- 『チクタク時計の螺旋渦 (プロローグ)』 作者:さらさら / 未分類 未分類
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原稿用紙約3.4枚
ちぃちゃん、僕ね。大きくなったら絶対ちぃちゃんのお姑さんになるね〜
じゃあ、わたしもたっくんのお嫁さんになるぅ〜
ぜったいだよ。
うん。
嘘ついたら?
嘘つかないよ〜
ほんとに?
ほんとのほんと
じゃあ指きりしよっ
いいよ〜
じゃあいくよ〜嘘ついたらハリセンボンのー…ます
『指切ったぁ!』
本当に微笑ましい光景だ。後先の事を考えないし、考えられない。今となっては何を考えていたかさえ分からないあの時だけの幸せ。
卒園式の時は二人とも永遠の別れかと言うぐらい大泣きして周りの子達も貰い泣きをしてお別れの歌がたちまちかえるの合唱になってしまった。
先生たちも保護者も卒園式どころではなくなってしまった。
その卒園文集にも「大きくなったら○○になりたい」の欄にはヨレヨレの古代文字で『おおきくなったらちぃちゃんのおしゅうとめさんになりたいです』と乗っており、ちぃちゃんも『おおきくなったらタックンのオヨメサンになりたいです』となかなかの達筆、それでいて当時流行のカタカナも使って書いてあった。
小学校も同じであんなに泣いたのは何だったのかと一緒に笑ったものだが、入ってすぐ転校してしまった。そっと風が出かけるように。
そう、何も言わずに。
「有田さんは、有田千加子さんは両親の都合で遠くに行ってしまいました。」
裏切られた。 それしか思えなかった。
今度あったら針千本飲ましてやる、とそう心の中で呟いた。
ちぃちゃんがいなくなった学校はなんだか空しい所だな。それしか思えなかった。
どうしても腑に落ちない。どうしてちぃちゃんは何も言わず出て行ったんだろう?その行き先はどこだろう?
その事を両親や先生に尋ねてみたが先生は先生で苦い顔をして何も言わず、両親は両親で暗い顔をしてこう繰り返すだけだった。
「おうちがね、だめになっちゃったんだよ。だから何もいわずに遠くに行っちゃたんだよ。」
その時は何も分からず、「おうちは関係ないじゃないか、だめなら僕んちで暮らせばいいんじゃないか」と強情な事を何度もいったが両親は顔を振るだけだった。
その日からたっくんは少しだけわがままになった。
あれから20年が流れた――
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2003/09/13(Sat)04:14:48 公開 / さらさら
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■作者からのメッセージ
はじめまして。さらさらと申します。
とりあえずテーマはミステリーかな?
読んでくれた方、いたら感謝。いなくてもオーナーに感謝です。