- 『8×8〜最期の告白〜 後編』 作者:Rue / 未分類 未分類
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「やっぱり強いな、香は。」
ゲームを始めて十数分ほど経っただろうか。
あと3手くらいで香が勝つだろう。
俺は下を向いて、ずっと考えていた。
次の手じゃない。
香の「話したい」ことだ。
ゲームを始めてから香は一言も喋っていない。
ためらっているようにも見えた。
珍しいこともあったもんだ。
どんなことでもストレートに言う香が。
このままではゲームは終わらない。
俺はポーンを進めようと手を伸ばした。
その瞬間、香が突然口を開いた。
「亮・・・、わたし、ずっとあんたのことが好きだったの。」
あまりに突然だった。
俺は一瞬理解できなかったが、すぐに気づき、香のほうを見た。
香はいなかった・・・。
ついさっきまで、チェスをしていたはずだ。
外に出た様子もない。
部屋の中に隠れているのだろうか。
そう思って席を立ったとたんに、出入り口の扉が勢いよく開いた。
「亮!!」
健太だった。
「ど・・どうした?そんなに急いで・・・。」
俺は半ば混乱していた。
今日はいつもとは何かが違う。
突然なことが多すぎる。
そして、健太の言葉が追い討ちをかけることになった。
「香が・・トラックにひかれて・・・死んだ。」
俺の思考回路は完全に止まった。
何度呼びかけても、香は返事をしない。
何度探しても、香はどこにもいない。
ただそこには、チェス盤があるだけだった・・・。
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2003/10/29(Wed)17:28:50 公開 / Rue
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■作者からのメッセージ
題名の「8×8」ってのはチェス盤のことです。なんとなくつけてみました。