- 『虚王のタリト 十一章』 作者:piyo / 未分類 未分類
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住処に雪崩れこんで来たその姿は
尋常では無かった。
苦し紛れの笑顔で誤魔化そうと必死だった。
*
「――――戎羅!?」
庭で暫くぼおっとしていたときだった。
息を切らせて駆け込んで来た戎羅の表情は、まるで鬼にでも遭遇したような表情で、恐怖に身を強張らせていた。
俯いて座り込むと、両手で自分を抑え、少し嗚咽の混じった声をか細く発していた。
「戎羅!一体何が―――」
駆け寄った虚王を見るや、戎羅は無理に笑顔を浮かべる。
「何でもない」の繰り返しに、虚王はただ戎羅の手当てをすることしか出来ずにいた。
しかし――――誰が此処まで切り刻んだのだろう?
幸いな事に素早く切れたようだ。ならば傷の治りは早い。致命傷になるようなものではない。
「・・・戎羅、一体何が在ったんだ。教えてくれないか」
シルクのベットの上で横たわる包帯だらけの戎羅に、訊ねる。が、戎羅はただ壁の方を向いて、押し黙っているだけ。
「・・・」
応えるまで、其処に居るつもりだった。
だが、戎羅は押し黙ったまま眠ってしまった。
「・・・孤王に、会いに行くか」
ひとりごちて、その場を去る。
唯一その時間戒羅が会いに行った人物に。
彼女なら、あるいは知っているかもしれない。
そのときは疑う気も無かった。
ありえないと信じていたから。
そして。
彼は『それ』を目の当たりにする。
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2003/09/01(Mon)17:20:37 公開 / piyo
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■作者からのメッセージ
十一章ということで、十章を越えました。これといって特に何も無いのですが、飽きっぽい私にしてみればよく続くほうだと思ってます。
いつも感想などをわざわざ書いてくれるお方や、書いてくれなくても目にかけてくれるお方、この場をお借りして御礼を述べたいと思います。
本当にありがとう御座います!
「虚王のタリト」の完成を目指して頑張りますので、これからもよろしくお願いします☆