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『無題』 作者:仙道 / 未分類 未分類
全角1142.5文字
容量2285 bytes
原稿用紙約4.6枚
彼女は、よく意味を求める女だった。

「ねぇ、生きる意味が分かる?」
そして今日は唐突に、そんな奇妙な疑問をぶつけられた。


「――さぁ…知らない」
そんな突然の彼女の質問を、答えではない曖昧な言葉で返す。
しかし彼女は俺の返答などどうでもよかったらしく、無表情で黙り込んだ。
何の感情も無い彼女の黒い目が、ゆらゆらと視線を彷徨わせている。


「どうしてそんなことを聞くの?」
対する俺も、抑揚のない声色で訊ねる。
「別に。どうでもいいから気になったの」
彼女も、抑揚のない声で返す。
変な女。


「…じゃあ、君はこれの意味が分かる?」
俺はゆっくりと彼女の頭を引き寄せて、口付けをした。
彼女はさした抵抗もせず、目を開けたままそれを受け入れた。
俺も、彼女と見つめあうように目を開いたまま、唇を奪った。
「…分からないわ」
やっぱり、感情の感じられない声で言う。
少し光沢を増した、彼女の赤い唇が見えた。


「じゃあ、これは?」
俺は彼女の腕を掴んで、近くにあった刃物で軽く切りつけた。
す、と彼女の白い腕に赤い線が走って、少しだけ肌に滲んだ。
彼女は痛いとも言わず、嫌がるそぶりもせずにその赤を見つめた。
傷は浅かったため、血は滲んだだけですぐに止まった。
「…分からない。でも綺麗」
彼女はまた分からないといって、でもいくらか血の赤に興味を示したようだった。
その血は、酷く彼女に似合っている気がした。


今度は、思うより深く切りつけた。
彼女は、やっぱり何の反応もしなかった。





「深梛は分からないことが多いんだね」
俺は横たわって天井を見つめる深椰に視線を移した。
白い腕に赤の色をたたえて、両方の腕を投げ出して横たわる深椰。
その顔には、やはり感情が見られない。
さっきよりは、幾分か青白くなったかな。
「うん…私はどうでもいいことが多いの。だから分からないの」
呟くように、ただ言葉の羅列を吐く。
俺はその姿が愛おしいと感じてきた。
だから彼女に口付けした。


「…やっぱり意味が分からないわ」
彼女はまた意味を追求した。
「どうして貴方が私にキスをしたのか。どうして貴方は私を殺そうとしたのか」
淡々と、唇を動かして言葉を紡ぐ深椰。
「腕を切っても、確実に死ねるとは限らないのに。不確実なことをして私を殺そうとしたのか」
どうして、と俺の方へ目を向ける。


俺は少しだけ微笑んで。
「知らないよ」
と笑った。


深椰は、興味無さそうに「ふぅん」と呟いた。




ほんとは、ね。
実践してあげたんだよ。
物事に意味なんかない。
…少なくとも、俺の行動に意味はない。
深椰の腕を切ったとか、深椰を殺そうとしたとか、そんなの理由はないんだよ。
そんなの俺にも分からない。
深椰には、まだ教えてあげないけれど。


また明日から、深椰は意味を求め続けるんだろう。
2003/10/18(Sat)21:32:55 公開 / 仙道
■この作品の著作権は仙道さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして、仙道と申します。
つたない文章ですが、投稿させていただきました。
意味が分からない上、なんだか気持ち悪い話になってしまいました。知らない女と、知らないけど気にならない男の話でした。
…ほんとに意味わかんなくてスイマセン。
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