- 『蹴球伝説-Second- 第二話』 作者:流浪人 / 未分類 未分類
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第二話「強くなれ」
「サイドに開いて!中央にクロス上げろ――――――」
新人戦まで残すところ一ヶ月となった。
俺たち白国中学校サッカー部は弱小チーム。
全国大会なんか夢のまた夢。全道大会にすら進んだことがない。
全道大会には、札幌市の上位二チームが進める。
しかし札幌には去年の全国三位の臨海中がある。
新人戦とは言え、あそこは一年生も強い。
となると二位を狙うしかないのだが、他にも強豪は数多くいる。
つまり俺たちは、新人戦まで死ぬ気で練習するしかないのだ。
「おい、竜次」
「どうした、修。何か用か?」
「今度の新人戦、お前スタメンらしいぜ」
「よっしゃー!一緒に頑張ろうな!!」
「……俺はスタメンじゃないよ」
「冗談はよせよ!お前の方が数倍上手いだろ」
「冗談なんかじゃねえよ!!」
「俺とお前は同じトップ下!共存なんかできやしない!!」
「何言ってんだよ。ウチのチームはトップ下が二人だろ?」
「変えたんだよ監督が!!何もかも!!」
「お前がやりやすいように!!あいつは全てを変えたんだ!!」
「……何のためにそんなことを?」
「お前が風間の血を引いているからに決まってる!!」
「風間の血は!!俺らの努力を全て否定しやがったんだ!!」
修がそう言うと同時に、俺はその場を飛び出していた。
どこかに行くあてがあるわけでもなかった。
だけど、俺がいたら皆に迷惑をかけるだけだ。
それ以来、俺はサッカー部には姿を見せなかった。
毎日一人で基礎から練習する。そんな毎日が続いた。
そんなこんなで新人戦の日がやってきた。
しかし俺にはいつもと変わらない平凡な日。
いつものように学校に行き、授業を受ける。
一時間目は担任の授業。担任は一言俺に言った。
「大会はどうした?サッカー部やめたのか?」
その一言に、俺は救われた気がした。
心のどこかで、背中を押してほしかったのかもしれない。
次の瞬間、俺は教室を飛び出し、走り出していた。
全速力で走る。もう会場まで近い。
その頃、試合会場では――――――
「まずい、まずいぞ……このままじゃ負ける!」
スコアは1−0。相手のリード。今はハーフタイム中
「なんで……なんで竜次は来ないんだ!?」
「俺が言ってやったんですよ」
「お前がスタメンに選ばれたのは風間の血のせいだ、ってね」
「バカな!!本当にそう言ったのか!?」
「そんなんで俺らの努力無駄にされたくないんでね!」
「バカ野郎!!お前は大馬鹿野郎だよ!!」
「……え?だってそうじゃないですか!」
「うぬぼれるな!俺が竜次を選んだ理由は、たった一つだ!!」
「あいつが紛れも無く一番上手いからだ!!」
「そんな……俺、竜次に何て言えば……」
ドン!!大きな音と共に、控え室のドアが開いた。
「……ハァッハァハァハァ……」
「竜次……!」
「っはぁはぁ……俺は……俺は風間だ!!」
「風間竜次だ!!それがどーした!!」
「…………」
「俺はただサッカーやりてえだけなんだよ!!」
「……わかってる、わかってるよ竜次。俺はお前に前言われて気づいたんだ」
「さぁ後半だ。走ってきたからアップはもう済んでるだろ?」
「はい!!」
ピーーーーッ!!
風間竜次デビュー戦。後半開始のホイッスルが鳴り響いた。
少しして、試合を見つめる監督の肩を叩いた男がいた。
「監督から見て、そんなにあいつは上手いですか?」
「か、か、風間竜平!?どうしてここに!?」
「ちょっと息子が心配になってね。で、どうなんです?」
「あの子の成長スピードには驚かされるよ」
「実力はもはや一年生でNo.1だろう」
「……どうかな。あいつにはまだ絶対的な経験が不足している」
「俺はあいつは負けると思いますよ」
後半の45分間、白国中学は必死に戦い抜いた。
しかし得点は生まれず、1−0で敗北した。
竜次にとってデビュー戦は苦い思い出になった。
「負けを知れ……そしてもっと強くなれ、竜次」
一年生の、夏が終わった。
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