- 『『龍云幻記』』 作者:赤 長月 / 未分類 未分類
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『龍云幻記』
序章
1
雲海の上に広がる世界、仙界。蒼い山脈を縫って広がる下界を見下ろすように、ただ佇んで存在する世界である。故か、下界の者―人間からして仙界とは、幻の国とされている。
碧を称えた湖。
その頭上の十色の岬を縫うように飛ぶ鳥が、空―雲に覆われている空を横切る。
木木は少なく、河も海も無い。山脈と湖と雲しか描かれる自然は無い。
仙界には、神という存在が棲まっている。
自然と言う万物を操り、齎す(もたらす)万能の者。そう人間は信じていたし、実際、現状はそれに同じだ。
だが・・・・・
「あーいぃー天気だ!久しぶりに下界の農民をいじくってくるかァ」
欠伸をしながら雲海を歩き、青年が呟く。
こんな対照な神も・・・。
彼の名は漣魔(れんま)。
「神様とか言って最終的にゃ上の奴等に扱き使われるんだよなー」
漣魔は龍神で在る。
中国という下界では龍というものは神として尊敬されている。龍は凶作から民を守り、豊作を齎す。洪水をその鰓で煽ぎ返し、農民に都合の良い天候を与える。世の秩序と平安は、この龍という存在故に在る。とまで云われている。
だが。
龍神は全てを統べる最高の神では無い。階級的には下方で、ただ民から慕われているというだけだ。数は少なく、現在龍神は漣魔。独りしか存在しない。
しかし、その貴重な―又は必要の無い神といえば。
「つまんねぇー仙界なんて。下界の方が可愛い女の子は居るわ、酒屋は在るは。ぜてぇ楽しいってのにぃ」
―漣魔の存在価値は後者に値するのかもしれない。
2
漣魔はその淡い蒼の瞳を見開いた。その瞳には―十色、否、それ以上もの色彩が描かれている。
薄い雲海の下に浮かぶ風景は、懐かしい風潮を放っていた。瞳に愛おしさが翳り始める。
彼には下界こそが自分が在るべき場所だ、と思う時が多々ある。あの十色の中に。様々な娯楽が絡んだ街に―自分は其処にいるべき者なんだ。と。特にそれは最近、心緒に降り続けている。大きい雪の破片が、重く心に降り積もるように。
左胸の鼓動が速さを増して行く。
こくん。こくん。こくん。
血潮が肺から四肢へ蠢きながら行くのを感じる。視界が滲んだ。
前回―一年前に見た下界の風景が脳裏を過る。
折れた足を立て直す。その瞬間、足が軸を失ったように揺らいだ。
「―――――――――――――」
片足が虚空を滑った。
つづく・
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2003/10/26(Sun)21:35:19 公開 / 赤 長月
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■作者からのメッセージ
えっと。
初め今日は♪初めまして、今日は♪
えー少し短かめの投稿です。なので近いうちにまた投稿出来るかなー?
中国です、東洋です。
なんとなくこういう系が好きなので。
では。