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『虚王のタリト  八章』 作者:piyo / 未分類 未分類
全角800文字
容量1600 bytes
原稿用紙約3.4枚


 当ても無くただ活気溢れる街を彷徨っていた。
 彷徨っていただけで、当ては無かった。


               *


「虚王様・・わつぃ、謝ったほうがよかぁ・・・?」

 取り残された二人は、庭の出口を――孤王が出て行った先を――呆然と見つめていた。
 そして暫くして戎羅が、申し訳なさそうにそう呟いたのだ。
 虚王はカップの中の紅茶を見つめて、戎羅に視線を移した。

「・・・原因が理解らないんじゃ、謝り様がないだろ?心当たりは無いのか?」

 戎羅は首を横に振る。

「じゃあさ、様子が可怪しいとか・・」

「・・・どんな理由だか理解りませなぁ(せんが)、とりあえず謝りに行った方がよか・・わつぃ、謝らんよや謝った方がよかと思わしゃ・・・・」

 そういうと戎羅は庭を駆け出る。
 虚王はただ、紅茶を見つめて啜る。

 紅茶は琥珀色の波紋を浮かべるだけ。



                **


 ただ、ただ戎羅が憎い。
 どうして憎いのか自分でも理解らない。
 だけど、戒羅に対するこの『嫉妬』は、まだ胸の奥で渦巻いている。


―――今戎羅の顔を見たら、きっと殺してしまう。


「よぉ、いい服着てんじゃねぇか」


 不意に、自分が裏路地まで来ていた事に気が付いた。
 そしてその次に周りを巨躯を持つ男達に囲まれている事に気が付いた。
 
「ぶち殺されたくなければ、全部よこしな」

 女相手にか。
 下種。
 一瞥すると、孤王は毒を吐いた。

「下等種が何言っても聞こえんな」

 そしてそれは、完全に男達を触発したのだ。


 あれ以来、孤王は特別な例を除いて無駄な殺しはしていない。
 だが、今は別だ。
 殺さなければ、殺される。
 それ以前に、腹の虫が収まっていない。


「死ね!!」


 叫び、男達は勢い良く孤王に斬りかかる。
 

――――懐かしい。


 にぃ、と不気味に歪んだ笑みを浮かべて、愛用の武器を男達に向けた。


2003/08/29(Fri)11:35:51 公開 / piyo
■この作品の著作権はpiyoさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回は時間差があってもしかしたら理解りにくかったかもしれません。
 ちなみに戎羅の言葉はたまーーに私が使っている言葉が入ってます。(でも、『わつぃ』なんて言ってません。)時々変になるけど・・
 
 遅くなりましたが、八章を読んで下さってありがとう御座います。感想などいただけると嬉しいです☆
 よろしかったら九章もよろしくおねがいします★
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