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『欠片となって降る記憶』 作者:LOH / 未分類 未分類
全角1596文字
容量3192 bytes
原稿用紙約5.35枚
ココハドコ? ワタシハダレ?
幼い頃に、よくふざけて言ったことがある気がする。
今では、その子供の残酷さを感じる。

「……此処、どこ? ……私は、なに?」
まさにその状態。
目を開いた瞬間目に入ったものは、いっぱいの顔。
そして、鬱陶しいほどのすすり泣き声。
「シラン様……!!」
たくさんの真っ白なレースに、ところどころ金色の糸が目立つ。
雲の上にようなふかふかのベッドに横たわる私。
まるで……私は世界を治める将来が決まっているお姫様?
「シラン……シラン。大丈夫?」
「…………ダレ?」
「……シラン…?」
私のこの言葉が引っかかったのか、三十代後半の女性は全てを察し瞳に涙が浮かべる。
即座にその女性に駆け寄ったのは、まさにメイドを連想させる服を着た別の女。
はっきりしない自分の頭を起こそうと、私はゆっくりと重い上半身を持ち上げる。
ズキッと一瞬頭痛が来た。
反射的に頭を押さえると、自分の柔らかい髪に触れた。
初めて触るような感触で、自分が自分だと思えない。
「シラン…俺がわかるか?」
「……ダレ?」
ついさっき発した言葉をまた口にする。
若い男は予想通りの答えだったのか、一瞬苦笑した顔を見せたが、それはすぐに「ツライ」の表情へと変化し、俯いた。
「此処、どこなの…? 私は……」
首を回しながら呟く私の言葉を遮るように、今まで俯いていた男が私を包み込んだ。
目覚めたばかりで、すばやく回転しない頭がのろのろと今の状況を認識する。
な……なにをやっているの…。
「あぁ…なんでシランが…なぜシランがこんな…」
あんた…ダレ。
「ダレ…? 誰!? 誰なのあなた! 私は!? ここ何処!? 私はいったいなんなの!?」
「申し訳ありません」
そう言って、白い服を羽織った初老の男が私の腕に細い針を刺した。
「ちょ…! なにするのよ! やめて―――…!」
急速に意識が遠のく。
私は再び、一筋の光さえも見えない闇の中へと落ちていった―――。

 瞼を開くと、ベッドの屋根の天井が見えた。
前と違ってすすり泣きも聞こえず、物音一つしない。
聞こえるのは、自分が動くときになる木の軋み音だけである。
窓から差し込むオレンジ色の光を求め、私は足を冷たく光る大理石の床につけた。
突然の冷たさに一瞬足を引いたが、再び恐る恐る触れた。
そのままヒタヒタと、たった一つだけの小さな窓に近づいていく。
その小窓から外を覗いたとき、私は思わず声をあげてしまった。
「……わっ…」
そこから見えた風景…それは間もなく夜の町へと変化するたくさんの家々や、ところどころに見えるたくさんの緑、そしてその向こうにはもう沈みかけている大きな夕日。
あまりの素晴らしさに私は歓喜の声をあげ、夕日が完全に沈むまでずっと見入っていた。

星が数個、空に浮かび上がって私はゆっくり我を取り戻す。
綺麗な景色の余韻に浸っているとき、見るからに重そうなドアが音を立てて開いた。
首を回し、音が聞こえた方へと視線を向けると、そこには先ほど見た若い男。
急に現実に引き戻された気分になった。
考えたくなかった疑問が、溢れるくらいに頭のなかに生じた。
せっかく今までの景色に気をとられて、自分の状況を忘れられていたのに……。
「シラン、目が覚めたのか。気分はどうだ」
馴れ馴れしく話し掛けるこの男に、私は少し腹を立てた。
どうやら私は記憶をなくしているようだ。
だから以前、この男が私のなんだったのかはわからないのは、男だってわかっているはずだ。
それならばすこしは礼儀をわきまえてほしい…今の私にとっては他人なのだから。
「前のことを考えると、頭がガンガンする……」
「俺のことも、本当に覚えてないんだな?」
ひとつ、首を縦に振る。
「………まぁ、しょうがないんだろうな。ゆっくり思い出してくれればいいから」
その男が見せた優しい笑顔に、懐かしさを感じた。
「貴方は…私のなんなのですか?」
2003/11/03(Mon)22:09:27 公開 / LOH
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■作者からのメッセージ
初めまして!中3で初投稿です。
趣味で書いている駄文ですが、読んでくださると嬉しいです。
これからは他の方の小説も読んでいきたいと思っています。よろしくお願いします
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