- 『宝物は太陽の下に (1)』 作者:KR / 未分類 未分類
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原稿用紙約3.8枚
事件当日の夜は雨が降っていた。
家出の捜索願が出されていた女子高生の死体が、近所の公園のベンチで発見されたのだ。
ただし、死体から死後切り落とされたと思われる、左手の薬指の行方は不明だった。
誰が、何のためにそんな事をしたのかは全く不明。猟奇事件として一時は取り沙汰されて
いたが、操作に何の進展もないまま半年が過ぎ、世の中の関心は次第に移ろいはじめていた。
私はそれを見て、密かにほくそ笑んでいたものだ。
そしてそれから更にまた半年後、私は死体が発見されたのとは別の公園で、その男と
会った。
「本当だよ。俺は魔法使いなんだ」
周りに集まった子供が叫ぶ。うそつけー。
男は本当だよと言ってポケットからハンカチを一枚出した。
「ほら、これは魔法使いのハンカチだ。魔法使いが使ってるうちに魔法が使えるように
なったんだ。見てろ。ほら。赤かったのに青色になって、今度は黄色になった」
「うわー!!」
子供が叫ぶ。すっげー。
ノーメイクのサーカスのピエロだろうか。子供だましの手品なんかで。服装はいたって
ラフで、どこにでもいる大学生みたいだったけど、魔法使いだなんてよく言える。
「あたし、知ってる。それ手品って言うんだよー!」
子供の一人が、言った。
「種も仕掛けもありませんって言って、本当は種があるんでしょ!」
「ふーん。お嬢ちゃん、よく知ってるね」
実はそうなんだ。男はそう言って、
「ほら!こんなにきれいな花が咲いちゃったよ」
「うわぁああ!」
自分の体を、あっという間に花で埋め尽くした。バラにカーネーション、かすみ草に
チューリップ、スイートピー…。
「百合は、お姉さんにあげよう」
と、男は私の方に肩から抜いた黄色い百合を差し出した。
「え?」
「どうぞ」
「……結構です」
とっさに、私は答えて、その男の元から立ち去った。
何だったんだ。あれは。大道芸にしては派手だった。あの花は本物みたいだったし。
あれだけ揃えれば五千円、いや一万円くらいかかるかもしれない。サーカスのピエロは
ショーにそんなにお金をかける物なのだろうか。
「待って!」
と、いつの間にかさっきの男が追いかけてきていた。
「ふざけたことしてごめん。君に話があったんだ」
さっきまで男の体にあった花は、今はどこにもない。子供にでも渡してきたのだろうか。
ただ、百合の甘い香りがした。
「“宝物”を捜してるよね?」
男が言った。
私はそう、確かに宝物を捜している。だけどそれは、金や銀や宝石なんかじゃない。
色で例えるなら、人間の血の、緋い色だ。
next.
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■作者からのメッセージ
サスペンスです;初の連続物です;;でもそんなに長くは続かない…ハズ;
ちゃっちゃと完結しましょう。しかし私はどうも、登場人物たちに、
固有名詞を付けるのが嫌いなのか!?