- 『僕は僕を探してた。(2)』 作者:ヒカリ / 未分類 未分類
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第二話 僕の心
僕はきっと、線路の上しか走れないんだなあ。
親に全て決められた。進路、職業、テストの点数に習い事。今までそれをきちんとこなしてきたし、それはこれからも変わらないだろう。
「浩、お前将来何になりたい?」
勇からの突然の質問に、僕は驚きを隠せなかった。そんな質問は、親からもされた事がなかった。
「別に・・・、特にはないけど。」
何気なく答えたつもりだったが、勇の顔は曇っていくようだった。勇は時々、僕自身が分からない、僕の心の中を見透かしているようだった。
「おまえさ、本当は違うだろ?親の意思とかじゃなくて、浩自身がやりたいって思ってる事、いっぱいあるんじゃねぇ?」
一瞬、ドキッとした。心臓の鼓動が、高鳴っていくように思えた。
そんな事はない、そう言いたかった。しかし本音は、『そんな事はあってはいけない』だった。やはり親に拘束されていた。
「浩、最近楽しそうだぜ、美術の授業。やりたい事って、ホントはそれじゃねーの?」
まだ心臓の音が聞こえる。さっきより大きい音だ。
僕が、美術―・・・?
僕は、なるべく落ち着いて考えていた。こんなに真剣に、自分の事を考えたのは久しぶりだった。
しばらく沈黙が続いた。勇はずっと黙っていてくれた。そのうち、勇との分かれ道になった。
「じゃあな、ゆっくりかんがえろよ」
優しい言葉だった。
「ああ、じゃあバイバイ」
帰っていく勇の後ろ姿が、昨日よりもカッコ良く見えた。
続く
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2003/10/08(Wed)14:54:22 公開 / ヒカリ
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■作者からのメッセージ
第二話、僕の心 どうでした?
中学3年という、人生の岐路の一つを書いてる
んですけどね。感想とか頂ければうれしいです。では。