- 『少女-3-』 作者:みるる / 未分類 未分類
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 原稿用紙約2.6枚
 テーブルの上の[海老]料理。思わず男は料理から視線を妻の顔に移した。
 
 妻はキョトンと何?と言いたそうないつもの顔。[商店街]のことは記憶にないような、いや、そんなことなかったような何でもない態度だった。
 が、口をついて
 「お、お前これ…」
 「ん?どうかしたの?あなた[海老]好きでしょ?しっかり食べて明日から職探し頑張ってよ。」
 
 明るく弾むような妻の声。男はまた幻覚、病気が再発したのかと少し息苦しくなっていた。
 確かに[海老]は嫌いではないが好物とまでとは言わない。妻も知ってるはずだ。妻ではない…?いや、目の前にいるのは最愛の妻だ。[商店街]で怖くてしがみついたのも妻だ…なのに何故このおかずなんだ?私が変なのか?[海老]に見えてるだけなのか?
 
 「?…あなた、具合悪くなったの…?無理しなくていいけど…食べなきゃ…」
 「ああ、食べるよ…」
 
 もしかしたらまた病気が完治してないからそう見えるのか?食べてみたら、口にしたら違うのかもしれない。
 
 男は少しパニック症状に陥ったが妻にこれ以上心配させたくなかったのと、自分に言い聞かせたいのとで食べようと決心して震えを抑えながらスプーンを掴み、ピラフをすくい口までもっていった。
 
 やはり[海老ピラフ]だった。
 
 今度は何日も食べてないかのように目の前の[海老料理]を口に運んだ。
 
 これも…これも…[海老]だ!何故俺は食ってるんだ!?もともと妻の手料理は美味いが何故[海老]がこんなに美味しいんだ!?
 
 男は食べ続けた。妻は夫の食べっぷりを初めは喜んで見ていたがいつもと違うことに気づき、病気のことが頭に過ぎった。
 
 「あ、あなた、そんなに慌てなくても誰も取らないわよ。」
 妻は平静を装って子供をなだめるように、いつもと声の調子を変えないように言った。
 ハッと男の手が止まる。
 
 そうだ、妻に心配かけてはいけない、ゆっくり食べよう、ゆっくりだ…
 男も平静を装って食べ続けた。
 
 明日、もう一度病院に行ってみよう…
 男はもう、何も考えたくはなかった。
 
 続
 
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■作者からのメッセージ
 やっと、続きを書きました。
 まだまだコメディみたいですね(苦笑)
 ホラーっぽくなるのか自分でも不安です(^^;)