- 『粉雪のシンキロウ』 作者:うさぎ あゆみ / 未分類 未分類
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 原稿用紙約7.35枚
 
 
 
 
 
 
 『ねえ、勇くん。知ってた?  雪ってね、ときどき幻を見せるのよ。』
 
 
 
 
 『まぼろしってなぁに? お母さん』
 
 
 
 
 『う〜ん・・・それはね―――――――。』
 
 
 
 
 
 
 
 ―――――――それは、何?ねえ、続きを教えてよ。母さん!!!
 
 
 
 ハッ
 
 「夢・・・か」
 
 オレは、頭をボリボリ掻きながら、起き上がった。
 
 ったく、18歳にもなったのに、まだ母さんが死んだ夢を見て泣くのかよ・・。
 
 オレは、側にあったティッシュで頬の涙を乱暴に拭き取った。
 
 18歳の誕生日をむかえた朝、オレの気分を最悪だった。
 
 母さんが死んだのは、オレが6歳のときだ。当たり前の話だが、あまり記臆に残っていない。
 
 なのに、時々・・・思い出したかのように、母さんの夢を見る。
 
 いつも、いつも、同じ内容の夢だ。繰り返し・・・繰り返し・・・。
 
 
 『勇くん・・・寒くない?お母さんのマフラー、貸してあげるよ?』
 
 
 幼いオレ。その横にいるのは・・・
 
 チッ・・・!
 
 オレは、すべてを忘れるように、頭を思いっきり振った。ついでに、昨日から置きっぱなしのコーラをイッキ飲みする。
 
 最近、父さんも忙しいし、寂しいのかな?・・・オレ。
 
 
 
 母さんのことは、もう過去のことなんだ。
 忘れなきゃ。
 
 
 コーラのおかげで、だいぶ気分が良くなってきた。
 
 「そういえば、今日はバイトの日だったな」
 
 オレは、そう言うと、気合いを入れてベットから飛び出した。
 
 
 
 そうだよ・・・。今まで、母さんがいなくたって、父さんと二人でがんばってきたじゃないか!
 
 別に、今さら母さんに会いたいとか思わない!!
 
 そうだ、寂しいなんて思うわけ・・・・・ないんだ。
 
 
 
 無理やり自分に言い聞かせ、オレは少し安心した。
 
 しかし、そのまま、何気なく窓を見ると―――、
 
 「雪!?」
 
 なんと、外は一面、銀世界だったのだ。
 
 「・・・ここは都会なのに。」
 
 
 その時、
 
 
 
 〃勇くん・・・〃
 
 
 
 
 気のせいだったかもしれない。いや、気のせいだったに違いない。
 
 でも、確かにオレの耳に、懐かしい母さんの声が聞えたような気がしたんだ。
 
 「か、母さん・・・??」
 
 
 
 
 
 
 
 その瞬間。今まで、ずっと思い出せなかった記憶が頭をかすめた。
 
 
 『まぼろしってなぁに? お母さん』
 
 ・・・これは、今朝の夢の続き?
 
 『う〜ん、それはね・・。自分がずっと思っていたことが、目の前に現れることよ』
 
 『ウーン。ぼく、よくわかんないなぁ』
 
 『じゃあ、勇くんがもっと大人になったときにね、お母さんが見せてあげるわ。だから、その時まで・・・お母さんを忘れないでね?』
 
 母さんはそう言いながら、オレを抱きしめた。
 
 『うん。あたりまえだよ。お母さん・・・なんで泣くの?』
 
 その時には、母さんは自分の命があとわずかだと、知っていたに違いない。
 
 なのに・・・幼かったオレには、それが分からなかった。
 
 
 
 
 
 
 〃勇くん、お母さんのこと・・・覚えていてくれたんだね〃
 
 
 
 その声で、オレは現実に引き戻された。
 
 
 
 
 オレの心の中だけに響く、母さんの声。
 
 「当たり前だろ・・・母さん」
 
 オレは、そっと呟いた。
 
 「忘れるかよ!この先もずっと・・・ずっと・・・」
 
 そのまま、オレは長い時間、泣き続けた。
 
 
 
 
 
 
 
 気がついて窓を見ると、いつの間にか、雪はみぞれに変わっている。
 
 自分も、いつも日常の中にいた。
 
 まるで、さっきまでの出来事がウソだったかのように・・・。
 
 
 
 
 
 もしかすると――――、
 
 
 
 
 
 今までの出来事は、粉雪が見せてくれた、束の間の幻だったのかもしれない。
 
 
 
 でも、もう・・・強がったりはしないよ。母さん・・・・
 
 
 
 
 
 ありがとう
 
 
 《完》
 
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2003/08/28(Thu)00:57:18 公開 / うさぎ あゆみ
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■作者からのメッセージ
 どうも!初投稿の「うさぎ あゆみ」です。
 こんな駄文を読んでくださり、感謝します。
 できれば、コメントをくださるとありがたいです。