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『虚王のタリト 十二章』 作者:piyo / 未分類 未分類
全角715.5文字
容量1431 bytes
原稿用紙約3.15枚
 
 何の為に彼は私を「王」にしたんだろう?

 私の何を見込んで、「王」にしたのだろう?

 
 私はこんなにも、汚いのに―――――
                
                 *


「孤・・王・?」

 虚王はまるで殺人現場でも見たように――いや、実際殺人現場なのだが――呆然と佇んでいる。
 ぴちゃ、と滴る血の音が空気を揺らし、夜気に溶け入る。
 孤王は虚王を見つめ、虚ろに口を開いては閉じ何かを伝えようとしていた。が、虚王はそれよりも戎羅のことについて訊かなければならない気持ちがはやる。

「一体・・? 戎羅の事だってそうだ。まさか・・本当に」

 孤王は応えない。
 ただ、燐榛を力いっぱい握ってはその鋭い瞳を虚王に向けているだけ。

「なぁ、教えてくれ。戎羅を殺そうとしたのは、孤王なのか?」

「・・・」

 闇が渦巻く。
 夜気が冷える。
 血が滴り落ちる。


「なぁ」


「――――だとしたら、どうする?」


 突然口を利いた言葉は、それだった。
 驚いた虚王は孤王を見つめ、その壊れた笑みを浮かべた表情を見た。
 
「!」

 不意に孤王は虚王を押しのけ、裏路地から飛び出た。燐榛を持ち、そのまま夜の街を飛び出し、誰も居ないところへと消え行く。

「孤王!!」


 叫んでも届かない祈りはある。
 叫んでも届かない叫びはある。

 涙を流しても、それは暗涙で。

 誰も気付かない 誰も知りえない。


 
 ざっ―――――



「?」

 意図せずに飛び込んだ森に、孤王はただ一人となった。月の光を遮断するほどに生い茂る木々の下に、孤王は佇んでそこではじめて孤独になったことを悟った。


 そして、そこで孤王は死を見ることとなる。


 
2003/09/07(Sun)10:28:07 公開 / piyo
■この作品の著作権はpiyoさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
暫く更新が滞っていたので(修行の為)更新しました。・・自分の腕がまだまだ未熟なのを知り、少し落ち込んでいたのもありますけど。。そんなこと言ってたら私毎日落ち込まなきゃなりませんけどね。
 読んで下さったかた、ありがとう御座います。こんな小説でも目にかけてくださることを祈って―――
 では、ありがとう御座いました。
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