- 『少女-2-』 作者:みるる / 未分類 未分類
- 
	全角852.5文字
 容量1705 bytes
 原稿用紙約2.8枚
 一見、いつもの商店街。しかしアーケードを歩いているうちにだんだん違う[いつもの商店街]だと気づく。
 
 喫茶店、レストラン、食堂、あらゆる食物に関係する店すべての店が[海老]しか扱っていないのだ。それはショウウィンドウで明白だった。
 
 海老ピラフ・海老グラタン・海老フライ・海老雑炊・海老スープ…中華・洋食・和食、どの店もだ。
 
 あの[海老剥き屋]が頭に浮かんだ。あいつは何なんだ!?
 
 妻は自分の恐怖と夫がまた病気を再発するのを恐れて、
 「あ、あなた、私たち今日は疲れてるのかしら…ね、ね、やっぱり家で食べましょうよ、私すぐ作るわ…ね?」
 「あ、ああ、家に帰ってゆっくりしよう。」
 男はそれしか言えなかった。自分の病気の再発かとも思ったがこの光景は妻にも見えてるらしいから目の前に見えるものは全て[本当]なのだ。でも妻に気の利いた言葉はみつからなかった。
 
 夫婦は急ぎ足で家に帰った。
 
 妻は家に帰るといつもより忙しなく夕飯の支度をした。
 男は上着を脱いでハンガーにかける。内ポケットから薬と[海老剥き屋]の名刺をとりだした。
 名刺には表に[海老剥き屋]とだけ書かれていた。裏を見ると電話番号らしい数字の羅列。薬を飲み終えたら、病気が完全に治ったら行ってみようか…そんなことをいろいろ考えてたらリビングから声がした。
 
 「あなたー、できたわよー、食べましょうよ。」
 妻はいつもと変わらない明るい声になっていた。
 男はその声を聞いて少し安心した。いつもあいつに救われるな…もう、考えるのはよそう、明日になればお互い疲れてただけだと思えるさ…明日から職探しだ。
 
 妻の為に、自分の為に言い聞かせるように心の中で思った。
 「あなたー?」
 「今行く。」
 名刺を箪笥の小さな引出しの底にしまい込み、リビングに行った。
 
 「たくさん食べてね。明日から頑張ってもらわなきゃね。」
 妻がニコニコと食卓におかずを並べていた。
 
 男は目の前に並んだおかずを見て驚いた。いや、驚きを通り越していた。
 
 テーブルには海老ピラフ・海老のスープ・海老サラダが並べられていたのだ…
 
 続
- 
- 
■作者からのメッセージ
 すいません。誤って-2-を削除してしまったので投稿しましたm(__)m