- 『運命の機械』 作者:らぃむ。 / 未分類 未分類
- 
	全角1745文字
 容量3490 bytes
 原稿用紙約5.4枚
 『運命の機械』
 
 賑やかな繁華街にあるゲームセンター。ゲームセンター内にある診断機のような機会の前で、杏子と健司はソレを眺めていた。黒に近い紫色の機械に、パソコン位のディスプレイ。上にはディジタル時計のような、数字が表示される機能もついた機械が設置されていた。二人はなんのためらいもなく、なんとなくその機械に100円玉を投入した。ディスプレイがどことなく明るくなる。およそ二人がこの機械にコインを投入するまで、殆どのヒトが使わなかったのだろうが、とにかく、二人はその機械にコインを入れたのだ。
 少し明るくなったディスプレイに、ぼんやりと文字が表示された。
 「えっと…『誕生日を入力しろ』…?」
 杏子がディスプレイに表示された分を読み上げ、それに従って健司がパネルをタッチして入力していく。
 「お前の誕生日って11月だよな?」
 「うん、19××年の11月2日だよ」
 杏子が言った生年月日を入力して、『start』と書かれたパネルを押して、あとは結果が出るのを待つだけだ。
 ディジタル数字が事細かに動いている。パッと表示された年は、それぞれ命を落すと予想された年だ――杏子が202×年で、健司が201×年だった。――二人はその結果を見て、特に何も思わなかったが、死因の欄は、少々気にかかった。
 
 『射殺』
 
 『爆死』
 
 それぞれ、健司と杏子のものだ。機械にしては不自然な死因。
 「――これって、ゲームの機械だもんね。」
 心配そうに顔をしかめる杏子に対し、少し苦笑いしながら健司は杏子に言った。
 「そうだな、大して気にする事ないよな、ゲームだし。」
 二人はそう言って、今見た結果を忘れようとした。
 
 
 
 
 
 ―――――数年後。
 
 
 とある国と、この国の近くの国が戦争を始めた。それは、大した理由もなく、唐突に始まった。この国も危険にさらされ、20歳以上の成人男性はこの戦争に駆り出された。その中に、俺も混じった。緑色の迷彩柄の戦闘服を着て、頭を守る為のヘルメットと、腰に巻かれた弾丸と手榴弾。そして、手に重く圧し掛かる拳銃一丁。弾の確認をして、敵地に向かって銃口を定め、隊長の合図で引き金を引いた。たまに運の悪い奴が敵の流れ弾にやられて殺されたが、仕方のないことだった。運がないだけ。時には命令で手榴弾を敵地に投げた事もあった。栓抜きして、一気に投げた―――まるでキャッチボールをするかのように―――不思議な感覚がした。たった今投げた弾が爆発して、何人もの人間をこの世から無くしたのだから。実感すら、沸かない。ただ、少量の罪悪感と、杏子に対する想いのみ。
 この地にきてから、杏子のことを思わなかった日は、一度もなかった。毎日毎日、爆撃音と地響きしか聞こえないここで、杏子のことを想っていられる俺が凄いと思った位だ。――――今日も、人を殺す。何人も、何人も。死ぬ人間がいる、何人も、何人も。
 不意に聞こえた銃声。ソレは、俺の身体を貫いた。数人の仲間が、流れ弾で死んでいるのは知っていた。まさか、自分もその仲間入りとは、思わなかったから。
 
 「きょ…こ、き…ぅ、こ……―――」
 
 そうして、杏子の事を思いながら、健司は絶命した。
 
 
 
 ――――――202×年
 
 相変わらず、戦争は終わらなかった。それどころか悪化して、18歳以上の女性まで出兵しなければならなくなった。仕方がないのだ、男は殆ど死んでしまったのだから。数年前にこの戦争で死んだ健司。あたしの、愛した男は、この戦争で死んだ――いや、殺された。どう死んだのかは知らないが、とにかく、殺された。だから、あたしもこの戦争に出兵したのだ、自ら名乗りでて。
 迷彩柄の戦闘服と、支給された拳銃に、手榴弾。ゆっくり撫でて、その感触を確かめた。――これらが、あたしの愛した健司を殺したのだ。そう思うと、ゾっとした。
 
 何ヶ月か、あたしは生き延びた。凄く酷い惨劇を見ながら、あたしは生き残った―――だが、仲間と共に捕まったのだ。敵の、男兵士に。
 久々に見た男。生易しく扱うわけがない。あっという間に、あたしらはエサとなった。男の、欲望のエサに。
 悔しかった。
 だから、隠し持っていた手榴弾の栓を引き抜いた。
 あたしの、今出来る、最期の、一仕事。
 
 
 ――――――ドオォォオオォォン……‥
 
 
 
 貴方と、共に。
 
 *END*
- 
2003/11/05(Wed)20:23:15 公開 / らぃむ。
 ■この作品の著作権はらぃむ。さんにあります。無断転載は禁止です。
 
- 
■作者からのメッセージ
 意味不明なネタでゴメンナサイ。もう少し表現力が欲しいです。