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『RhythmGravity 〜第2章〜』 作者:MAG / 未分類 未分類
全角1235文字
容量2470 bytes
原稿用紙約4.8枚
〜第2章〜 sync


「失礼します・・・」
 おそらく聞こえてはいないだろうやる気の無い声で職員室に入る。
 時折他の教員達とぶつかりそうになり、それを避けながら目的の場所まで進む。

 その場所に着けば、俺は大声で怒鳴られるんだろうなぁ。
 あ、ウォークマン置いてくればよかった。取り上げられるだろうな・・・。
「なぁ・・・キサ・・・・・・なぁってば !!! 」
「おわぁ!」
 後ろから髪の毛を引っ張られて我に返った。
 後ろにはモトキが・・・あぁ、そうか。コイツいたんだ・・・
「お前・・・何で付いてくるんだよ・・・」
「・・・別にぃ? しいて言うなら・・・面白そうだから?」
 コイツ・・・俺が怒鳴られるのが見たいのか!?
「お前性格悪いよな・・・」
「よく言われる」
 小さく笑いながらモトキは答えた。

「樫木! 何ボーッと突っ立ってるんだ! 早く来い!!!」
 早速怒鳴られる。俺は急いでその方に行った。
 
「樫木・・・お前、授業中に音楽を聞いていたのか? ん?それともあれは英語のリスニングか何かのCDか?」
「・・・MDです」
「どっちでもいい! それを出せ!」

 大きい声が職員室に響いた。
 だが、ここでウォークマンを出したら、間違いなく没収だ。・・・没収されてたまるか・・・!

「今は・・・持ってません」
「教室にあるのか? なら今すぐに持ってこい。早く行け!」
「・・・・・・」

 どっちにしろやっぱり没収か・・・
 諦めかけた瞬間、後ろにいたモトキが

「先生、ゴメンナサイ。さっき、俺・・・キサのウォークマン落としてしまって・・・壊れちゃったんですよ」

 ・・・え?

「何? じゃぁその壊れたのでいいから持ってこい。深櫛」
「それが、3階から落としちゃったもんだからグッチャグチャでバラバラで何が何だか・・・」

 ・・・何言ってんだモトキ? 嘘・・・付いてるんだよな・・・?
 ・・・あのモトキが!? 嘘を? 何故?俺のため? ありえねぇ・・・!!!

「本当に壊れたんだな・・・?」
「はい・・・俺、本当にキサには悪かったって思ってます。キサ、ごめんな」

 モトキは俺の方を向くと話に合わせるよう目で合図した。

「あ・・・ごっ・・ごめんなって言われたって・・・あ、アレ、高かったんだぞ!」
「ごめんって! ちゃんと弁償するから・・・」

 俺達が言い合っている間に教員は段々納得していった様だった。
 ため息をつくともう帰っていいと言った。俺達は軽くお辞儀をした。
 職員室を出たとき、モトキが俺の背中を強く叩いた。
 やったね というように。

「モトキ、お前すごいな。あの教員だませるなんて!」
「まぁな。あぁいうのは俺に任せとけ!」

 モトキは頭がいい。家庭以外ならほぼ何でも出来る。
 英語なんて通訳みたいだし、数学はハッキリ言って先生より教えるのが上手い。
 頭がいい。頭はいいが・・・行動が全く読めない。見た目や行動は馬鹿そのもの。でもまぁ、良いヤツだ。
 モトキは付け足した。

「お前は音楽しか脳が無ぇだろ! それを取られてたまるかってんだ!」
 
 俺のウォークマンには“sync”が流れていた。


続く
 



2003/09/25(Thu)20:17:45 公開 / MAG
■この作品の著作権はMAGさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
何も変わったことのない平凡なことなのですが
そういう日って大事だと思います。

ちなみに。

sync=同調。
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