- 『虚王のタリト 四章』 作者:piyo / 未分類 未分類
-
全角1042.5文字
容量2085 bytes
原稿用紙約4.2枚
人を『縛る』事が出来たら
私はきっと醜い怪物に成り果てていた。
*
世界は、二つ在る。
一つ目は、彼女の世界。
二つ目は、コバルト・ブルーの故郷である世界。
「虚王がまた、挑戦者を返り討ちにしたんだってよ。恐ろしいなぁ」
街にふらりと当ても無く出て行ってその言葉を耳にした時、コバルト・ブルーの行き先は一瞬にして決まった。同じ「王」を名乗る者として、祝わなければと思い立ったからだ。
虚王の住処はこの大きくも無く小さくも無い丁度いい大きさの街から少し離れた丘の上の神殿。走っていけば30分かかるか掛からないかぐらいの距離だ。
自分の力に自信が在る者は「王」と名乗る。
その「王」の実力を測るため、他の人達が「王」に挑戦する。もしも「王」と名乗った者が負ければその「王」の名を奪え、もしも挑戦者が負ければ「王」の名が水たまりの上に水滴を落としたときに現れる波紋のように広がっていく。
コバルト・ブルーは、この世界では『孤王』と呼ばれていた。
相当な実力者として。
何十人もの敵に囲まれて、傷一つつかせず、敵を惨殺した。
生気を失った戦う為だけの機械のような者。
冷めた眼で、偶然見てしまった虚王をじぃ、と見ていた。
血の海に佇む、孤独。
孤独の王。
つけたのは自分ではない。
つけたのは――――
「虚王!」
男は、自分の庭に置いてある椅子に腰をかけて、紅茶を飲んでいた。
太陽が燦燦と輝く青空。
その青空の下で、適度に暖かい風を受けている。
「孤王。どうした」
慌てて走ってきたコバルト・ブルーこと孤王を見て虚王は吃驚した声を上げた。
喜びの色を浮かべて走りよる孤王に、「座れ」とテーブルの向かい側の椅子を示した。
「失礼します。―――いえ、また倒したと聞いたので、お祝いに」
はは、と照れくさそうにする。
「そんな事ないよ。なんで頑張って倒してるのに、皆寄って来るのだろう?」
「良いじゃないですか、それだけ名声が上がるでしょう」
無邪気に微笑む虚王の姿。
『お祝い』が口実だと知ったら、どんなに驚く事だろう。
虚王に会うだけの、欲望の口実だと知ったら。
人を『縛る』事が出来たら、
私はきっと醜い怪物に成り果てていた。
『嫉妬』に燃える、『リヴァイアサン』のような醜い怪物に。
-
2003/08/24(Sun)12:00:07 公開 / piyo
■この作品の著作権はpiyoさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
此処で少し解説らしいものをしたいと思います。
リヴァイアサンの事ですが、おそらく大半の方が海神を思い浮かべたかと思います。
此処に出てくるリヴァイアサンは海神ではなく、『七つの大罪』である『リヴァイアサン』の方なんです。ルシファー(もとはルシフェルという熾天使)に仕える地獄の人達の中に、『嫉妬』を司る『リヴァイアサン』がいます。他にも『怠惰』のアスタロト、『傲慢』のベリアルなどなど、悪魔(サタンに近いやも)がいます。(知らない方のほうが多いでしょうね・・)
なので、此処で出てくるリヴァイアサンは海神ではなく、悪魔です。長々と失礼しました。
遅くなりましたが四章を読んでくださってありがとう御座います。よろしかったら五章も読んで下さい。
では。