- 『嗚呼。これが僕の命だ。』 作者:樒乙 威神 / 未分類 未分類
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嗚呼。
例えば、小高い丘の上にたって、風に身を任せてみる。
ふわふわと。さらさらと。前髪が揺れる。
髪が揺れるたびに、光が移り変わり、風景が変わる。
前髪がぶわっと上に上がった刹那、だだっ広い街が広がった。
トクン。
僕の命が震える。
嗚呼。
例えば、毎朝乗る電車の吊革につかまって、外を眺めてみる。
ガタンゴトン。と、大きな機械の音が聞こえる。
大きなカーブに差し掛かった瞬間、隣の人の腕に触れる。
ふわっ。と自分以外の体温を感じる。
トクン。
僕の命が震える。
嗚呼。
例えば、久々に行った本屋さんで、色々な本を物色してみる。
白も黒も黄色も色取り取りの本が目に移る。
不図目に入った本に、そっと手をかける。
同時に、視線の先に他人の指先が見えた。
目を合わせると、にこっと笑ってくれた。
トクン。
僕の命が震える。
僕の世界を見渡せる丘も。
僕の道を辿る電車も。
僕のかかわりを感じさせる本屋も。
全部全部僕の命にかかわってくる。
「おーいっ!何してんのっ?」
背中から優しい声が降りてくる。
振り向けば、トクンとまた僕の命が震える。
生きていることに幸せを覚えれば。
きっと死を優しく迎えられるだろう。
だから、ゆっくりと自分の命を噛締めるように握り潰しながら。
震える命を感じて生きていく。
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2003/10/07(Tue)21:09:26 公開 / 樒乙 威神
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■作者からのメッセージ
はじめまして。
いきなりわけがわからないものを書いて失礼致します。
最近の好きな言葉は『視死若帰』です。
これからまた書かせていただくと思いますが、どうぞよろしくお願いします。