- 『a ra ta / a i [3]』 作者:さこ / 未分類 未分類
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 原稿用紙約3.95枚
 「紫紺」
 アイ・・・前に聞いたことなかったっけ。前に、そう、ずっと前に。
 
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 「だ〜〜っ!!わかんねぇ!」
 俺は記憶力の悪さを呪った。で、机に突っ伏してうめく。
 確かに聞き覚えのある名前だ。どこにでもある名前といってしまえばそうなんだけど。前に会った事があるのなら、あんな男みたいなの忘れるわけ無いんだけど。 「一体どこで・・・」
 「新さっきから、何ブツブツ言ってんだよ。」
 ダチ1号登場。
 「なんか悩み事〜?」
 ダチ2号。よし、ダメもとで訊いてやろう。
 「なぁ、お前ら『アイ』って名前きいたことねぇ?」
 「・・・!高橋 愛?アノ娘めっちゃカワイイよな〜vv」
 「新、卓球なんて興味あったんだ。意外。」
 「―――お前らに訊いた俺がバカだった。」
 
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 気になって気になって、なんで気になるのか分んない自分にイライラしてきた。こうなりゃ、本人に訊くしかないと思って、隣のクラスを覗いた。2−C。HRがちょうど終わったところのようでがやがやしている。ざっと見渡すが見つからない。もう1度じっくり見渡したところで窓側の後ろの席に見つけた。
 俺は声を掛けるのも忘れて見入ってしまった。連日の練習のせいで俺同様、日に透ける茶色い髪、色素の薄い白い肌、しまった顔立ち、それはおいといて。制服を着ていた。―――男物の。
 『有名人』ってそういや言われてたっけ。転入してから日がたっているのに俺が気付かなかったのも理解できた。けどその姿を見て、俺の中で、急激に「如月紫紺」という存在に対して疑問が大きくなった。謎だらけだ。
 「新?」
 知らない間に、如月は目の前まで来ていた。
 「あ、あのさ。グランドに行く前にちょっと話できないか?」
 「いいけど。じゃ、屋上でも行く?暑いだろ。」
 昨日は、ロクに言葉を交わさなかったから分らなかったが、喋り方までさばさばしていて男っぽい。身長も俺とほぼ変わらないから、170以上はあるだろう。屋上に続く階段を上りながら、色んな事に頭をめぐらせていた。
 
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 ガァンッ。
 屋上の扉を開けると涼しい風が制服のシャツをはためかせた。日差しはきついが、風のおかげで暑さは半減している。
 「涼しいだろ?練習場所、ここだったらいいのにな。」
 「・・・あぁ。」
 「で、話って?」
 一呼吸置いて、話し始めようとした時だった。
 「こらぁ〜〜〜〜〜!!!!井上!サボろうとしてもそうはいかんぞ!」
 熱血、だ。下のグランドで叫んでいる。
 「目ざといヤツ。・・・如月、今日練習終わったら部室んトコいてくれよ。悪いな。」
 「構わないよ。」
 
 その時の如月が、なんでか淋しそうに見えた。
 
 
 
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2003/09/26(Fri)15:43:10 公開 / さこ
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■作者からのメッセージ
 この話長くなるのかも;
 
 1・2話にコメントしてくれてどうもありがとうございます。今後ともまたよろしくです。