくださいー」
 
 「こらぁ!!山崎亜子!!橋本加奈子!!うるっさいぞ静かにしろ!!」
 担任に怒られてしまった。私たちはカメみたいに首をすくめた。
 
 高校受験が終わった。入学式があった。高校生になった。新しい友達が出来て、行動範囲も広がった。
 ただ、勉強が大変で部活には入らなかった。中間テスト、体育祭、期末テスト、テスト休み、そして
 
 高校初の夏休みだ!!!
 
 夏休みはおばあちゃんの家に行くことにしていた。中学校の時は一回も行けなかったから今回は夏休み全部行く事にした。
 私の名前は山崎亜子(あこ)。私立の女子高に通ってる、高校1年生。
 最初は女子高に抵抗があったんだけど、入ってみると楽しくて楽しくて!!
 毎日を笑いながら過ごしていた。
 
 
 
 「亜子、忘れ物ない?おばあちゃんにこれ渡して。迷惑かけないでよ」
 
 「はぁい。行ってきまーす!!」
 私は元気良く切符を改札口に通す。新幹線なんて久しぶり。
 私の住んでる所から、おばあちゃんの家までは新幹線で2時間くらい。
 そして駅からタクシーで30分くらい。
 久々に乗り物連続で乗ったから、腰が痛くなってきちゃった。
 
 「どうもありがとう」
 タクシーの運転手さんにお礼を言う。
 タクシーを降りると、私は家に向かって歩き出した。
 久しぶりだなぁ・・・あんまり変わってないね。なんか嬉しい。
 大きな芝生の庭があって、納屋のそばに犬小屋がある。
 おばあちゃんの家だ!!
 私は走って行って玄関を開ける。
 
 「おばあちゃんただいま〜!!」
 声を張り上げると、おばあちゃんがひょこっと顔を出した。
 
 「あれあれ、亜子。久しぶりやねぇ〜」
 すると向こうの部屋から声が聞こえた。
 
 「ばあちゃん誰?」
 
 「孫の亜子だよ。久しぶりに来てくれたねぇ。ほら、上がんなさいな」
 男の人の声だった。
 
 「おばあちゃん誰かいるの?」
 ふすまを開けると、そこには少しつり目気味で、ツンツン頭の男が座っていた。
 
 「なっ・・・おばあちゃんこいつ誰!?」
 すると男はかったるそうにこう言った。
 
 「初対面の奴に向かってこいつとか言うなや。一応女なんだろ。ばあちゃん俺帰るわ」
 そう言うと男は私の横をすり抜けて出て行った。
 
 「な・・・んなのあいつ!?おばあちゃんあいつ誰なの!?」
 
 「こらこら、亜子。そんなこと言ったらアカンよ。あれは3年前に引っ越してきた侑(すすむ)くんよ」
 
 「ススムクン?こんなトコに引っ越してくるなんて珍しいね」
 
 「そうねぇ。8年位前に俊樹君たちが引っ越して以来だもんねぇ」
 
 「俊樹!!久しぶりだぁ!!俊樹元気!?」
 私はパッと笑顔になる。俊樹(としき)はおばあちゃんの家に来るといっつもいっつも一緒に遊んでた幼馴染みたいなもの。
 同じ高1なんだ。
 
 「会ってきなさいよ。きっとカッちゃんや彩もいるよ」
 「・・・うん!!行ってくるっ!!」
 
 そう言って家を飛び出した。
 カッちゃんは23歳。トラックの運転手やってるんだよ。理系が得意でいっつも宿題とか教えてもらってたの。私のお兄ちゃんって感じ。彩は21歳でカッちゃんとは幼馴染。彩には色々と教えてもらった。お化粧のこととか、オシャレのこととか。彩も私のことを小さい頃からすごく可愛がってくれた。久々にみんなに会えると思うと嬉しくて、私は走って俊樹の家まで行った。
 
 「こんばんわぁ〜!」
 ガラガラと扉を開けるとまた私は大声で言った。
 
 「ハイハイ誰・・・あらぁ亜子ちゃんやないの!!久しぶりやねぇ〜!すっかり大人っぽくなっちゃって!
 俊樹〜!!亜子ちゃん来たで〜!!」
 俊樹のお母さんだ。
 
 「亜子ぉ!?」
 2階のほうから俊樹の声がした。
 
 「へへへっ俊樹ぃ久しぶり〜!!」
 久しぶりに会った俊樹は、3年前とはかなり変わっていた。
 背も高くなって、声も低くなった。顔つきも変わったような気がする。
 
 「おーめっちゃ久しぶりやん!!学校とかどうなん?あ、ってか上げってけや。彩来とるで。」
 
 「マジ?やった久しぶりだぁvvカッちゃんは?」
 
 「カツは仕事やってさ。でもほかの奴も来とるし・・・高校の事いろいろ聞かせてや」
 
 ほかの奴?誰か他にいたっけ・・・?
 そう考えながら、靴を脱いで上がらせてもらった。
 2階の俊樹の部屋へ上がる。
 
 「彩ぁ〜亜子来たで〜!!」
 
 「うっそマジ!?キャー!!いやん亜子やん!!めっちゃ久しいなぁ!!」
 
 「あはは、彩久しぶり〜vv」
 そう言って私は彩に抱きついた。
 
 「オレ、なんか飲むモン買ってくるわ」
 俊樹は部屋を出て行った。
 
 「ありがと俊樹っ!も〜何でぜんぜん来てくれんかったんよ〜めっちゃ寂しかってんで!?」
 
 「ごめんね〜部活とか、受験とかで来れなくって」
 
 「どれくらいいるつもりなん?」
 
 「新学期までずっとだよvv」
 
 「ホンマに!?海とか買い物とか行こうなぁvv」
 
 嬉しい。すごく嬉しい。
 みんな外見は変わったけど、中身は変わってないみたい。
 みんな昔のままで。
 
 「うるっせぇなぁ・・・」
 男の声が聞こえた。
 
 え?この声さっきの・・・
 
 声が聞こえた場所を見ると、さっきおばあちゃんの家にいた「あいつ」が座ってた。
 
 「ギャー!!!何であんたがここに居るのよー!!??」
 
 「え?なに?ススムと亜子知り合いなの??」
 彩が聞いてくる。
 
 「そんなわけ・・・」
 私の声をさえぎって
 「んなわけねぇだろ。こんな女」
 「ススム」はそう言った。
 
 「あんたねぇ!!何なのよさっきから!!あんたの方が十分失礼じゃん!!」
 私、叫ぶ。
 
 「ん〜?話がいまいち見えないぞ?何で知ってるの?」
 彩が不思議そうに聞いてくる。
 
 「こいつがさっき・・・」
 そう言いかけた「ススム」の言葉を、今度は私がさえぎってやった。
 「こいつがさっきおばあちゃんの家にいたの!!」
 
 ススムが睨んでくる。そんなこと構うもんか。なんなのよこいつ!!
 「お前女なんやからもうちょっと女らしくしろよ」
 
 「あんたに言われる筋合いなんかない」
 
 彩がハラハラしながら見てる。
 そして、こう言った。
 
 「ススム!そんな照れんでもいいやんか!!も〜いっつもこうやわ。亜子も!!ちょっと言い過ぎやで!?」
 
 「・・・誰が照れてるねん」
 ススム不機嫌そうに言った。
 
 「照れ隠しでしょ?ススムがここに来たときもそんな感じだったやん。あ〜〜!!もしかしてぇ〜〜亜子に、惚れちゃったぁ〜〜〜?」
 彩がニヤニヤしながら言う。
 
 ――ビックリした。
 だって、だっていきなり「ススム」のほっぺたが赤くなったから。
 
 「!!ちっげえよバカ!!帰る!!」
 そう言い捨てて、「ススム」は帰っていってしまった。
 
 「・・・・・・」
 ちょっと、照れた。
 嘘かもしれないけど、あんな反応・・・初めてだったから。
 
 「う〜〜〜ん・・・亜子〜あんまり気ぃ悪くせんとってな?」
 
 「彩ぁ・・・あいつ・・・?」
 
 「3年前・・・ちょうど亜子がこなくなった年やね。うちの隣に引っ越して来てんよ。ものすっごい照れ屋やねんで。私と最初にしゃべったときもあんな感じやったわ。亜子みたいに言い返したりはしなかったけどね」
 笑いながら彩は言う。
 
 「いくつ?」
 
 「ススム?高・・・2やで。でも高校行ってないねん」
 
 「え・・・」
 
 「おいおいなんやぁ!?ススムものすっごい怒っとったで??」
 驚きながら俊樹が入ってきた。手に4つのジュースを持っていた。
 1つは余分になっちゃったね。
 
 「・・・知らないっあんな奴!!」
 私は俊樹からウーロン茶を奪って蓋を開けた。
 
 「あんま嫌うなよ〜俺の親友やねんから」
 
 「誰にでもあんなんなの?」
 
 「いや?あんなんって?」
 
 「私に対してめっちゃくちゃ態度悪い!!」
 
 「ススムがぁ?珍しいなぁ」
 
 「・・・そんなに嫌われてるんだ・・・」
 
 「!!いや!!きっと照れ隠しやって!!だって亜子めっちゃキレイになってるしっ!!」
 
 「そんなお世辞言わないでいいですー」
 
 「お世辞じゃないよ〜〜〜ホンマにキレイになったやん!!最初ビックリしたもん!!」
 キラキラした顔で彩が言う。
 
 「嘘ちゃうでぇ?ホンマに都会っ子みたいな感じやし。ススムもビックリしたんちゃう?なぁ、彩?」
 
 「そうそう。俊樹の言う通りやと思うで。だからあんまり嫌わんといたってな?」
 
 「彩と俊樹がそう言うなら・・・うん。努力はしてみるよ」
 
 「んじゃ明日からいろんなトコ行こうな〜」
 
 「うんっ」
 
 それから3時間くらいしゃべって、俊樹の家をあとにした。
 
 家に帰ると、おじいちゃんも畑から帰ってきていた。
 おじいちゃんとおばあちゃんともいろんな話をして、お風呂に入って、2階へ上がる。
 おばあちゃんの家に来たらいつもやること、それは屋根に登ることなんだ。
 おじいちゃんの部屋と屋根はすぐ横にあって、いっつも星を見るために上ってた。
 「う〜〜ん・・・あんまり星が見えないなぁ・・・」
 ザンネン。今日はハズレだぁ〜。せっかく来たのになぁ・・・まぁでも、1ヶ月もいるんだし、いつでも見れるよね。
 
 屋根から部屋に戻ろうとしたとき、家の前の道に歩いている人が見えた。
 ・・・彩とあいつだ!!
 思わず体を伏せた。何か話してる・・・?私は息を殺して会話を聞いていた。
 
 うちの前で足を止めると彩が言った。
 
 「・・・何でそんなに亜子を嫌うん?なんか妹を嫌われたみたいでめっちゃ嫌やねんけど」
 
 「別に嫌ってるわけじゃなくて・・・あいつがケンカ腰やから、売り言葉に買い言葉」
 
 「う〜〜ん・・・確かに亜子もかなり言うようになってたなぁ・・・負けん気が強い子やからね。
 1ヵ月くらいいるみたいやし、仲良くしてや」
 
 「あっちはオレん事嫌ってるんやろ。仲良くしたくても出来ひんわ」
 
 「・・・仲良くしたいん?」
 その彩の言葉に私は思わず手で頬を覆った。
 
 「ちっ違う!!そういうことじゃなくて・・・」
 
 「はいはい照れんでいいよ〜。お姉さんは何も言いません〜」
 
 「っの野郎!!さっさとカツのトコ行けや!!」
 
 「行くよ行くよ。ススムは亜子の家寄ってったらいいのにィ」
 
 「アホか!!オレは帰るっ!!」
 
 「あぁそう?また明日ね〜。俊樹にまたあの場所に来いよって言っといて〜」
 
 「知るかっ!!」
 
 ススムは走って家へ、彩はゆっくりとカッちゃんの家の方へ歩いていった。
 
 心臓が・・・速く音を立ててる。
 
 あいつはあたしの事嫌ってない?
 
 ううん、それよりも・・・
 
 彩とカッちゃんは付き合ってる?俊樹と彩の「あの場所」?
 
 3年間の時間は、ちゃんと流れていて。
 
 私の知らない時間が、3人の間には流れてると思った。
 
 「はぁ〜〜〜〜・・・」
 
 ため息をついて屋根に寝転ぶ。
 
 3年間も来なかったら、当たり前だよね。
 
 でも・・・なんか・・・
 
 「・・・あれぇ?」
 
 気づくと、涙が流れてた。
 
 なんでかな?
 
 私だけが、違う場所にいるみたいで悲しかったのかもしれない。
 
 泣いたらダメだ!!私はグイッと涙を拭う。
 
 明日ちゃんと聞いてみよう。1ヶ月の間に、ススムと、彩と、俊樹と、カッちゃんと私の、5人だけの時間を作りたい。
 
 今年の夏休みは、期待と、不安と、切なさで
 
 充実した夏休みになると思った。
 
 
 
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■作者からのメッセージ
 夏に思いついた作品です。
 作者が関西人なので関西弁を使った話が書きたいな、と思い書きました。
 まだまだ未熟ですがよろしくお願いします。