- 『幻夢国記 〜月の光 太陽の闇〜 開章』 作者:GAKU / 未分類 未分類
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プロローグ
「キミはもう少しおとなしくなれんのかね?」夕暮れの学校の教室に教師と生徒がいた。
「何とか言ったらどうだ?」教師は生徒に訊ねるが、生徒はうつむいたまま黙っている。
――生徒の名は『上坂 劉輔(かみさか りゅうすけ)』 15歳 中学三年 普通の生徒とは何ら変わりもないが、何故か不良にからまれケンカになってしまう、この日も他中の生徒とケンカをして注意を受けていた。その理由は彼の髪色だった、彼の髪は生まれつき黒ではなく血のような紅い髪だからだ。そのことで学校の教師は彼を危ないやつだとか危険分子、などと本当の劉輔を理解しようとはしなかった。劉輔もそんな教師たちを見ようとはしなかった。――
「・・・に・・・なにが・・・ってんだ」劉輔はそう言って教師を見た、教師はうまく聞き取れず、もう一度、といいたそうな顔をした。
「あぁ、もう、わかったから帰っていいぞ!」教師はそう言って席を立ち教室を出て行った。
「あんたに・・・あんたに何がわかる・・・」劉輔は席を立ちつぶやいた。
(劉?もう少しおとなしくなれないの?)家にいる母親にもそう言われた、好きでやってる訳じゃない。劉輔はそう思いながら学校を後にした。
劉輔は足早に家に向かっていた、そんなとき、後ろから誰かが走ってくるのに気づいた。
「りゅうぅ〜!!待ってよ〜!!ねぇ、劉てばぁ!」劉輔は声のするほうに振り向いた。それは劉輔の知っている女子生徒だった、なぜなら彼に声を掛ける女子などかなり少ない、それは彼が危険だと思っているかれである。
「なに・・・?」劉輔はあきれた顔で声を掛けたものに訊いた。
「何?って・・・せっかくこの『ゆうな』嬢が声を掛けてあげてるのに〜」――この少女の名は『真田 ゆうな(さなだ ゆうな)』 15歳 劉輔と同じ中学で三年 劉輔とは幼馴染で小さいころから一緒のため『本当の劉輔』を知っている、家も隣同士なのだ、良き理解者でもあるがそれは劉輔が話をするときだけである、中学に入ってからというものあまり話す機会がないため最近の彼をよくは知らない。しかし、彼が危ない、だとか、危険分子などとは決して思ってはいなかった、思えなかったのだ。――
「お前はキャバクラ嬢か・・・まぁ、どうでもいいけど・・・」と劉輔はつぶやく、ゆうなは、もぅ、とつぶやく。
「で・・・何のようだ?」劉輔が訊くとゆうなは笑んで答えた。
「だって今日はおばさんいないからうちで晩御飯食べてくんでしょ?」今日は劉輔の母がいない、今日も、といっていいほど仕事で忙しい。
劉輔には物心ついたころから父親がいない、母親は事故でなくなったと言っている、そのため母は劉輔を養うために毎日夜まで仕事をしている、もっと忙しいと遅くまで帰ってこないことがある、そのため遅い日は隣であるゆうなの家で晩御飯を食べることもある、そして今日もゆうなの家で晩御飯である。ゆうなの母親と劉輔の母親は高校の親友で、一緒に旅行にいくこともある。ゆうなの母親は劉輔のことを実の子供のように可愛がってくれるため、劉輔もゆうなの家に行くのは嫌ではなかった。
劉輔はゆうなの声を聞いているのか、いないのか、脇道に入っていった。
「ちょっと、劉輔?そっちは違う道でしょ?」ゆうなは引きとめようとしたが、スタスタと歩いていく劉輔をついて行った。
少し行くと細い脇道から広い公園のようなところに出た、そこはベンチと小さな噴水しかなかったが、何だか心地好い風が吹き気持ちが自然と和んだ。
「こんなところがあったんだぁ〜・・・」ゆうなは少しはしゃぎながらベンチに腰掛けた。劉輔は制服を脱ぎ、それをベンチに掛けて小さな噴水を覗き込んだ。
「何だか和むなぁ〜・・・」
「ここに来ると・・・」
「えっ・・・?」劉輔が何かを言おうとしていた、それを聞こうとゆうなは劉輔を見た。
「ここに来ると・・・何だか楽になるんだよ・・・」劉輔はそう言いながら笑っていた。
「・・・楽に・・・?」ゆうなは劉輔が笑ったのに驚いていた。昔はよく笑っていたが、中学に入ってまったく笑うことがなくなったため、劉輔の笑った顔を見るのが珍しく思えたのだ。
「劉輔・・・」ゆうなは劉輔の笑った顔を見てうれしく思った。
「学校だのなんだのって・・・息苦しいんだよ・・・」劉輔は噴水を見つめながら言った。
「へ〜・・・。ん?何これ?」ゆうなはベンチから立とうとしたとき、それを見つけた、それは綺麗な鏡だった、手のひらほどの大きさで球体だった、周りには宝石のような玉が付けてあり、見たこともない鳥が描かれていた。
「ねぇ、ねぇ、綺麗じゃない?これ?」
「ん?どれが?」劉輔が振り向いてゆうなを見た、その手には綺麗な鏡を持っていた。すると、ゆうなは鏡を劉輔に、ほれ、と投げた。
「バカッ!投げるなよ!」劉輔はあわてて取ろうとしたがうまくいかなかった。鏡は小さな噴水の中へ落ちた。
「も〜、何取り損ねてんのよ!」
「お前が急になげる・・・」水中に入った鏡を取ろうとして鏡を覗き込んだ劉輔が言いかけたとき、鏡の落ちた噴水が光った。
「えっ・・・?」それは鏡が光を放ち水面が輝いていたのだ。すると不意に声が聞こえた。
「みつ・・・け・・・た・・・」
「何!?」ゆうなも噴水に寄って来た。
「見つけた・・・」再び声が聞こえて、劉輔は周りを見渡したたが誰もいない。そんなとき、鏡がいっそう強く光った、そしてその光は人の形に変形した。
「な、何だ!?」劉輔はゆうなを後ろにかばいながら光を見た。
「あなたが・・・」その声は人型の光から聞こえた。
光は発光をやめた。すると、見たこともない衣装に身を包んだ金髪の男が現れた。
「誰だ!あんた。」劉輔が問うと、男はわずかに微笑みを浮かべた。
「失礼いたしました、私の名は『耀龍(ようりゅう)』と申します。『耀王』を御迎えに参じました。」耀龍はそう答えて劉輔の前にひざまずいた。
「な、何だよ!」劉輔は自分の足元にひざまずいている男を見た。
「メイニソムカズトモニクニヲオサメルコトヲケイヤクスル。」劉輔は訳もわからずきょとん、と耀龍を見ていた。後ろにいるゆうなも訳がわからなかった。
「は、何か用?」劉輔はそう訊くと耀龍は、そうか、という顔をした。そしてすぐに立ち上がった。
「今はお話しする時間はございません、まずは『よう』へ!」そういうと耀龍という男は劉輔の腕をつかみ、男が出てきた光っている噴水に入ろうとした。
「ま、まてよ!何すんだよ!」劉輔は男の手を振り解き、後ろへ下がった。
「早く中へ!そこにいては襲われます!」男は再度、劉輔の腕をつかんだ。
「教われる?誰に!」劉輔は辺りを見渡したが辺りには誰もいない。するとまた何処からか声が聞こえた。
「耀龍!来るぞ!」その声の主はわからなかった。
「もうかっ!レンカク、頼む」
「心得た!」すると、闇からともなく大型の獅子のような獣が現れた。それは体は黒で深紅のまだらがある、鬣が青く、目は碧、尾は二本あり、この世の獣ではなかった。
「な、なんなの、この生き物!」ゆうなはその獣を見て言った。
「さぁ、ここはレンカクが抑えますます、今のうちにこの中へ。」耀龍という男は劉輔を噴水の光に引っ張った、そのときだった、不意に空から何かが落下してきた。それは鳥だった、それは鷲のような鳥だった、しかしそれは普通の鷲よりも何十倍と大きかった。風圧で劉輔たちは押しつぶされそうだった。
「だから早くしろと言ったのに!致し方ない、これをお使いになられよ。」そういって渡されたのは剣だった、鞘と剣、あとはそれに付いていた何かの牙で作られたと見られる飾りだった。
「何だよ!これ、オレは剣なんて使ったことないぞ!」そう剣を渡され、わけがわからず、男に言っていたときだった、真上か鋭い何かが劉輔を掠めた。
「レンカク!」男がそういうと影から現れた獣が現れた巨大な鳥に噛み付いた、そして獣と鳥は争い始めた。
「早く!その剣でとどめを!」男はそう言って鳥を指差した。
「とどめって、あれをやれって言うのか!?できんのかよ!?オレに?」劉輔が困惑している間に巨大な鳥は獣を引き離し、劉輔に向かってきた、そして劉輔の横を通り抜けた。すると劉輔とゆうなは身体に痛みを感じた。すると劉輔とゆうなの身体から血が流れた、巨大な鳥が通り抜けたときに起きたかまいたちが、斬りつけたのだった。
男はすぐさま駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!」
「大丈夫だけど!何なんだよあの鳥は!」劉輔が答えると、男は顔をしかめた。
「あなたではない!この娘のことだ!無関係かものまで巻き込む・・・」男はゆうなの顔を見て顔色が変わった。
「な、何?どうかしたの?」ゆうなはどうすればよいかわからなかった。
「な、なんということだ・・・このお方は・・・」耀龍という男はゆうなを知っているようだった。
「はっ、ゆうな!大丈夫かゆうな!?」劉輔はゆうなに駆け寄った。
「耀龍!何をしている!早く行け!」そう言ったのは、レンカク、という獣だった。
「レンカク!まだいけるか?」耀龍がそう言うと、獣は首を横に振った。
「あと二、三ほど加勢させてくれ。」獣はそう言うと瞑想を始めた、それを見た男も何かを悟ったかのように頷いた。
「ゼイソウ、シュウマ、テオリ!」耀龍がそういうと闇からまた何かが現れた。一体は狼のような大型の獣だった、色は白く、目は深紅の瞳だった。もう一体は大型の鳥だった、しかし襲ってくる鳥よりは小さかった、翼は白く身体は黒い、目は碧で三本の尾をもっていた。
「テオリ、このお方を。」耀龍がいうと大型の鳥が耀龍の前に降りて翼を広げた、そして耀龍はゆうなをテオリの背に乗せた。
「きゃぁっ!何?どうするの?」ゆうなはテオリにしがみついた。すると耀龍も劉輔を背負い噴水の中に飛び込もうとした。
「ま、まった。何処へ行くつもりなんだ?」劉輔が訊くと耀龍は何かをつぶやいていて劉輔はその声を聞き取れなかった。
「レンカク、ゼイソウ、シュウマ、頼んだぞ!できるだけ時間を稼いでくれ!」耀龍はそう言って噴水の光の中に飛び込んだ。
「ちょっ、ちょっとまて、これはただの噴水だぞ!」劉輔は飛び込む耀龍に言うが、耀龍はそのまま光の中へ入った、そして背負われている劉輔も吸い込まれる、咄嗟に劉輔は息を止めて目をつぶった。しかし光の中に入ると水に飛び込んだ感覚はなかった。そしてテオリという鳥もゆうなを背に乗せ光の中へ入った。
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2003/09/23(Tue)01:58:16 公開 /
GAKU
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GAKU初作品です。モデルは「十二国記」です。でもかなり設定や展開に困りました、まぁ読んでさい。読みにくいかもしれませんが・・・
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