- 『〜voice〜3話』 作者:流几 / 未分類 未分類
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全角1932文字
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原稿用紙約6.55枚
『ピピピピピ・・・・・カチッ。』
頭に響く目覚まし時計を買うんじゃなかった・・・。痛い。
(あー、もう1時・・・。うぅ〜・・・。昨日のことで眠れなかったよー。)
昨日の出来事は今でも良く覚えている。特にあの人のことは。
昨日あの人がくれた紙には、
名前 高田 晶
年 28
住所 ○○区○○ 2−5−11
××マンション1105
電話 090−○○××−△▽□○
と書いてあった。
(電話・・・してみたいな・・・。)
もう一度彼の声を聞きたい。私はどんどん彼のことを知っていきたいと思った。勝の想いを無視して・・・。
今日は丸一日休みなので、久しぶりに実家に帰ってみた。行ってから気づく。
(あれ・・・。うちの隣にこんなマンション建ってたっけ?)
よくみると《××マンション》と書いてある看板があった。まさか、と思ったけど、今日はいろいろと準備をしていなかったので確認するのは止めておいた。
家に帰ると、母が出迎えてくれた。何も変わらない母。少し、白髪が増えたかな。今日はとまって行くの?と聞かれたので、ううんと答えた。少し寂しそうに見えたが、弟は家にいるのでそこまで泊まって欲しそうでもなかった。
「あ、この肉じゃがおいしい!」
私の何気ない言葉は、たまに母を喜ばせる。普段親孝行できないから、少しでも母が喜んでくれると嬉しい。弟はまだ母離れしていないからなのか、いつも母には辛口だ。
「俺のはもう少しやわらかくしてよ。」
はいはい。と笑い気味に弟の返事をする。弟は高校2年で県内でもトップクラスといわれる学校に行っている。少しヒョロヒョロしていて頼りないけども、顔はまぁまぁだそうだ(真里菜は言ってた)。でも、私が見る限りでは達也や勝のほうが何倍もカッコいいと思う。
「ねぇねぇ、淳(弟)。父さんはどうしたの?」
私の質問に弟は即答。
「風呂屋。」
頭がいいはずなのに話すのは下手。そんな弟の答えに母が付け足すように言う。
「最近ハマっているんだそうだよ。」
顔に笑じわを作って楽しそうに話した。
「新しい銭湯がすぐそこに出来てねぇ。とっても広いらしくて、設備も整っているんだそうよ。この前一回行っただけで気に入っちゃったみたい。」
へぇー、と私は言って、食べ終わった肉じゃがのお皿をながしに持っていった。ギシギシと鳴る床板には、昔の私が描いた落書きがいくつかあった。懐かしい・・・。
「ただいまー。」
玄関のほうから父の声がした。おかえり、と私が言うと、
「帰ってたのか。」
と曇った眼鏡をかけながら一言。
洗面器と洗濯物を置きに、父はいったん洗面所へと行った。戻ってくると、何やら手に何か持っている。父は、それを私にぐいっと押し付けた。
「あ・・・。」
昔なくしたと思っていた写真だった。弟に、母に、父に、思い切り迷惑をかけた写真。今頃・・・。
「お前の部屋の窓のところにあったぞ。」
テレビのリモコンをピッと押して、寝転がりながら言った。ありがとう、と言って私は立ち上がった。
「それじゃあ、もう暗くなってきたし帰るね。」
弟は、次はお土産持ってきてね。父は、タバコ頼んだ。母は何も言わず、玄関までついてきてくれた。
「いつでも顔見せなさいよ。」
うん。と言って、玄関を閉めた。
駅に向かいながら、父が見つけてくれた写真を見た。中身は、家族で山登りに行ったときの写真。
(そういえば、まだ淳って5才だったんだぁ。)
昔のことを思い出しながら歩いていると声をかけられた。
「こんばんわ。」
どこか聞き覚えのある声、と思って振り向くとあの人が立っていた。
「高田・・・さん?」
夕焼けに照らされた彼は、昨日とはまた違う雰囲気を漂わせていた。
(今日は真っ黒じゃないんだ・・・。)
と言いたかったけど、言わなかった。
「名前、覚えてくれたんだね。」
優しい笑顔は変わらない。
「あ、はい。助けてくれた人だし(笑)それに―・・・。」
「それに?」
さすがに気になる人、とは言えない。
「えー、っと家が近いのもありますしね。」
高田さんは周りを見て
「この辺りなんだ。」
「あっ!いえ、実家が。」
「ははっ、慌てすぎ。」
私は高田さんのイメージを作りすぎていたのか、今の言葉に少し驚いた。
(高田さんって、普通の人じゃん。)
「明日も休みだったっけ?」
ズボンのポケットから財布を取り出し、お店の名詞(?)を私にくれた。
「はい。明日の朝の11時にここで待ってるから。」
「え?あっ。」
高田さんはそう言ってスタスタと行ってしまった。
明日の11時・・・。
家に着くと、携帯を置き忘れていたことに気づいた。
《メール着信 1件》
勝からだった。
《今何してる?》
たいしたメールじゃなかったので、そのまま削除した。
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2003/10/27(Mon)18:30:15 公開 / 流几
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■作者からのメッセージ
いったいいつまで続くのやら。