- 『アラン―2―』 作者:かもめ / 未分類 未分類
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 朝方。鳥達が起きだす頃。朝陽が登り、軍人養成学校一年生のアラニー・ヘルヴェルンは目覚めた。軍服に着替え、腰まで届きそうな長い髪を今日はポニー・テールにしようとしてブラッシングしていた時、口を開いて独り言を言った。
 「・・・髪・・・伸びたなぁ〜。小さな頃はココまで長くなるとは思っても見なかった。・・・さて、イヴを起こすかな。」
 アランは、同じ部屋でまだ寝ているイヴァンヘム・ローリングを叩き起こした。イヴがぼやく。
 「・・・眠い〜。なんでアランはいつも早く起きても大丈夫なの〜?」
 「イヴもいい加減自分で起きられるようになったら?」
 イヴは「ム〜・・・」と言いながらベッドにうずくまってしまった。アランはクスッと笑って言う。
 「も〜。子供なんだから〜!」
 「そんな事無いよー!私12歳だよー!同い年だよー!」
 イヴが少々必死になって言うので、アランは余計笑ってしまう。
 「あはは。わかったよー。じゃぁ、準備しようー!」
 
 7時。エヴォルディ・ルックス教官が生徒に『朝の体操』をさせ、今日の予定を話す。その時、ウリクシー・コミリアックが全員をまとめた。
 「えー・・・今日の予定は、一学年上の第二学年一部隊と合同訓練を行います。心してかかるように。」
 それを聞いた生徒達は、興奮の声を上げた。みんながザワついたので、ウィリーが慌てて静かにさせようとするが、誰もウィリーの声なんて聞いてなかった。アランが、最近気の合う友達(?)みたいな関係になったオルヴァ・コロミーに話し掛ける。実は彼は狼人間だ。
 「ねーねー!オルヴァ!合同訓練だって!楽しそうだねー!」
 「俺はあんま興味とか無いけど・・・面倒くさくなければいいな・・・。」
 アランはつまらなそうに「・・・あっそ」とだけ言った。
 
 第一学年一部隊のほぼ全員は、一学年上の部隊と合同という事で少し緊張していた。アランとオルヴァ以外は。アランは何をするのかワクワクして胸を躍らせていた。オルヴァは何も感じていなかったが、ただ無事に終われば良いとずっと祈っていた。
 第二学年一部隊のリーダーらしき人物がウィリーと握手した。ニコニコとしていて、感じが良さそうな人だった。
 お互いの事を知るために少しだけ自由時間が設けられた。先刻のリーダーらしき人物がアランとオルヴァの所にニコニコしてやってきて話し掛けた。
 「初めまして。私の名前はカトレア・ビグバーデン。第二学年一部隊のリーダーよ。よろしくね!」
 「初めまして。私はアラニー・ヘルヴェルンです。よろしくお願いします。」
 オルヴァも後に続く。
 「・・・初めまして。オルヴァ・コロミーです。・・・よろしくお願いします。」
 カトレアは少し微笑んで言った。
 「クス。オルヴァはあまり私とはよろしくしたくないんじゃないかな?」
 「・・・いいえ・・・」
 「クスクス。まぁ、いいわ。私はあなたたちにそんな事を言いに来たわけじゃないもの。・・・私が言いたいのは、私はあなたたちに容赦するつもりはないって事。それと、知らないだろうけど私はオルヴァと深い関係にあるわ。覚えておいてね。」
 二人はいきなり彼女の表情と口調が変わったので驚いて何も言えなかった。
 
 訓練が始まった。エヴォ教官が訓練の内容を説明する。
 「今回の訓練は、2学年生の先輩一人が1学年生二人をランダムに選んでチームを作り、2学年生と1学年生が敵同士というシミュレーションで行っていきます。わかったらさっさとチームを作って始めてください。」
 簡単にまとめた説明だった。
 アランはイヴと一緒になりたかった。だがランダムに選ばれるため、カトレアにオルヴァと一緒に選ばれた。カトレアが笑って言う。
 「それじゃぁ、私は森のほうに逃げるから。十秒後に追ってきてね。じゃ、訓練開始!」
 そう言うか否かの内にカトレアは森の方へ消えた。十秒経つまで待ってから、アラン達は追いかけた。
 「ねぇ、オルヴァ。カトレア先輩は何処に隠れると思う?」
 「・・・見当もつかない・・・。」
 オルヴァは正直に答える。
 「それじゃぁ、ダメよ!考えるの!そうねー・・・私がもし先輩だったら、罠を仕掛けて、その近くで待つわ。」
 「・・・つまり?」
 アランはかすかに笑って言う。
 
 その頃。カトレアは仕掛けた罠の近くで小さな独り言を言っていた。
 「・・・囮になるのはどっちかな?」
 
 森の中。鳥達が飛び交い、巣があちこちにある。人の気配は無い。同じ部隊の仲間の声も聞こえず、足音もせず、静まり返っていた。
 そんな森の中に、一人。少年の足音が聞こえる。落ち葉がカサカサと音を立てる。
 
 『バサッ』
 
 ふいに、少年の足音が止み、落ち葉が舞った。上手く出来ている罠は、注意しても全然見えなかった。
 頑丈な網ネットに捕まって、少年は浮いていた。もし戦場でこんな事になったら早速撃ち殺されているだろうなと少年、オルヴァは思った。
 罠を仕掛けた本人カトレアはまだ出てこなかった。あたりをうかがっていた。その頃。オルヴァを囮に行かせたアランは早くカトレアは出てこないかとジッと待っていた。待つのはキライなので苦痛だった。アランは小さい声で呟く。
 「・・・まだなの?まだ出てこないの?」
 おそらく、オルヴァもそう思っていただろう。次の瞬間、後ろから声が聞こえた。
 「何処を見ているの?私はココよ。」
 アランは驚いて振り向く。カトレアが人差し指を立ててアランに向けていた。ちょうど銃のような形だった。
 「カトレア先輩・・・。気付きませんでした・・・」
 アランは少し呆けていた。カトレアは「あら、そう?」と笑って言った。オルヴァも驚いていた。
 「アランさん。私は本気よ。あなた達には、もっと強くなってもらわないと困るわね。相手にもならないんじゃ、話にならないわ。・・・アランさん。オルヴァをもっと強くしてあげて。せめて、あなた並にはしたいわ。あなたは、私を目指してね。・・・・これからの話はオルヴァには聞いて欲しくないんだけど・・・。いい?」
 「・・・はい。」
 カトレアはまだ手を下ろしていなかった。
 「ありがとう。あのね、私はあの子の姉なの。私も狼人間よ。狼としての特性を受け継いで、それをすぐ発揮したからこの学校にも簡単に受かったわ。だけど、あの子は推薦でやっとこの学校に入ったって父様に聞いたわ。でも才能はあるのよ。まだ発揮してないだけなの!でもこのままだとずっと発揮できないのよ!・・・あなたにその才能を発揮する手助けをして欲しいの・・・。」
 「・・・・・・」
 「あの子の、タメなのよ・・・」
 カトレアの手はもう、下りていた。
 「・・・・わかりました・・・。」
 カトレアの顔に笑顔が戻る。
 「ありがとう!」
 「私も、オルヴァの成長が実は楽しみです。」
 「あの子は伸びるわよ。誰よりもね。」
 二人がオルヴァについて楽しく語っている時に、とうの本人はまだ網ネットの中にいた。
 「・・・早く・・・降ろして・・・」
 
 カトレアは、オルヴァがいる網ネットの方へ歩いていった。やっと降ろしてもらえるのかと思ったのもつかの間。網ネットはカトレアの打った銃の弾で切られ、オルヴァは落ちてしまった。オルヴァは「わぁ!」と言って落ち葉のたくさんある地面に向かってどんどん落ちてゆく。
 
 『ドサッ』
 
 軟らかい落ち葉の上にオルヴァは落ちた。カトレアはもう、そこまで来ていてオルヴァを見下ろしていた。
 「カ、カトレア先輩???」
 「・・・オルヴァ。本気でかかって来ないと、ダメよ。」
 「・・・へ?ア、アラン。これって一体・・・???」
 アランは真剣な顔をして言う。
 「オルヴァ・・・聞いたとうりよ。ガンバって。」
 「が、ガンバッてって・・・」
 オルヴァはすでに混乱していた。
 
 
 〜〜〜次回に続く〜〜〜
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2003/09/27(Sat)00:16:43 公開 / かもめ
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■作者からのメッセージ
 まーた、続いたよ・・・。一体どうなるんだか私にもわかりません。ごめんなさい。
 なるべくまとめてわかりやすく終わらせます!