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『二話』 作者:吐人 / 未分類 未分類
全角2040文字
容量4080 bytes
原稿用紙約7.25枚
 あれから2駅過ぎたところで僕の目的地?へとたどり着いた。何をするにも起きるには遅すぎたし、本を読むにも遅すぎたというわけだ。ま、いいけど。
 すでに僕は車内から降り、駅という駅から離れてワビサビがかなり効いているこの町?をうろついているのであった。

 「しかし、田舎は違うなあ。誰ともあえないとは、さすが田舎だ。」

 割と歩いているのだが、気配すらするもののここの人達に会っていないのだ。駅の中からね。
 ま、会わないほうが、お互い都合がいいに決まってる。

 ここの場合、服装を考えず場所柄的に相場から見ればここにいると考えられますのはご町内のお方か百寺巡礼者(何となく)の一員なのだが、あいにく僕の服装は巡礼専用白寒衣とはコントラストを決めかねているブラックカラーしかも詰襟なのだからってどうでもいいじゃん。しかも、誰もいないし。
 
 この町内、国の重要文化都市に、指定されてるんじゃないだろうか。歩くとこ歩くとこ、やけーに古臭い石畳が敷き詰められ、動かぬように石砂利で固定されている。それにまた町並みが、区画整理された以上に整備され武家屋敷、古家ついでに立派なお寺さん揃いでこれがまた薄い霧が山並み町並みつつみ、囲まれての日本最高クラスの場所である。

 「しかしまあ、日本でこんなとこがあるなんて京都と日光江戸村以外にあるなんて意外や意外びっくりですのう。」

 いや、京都より遥かに規模が矮小なるものの、Quality or Quantity でどっちを優先にするかだ。量を選ぶなら京都、ここの存在など消してしまえるだろう。だが、質ではどうだ。江戸、いやそれ以前から空気が止まっている場所、京都に引けをとらず、むしろ上を行くような感じである。

 この現代にあってはならない禁忌ともいえる場所。霧が湧く町。
 一言でいうならば、


 「存在しない場所」

 
 ま、いいけどね。そんなシリアスな環境を作り出している中、とある路地で僕が帰り道にUターンして、その道の7軒先に誰かがいた。おっ、あれは……。
 うちの生徒、じゃないかな。うちのセーラー、に夏服Yシャツの色、この辺じゃ古臭いしダサいからすぐ分かるんだよね。だってシャツがぴんくだし。
 ま、男にゃ、関係ナッシングだけど。

 それより、こんなとこから通ってるなんてあり得ないなあ。うちからだって学校遠いし、ここからだったら通学二時間半って、ところですかあ。
 あの学校、よほど好きなんだなあ。根暗には良さそうだし。体育系に力いれずに文系に力注いでいるからな。あの学校。

 向こうはまだ気付いてないらしい。ま、適当にやり過ごしますか。
 顔が顔がって距離と霧ではっきりとしないが、足を進めていくにつれあの顔には見覚えがある。確か、
 「あ、お前、ユウヤンじゃん。」そう、こいつは同じ学校同じクラスのメイトでしたり。そのあだ名はあの電波系から程遠く、由来はこいつの名前と……。
 「あ、トッチ君。こんなとこで何してるの?」
 「別に何もこうもしてるわけじゃないけどね。町並み見学さ。とそれよりユウヤンここから通ってんの?」
 「ぇ、あ、ううん。」どっちだよ。



 軽く雑談をし、一人さびしいひと時に花が咲いてよかった。
 ……さびしい?……良かった?
 ま、何にしてもユウヤンと話すのは久しぶりで今日学校じゃ話さなかったしね。
 
 「お前ってば大変なのな。でもここいいとこじゃん。ちっとっと羨ましいと思わん事も無いね。」
 「そう、そうでもないよ。ここは。」と哀しそうにうつむいた。
 「あ、そうなの。そうなの。」僕も悲しそうに涙目でユウヤンを見つめる。


 「…………。」白々しい目で見られた。何よこの異物め、って目で見られた。


 何ナノこの間は、何ナノこの間は。  

 「冗談、冗談だってば。ごめんごめん、」と時計を見る。5時半を指していた。

 「やべ、電車に乗れねえ。わりぃ。俺帰るわ。また明日な。ユウヤン。」
 そういって、僕はその場を逃げよう駅道を駆けよう……、としたとき、いきなり袖をつかまれた。
 腕をつかまれた。
 誰に?ユウヤンにだ。

 「あ、あのうユウコさん。一体何なんでしょうか……。」
 ギミック調で恐る恐る彼女の方を見るとすぐそこに無表情があった。普通だった。普通だったから面食らった。本当に面を食らった。

 時よ、止まれ。


 そして、動き出す。


 彼女に何かをされた? 
 


  
 キスされた……。



  
 で、僕を張り突き倒し、そのまま彼女はどこか遠くへ走り去っていった。


 普通、逆だろ。地面にへたり込んだまま左手中指人差し指で唇をなでた。

 辺りは霧に暗闇が迷い込んだ夜になっていた。


 
 
 意識無いままゆらりと駅路に向かい、都合よく電車があった。
 意識無いままゆらりゆらりと一人車内で揺られていた。

 

 気が気でない僕の頭の中では今日起きた事は考えない事にした。


 
 僕はまた乗り過ごすだろう。そんな気がした。 
2003/10/10(Fri)14:57:57 公開 / 吐人
■この作品の著作権は吐人さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 おはつでよろっす。

 題がないのは何も思いつかんのでねえ。
 テーマはいわぬが華ってものでして。こればかりは終わってみんとわかりません。
 
 ま、一丁ヨロシク願いまっす。
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