- 『僕は僕を探してた。(1)』 作者:ヒカリ / 未分類 未分類
-
全角579文字
容量1158 bytes
原稿用紙約1.8枚
第1話 当然のこと
中三の二学期といえば、受験生にとって最も大切な時期である。
夏休みに受けた、テストの結果の個票が返ってきた。いつも通りである。
学校内順位も、地区内順位も、県内順位も、すべてに「1」が並んでいる。
僕は、自分の顔が満足げになっていくのを感じた。心の中で、優越感に浸っていた。周りには、40位で凄いだの何だの騒ぐ奴もいるが、僕に言わせれば「ただのアホ」でしかない。
「浩、お前どうだった?」
勇が僕に聞いた。勇は、僕の知る中で一番頭が悪い。ダントツに悪い。しかし、僕の知る中で、一番人間性が良い。ダントツに良い。
「おっ!!やっぱ一位か〜。お前凄いなあ」
「うわっ・・・、勝手にみるなよ〜!」
こうしたちゃかし合いをいつもやっている。僕にとって、勇といる時間が一番楽になれる。勇のまえでは、なぜかいつも、ありのままの自分でいれた。大した友達はいないけれど、勇は親友だった。
いつだって、僕は一位をとっていた。塾の模試でも、学校のテストでも。
通知表なんて、5段階評定の九教科中八教科が5だった。それが僕の自慢でもあり、
誇りでもあった。いつしかそれが、当たり前になっていた。
「一位になって凄い」そんなものはとうの昔に終わり、「一位になって当然」が今の僕。少なくとも、周囲は僕をそんな目で見ていた。
―僕が一位を落とすなんて、考えたこともなかった。―
続く
-
2003/10/02(Thu)17:54:13 公開 / ヒカリ
■この作品の著作権はヒカリさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
読んで頂いて、有難うございました。
初めて投稿します。ヒカリと申します。
評価とか頂ければ嬉しいですね。