- 『虚王のタリト   五章』 作者:piyo / 未分類 未分類
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 初めて会った時に
 
 胸の底から湧き上がったあの『感情』は
 
 今でもよく思い出す。
 
 
 1
 
 
 初めて虚王と出会った。
 そのときの事を、話そうと思う。
 
 
 
 *
 
 
 この世界で「王」を名乗る事が出来るのは実力者だけ。
 でも、私にはそんな名誉は不必要(いらな)いと思っていた。
 
 権力を翳すことに何の意味をもつ?
 実力を示したいのなら他にも方法は在るでしょう?
 
 
 ―――当時の『私』は、そんな事しか言えなかった。
 
 
 屁理屈にも聞こえるでしょう。
 その通り、その当時、私はまだ14歳だった。
 丁度5年前。
 両親は居ない。
 
 この世界では、子供は空気から生まれる。
 空気を他から切り離して(例えば袋に入れて口を閉める)其処に魔力を注入する。注入している間に作りたい子供のイメージを思い浮かべる。
 だから、血は繋がらない。
 父親はいない。母と呼べる女でもなかった。
 
 
 生まれてからというもの、
 惨めが過ぎて、屁理屈を言う生意気な悪餓鬼にしか成らなかった。
 
 その当時、私は本当に悪餓鬼だった。
 生活の為
 命の為
 それらの為だったら人を殺すのも惜しくなかった。
 
 ―――考えてみれば、それは「王」の名を翳す事と同じ意味だったのかも知れない。
 名誉の為
 命の為
 自身の為
 
 
 本当におろかな自分。
 
 
 剣を常に持ち歩いていた事を嘲笑っても構わないわ。
 私自身、思い出すたびに吐き気がする。
 
 
 とうとう、命が尽きたと思ったのは、
 
 
 食料が無くて困った末に
 
 
 
 ドロボウを働いた時の事。
 
 
 
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2003/08/25(Mon)10:49:02 公開 / piyo
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■作者からのメッセージ
 今回一切セリフなしの孤王としての過去です。実際はコバルト・ブルーの過去となんらかわりないですけれど。
 
 これで4章の時にかいたところと繋がりそうです。次の6章で完璧に繋がります。
 どうぞ次も観てやってください。
 批評、酷評、感想、注意点など待っています。