- 『〜voice〜1話』 作者:流几 / 未分類 未分類
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原稿用紙約8.1枚
『ザワザワ・・・・』
冷たい風が吹き抜ける駅前の道路。人が次々と行き交う中、私たちは歌う。
(ねぇねぇ、この人たち歌上手くない?)
(え!?知らないの?ここらじゃかなり有名なバンドだよ!)
(今度ライブあるらしーんだって。)
(え!行ってみたいしー。)
(ボーカルの人マジ惚れる!)
(何か女なのに声とかかなりイケてるよね!!)
私のバンドは結構有名で、いろんな人から声がかけられる。でも、自由気ままに歌をうたい、遊んだり、そんな生活で満足だった。
「ありがとーございましたー!!」
無事コンサート(路上の)も終わり、片づけをした。
「今日も人いっぱいだったなー。」
達也のセリフでハートが乱舞する。
「タッちゃんーvvvvそれはタッちゃんのドラムの腕がいいからだよぅvv」
達也の彼女の真里菜はキーボード。
「え!?そうかなー?マリが言うならっ。」
「あったり前じゃんvvタッちゃんカッコいいもーん。」
二人はいつもこんな感じで片づけを手伝わない。
そこで注意をするのが、
「おぃ、早く片付けねぇと駅員の人に怒られっだろ!」
少々言葉は荒いけど、とっても気の利くリーダー勝(かつ)。ちなみにギター。
この四人で私たちのバンド「voice」は成り立っている。
「はぃはぃ。わかりましたよー。」
片付けも終わり、時計を見ると午後の10時。お腹もぐぅぐぅ鳴っている。
「どっか食べに行く?皆で。」
「いくいくぅ!」
真里菜は私に抱きつきながら言った。
「ま!マリ!今日は二人でどっか行く約束してたじゃん!」
達也が慌てて言う。そうだったっけ?という様な顔で真里菜は達也を見つめた。
「っそ!だから二人でいっといで!」
ということで、勝と二人でお好み屋に行くことにした。
『ガラガラガラ・・・。』
「いらっしゃーい。」
店の中は適度な客でにぎわっていた。
「こちらにどうぞ。」
おばさんに案内されて奥のお座敷に座った。勝と向かい合わせに座ってメニューに目を通す。
「・・・・豚玉。・・・とイカ玉。」
勝は無愛想に言った。
おばさんは勝の頼んだものを繰り返し言いながら、手元にある電卓(?)のようなものをピッピッ、と押した。以上ですか?と聞きながら私のほうをじっと見つめてきた。
「あー・・・。私も同じもので。」
愛想笑いをして言うと、おばさんは思い切りの笑顔で、少々お待ちください、といって去っていった。
『カタ・・・。』
お好み焼きを持ってきたのはさっきのおばさんではなく、女の人だった。女の人は無愛想に鉄板の火をつけ油を塗って言った。
「煙が出てきたら乗せて焼いてください。」
私の返事も聞かずすぐに戻っていった。
「・・・・。俺、あぁいう奴嫌い。」
鉄板をじっと見つめながら勝がボソっと言った。なんだか小さな子供みたいで笑ってしまった。
「勝って昔から外食には慣れてないよね。」
勝は人見知りが激しく、こういうところにくると声が小さくなる。
「そう?外食は嫌いだし、人と話すのは苦手だけど、育水(いくみ)がいるなら平気だよ。」
「・・・・。」
どういう意味だろう?この時の勝の言葉をあまり深く考えなかった。
「そろそろいいんじゃない?」
私が言うと、勝はお好み焼きを乗せた。もちろん私のも。
「鈍感・・・。」
私に聞こえないように勝は言ったみたいだけど、ハッキリ聞こえてしまった
。勝は、いったい何を言いたかったのかな?
「今日はおいしかった。ありがと。」
公園の時計は11時半をさしていた。
「別にいいよ。俺も美味いと思ったし。んじゃ、またなっ。」
勝は走って帰った。勝の背中を見ながら、「鈍感」という意味を考えていた。
翌日、また昨日と同じ場所で歌った。目の前には女子高生にカップル。一際目に入ったのは、全身真っ黒な男の人。たしか前にもいたような・・・。カッコいいとはいえないけれど、どこか魅力があった。道行く人が彼をみて次々振り向く。
(・・・・・・。)
歌い終わった後、真里菜にあの男の人のことを言ってみた。
「育水ちゃん今頃気づいたのぉ?あの人結構前から見に来てくれてるよぉ。結構カッコいいよねー。」
真里菜は知っていたっぽい。
私はずっと考えていたけど、どこにも彼の記憶は無い・・・。
「あっでも、タッちゃんの方がずぅっと、ずぅっと、カッコいいけどねvv」
「・・・・。」
「育水ちゃん??」
真里菜の声で我に返り、言ってみた。
「明日もまた来てくれるかな。」
真里菜の顔がぱぁ〜っと明るくなって、大きな声で言った。
「育水ちゃんっ!!それは恋だよぅっ!!」
「!!!ばっ!そんな大きな声でっ!!静かに!!」
勝がこっちをじっと見ている。達也は勝に何か言っている・・・。
「真里菜!とにかくこのことは誰にも言っちゃダメだよ!達也にも!」
さっきまで明るかった真里菜の顔がみるみるうちに元に戻っていった。
「何でぇ〜〜?タッちゃんにもぉ〜?」
(ぉぃぉぃ。勝・・・。昨日、お好み焼き屋で育水に告ったんじゃねぇのかよ?)
(・・・・。)
(マ・ジ・か・よー!さっきマリの言ったこと聞こえただろー?育水、恋したって。どうすんだよ、勝ー。)
(・・・・。)
「ダメッ!いい?わかった!?」
きっと鬼みたいな顔してるんだな、と思いながら真里菜に言った。
「ふぁ〜い。わかりましたよー。」
(こんなこと言っても、絶対聞こえてるよー(泣))
「育水ちゃん。」
真里菜が急に話しかけてきた。
「ん?」
後ろを振り向くと勝がいた。
「育水。ちょっと来て。話がある。」
えっ?話??え、え、え??
「育水ちゃん♪いってらっしゃーいvv」
真里菜は無邪気な笑顔で私を見送った。
駅の近くの公園。(昨日私と勝が別れた公園。)
「話って・・・・・な、何?」
何気に緊張していた。
「昨日、俺言ったこと覚えてる?」
「鈍感っていうこと??」
勝の口からため息がこぼれた。勝は真剣な顔で、私に言った。
「俺は、育水のことが好き。」
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2003/10/25(Sat)19:11:17 公開 / 流几
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■作者からのメッセージ
初めまして。流几(りゅうき)とイイマス。
小説書くの慣れてなくて下手ですが、読んでもらえると嬉しいです。