- 『天空の遺産』 作者:桃義 / 未分類 未分類
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原稿用紙約17.15枚
この世界の子供は16歳になると魔法を習うことが許可される。魔法を習うものは「浮島」と呼ばれる「魔法師」の住む大陸に移り住む・・
そこで師弟制のもと3年間魔法を勉強する。
ちなみに浮島は2つの大陸で出来ておりそれぞれ「光を中心とした魔法」「自然の力を中心とした魔法」となりどちらかを選択し学ぶことになる。
・・・まぁそんなわけで私アリアも例外にではなく・・今年から浮島に上り・・魔法の練習を始めたのですが・・
ここ・・浮島には色々制約が多く・・やれ南の森に近づいてはいけない・・やれ怪しい抜け道を見つけても入ってはいけない・・
やれ毎朝の花の水遣りは欠かさずに・・やれ食事の前は手を洗え・・
いやまぁ・・・後半部分はちゃんとやってますけどね・・こんな好奇心旺盛な16歳の子捕まえて秘境や抜け道見つけて入るなってのは無理な話なわけでして・・
「つまり・・図書室の奥の方に思いっきり抜け道見つけて入ったは良いけど迷っちゃったんだな〜これが・・はっはっは!!」
誰に言うでもなく無駄に明るく笑ってみても響くのは自分の笑い声のみ・・うぅ〜む・・いよいよどうしたもんか・・
「ま・・まぁ・・とりあえず冷静な状況分析からだよね!」
大体なんで図書館に抜け道があるんだ・・私の沽券に関わることだからこの際はっきりと言わせて頂くが・・
図書館の持ち出し禁止の本抜き取ろうとした瞬間落とし穴が開くのは如何なもんか・・・・
まぁ・・今更愚痴ってもしょうがない・・これは後々司書の人に角を金属補強した厚手の本片手に詰め寄ればいいだけのことである・・
今やるべきは冷静な状況分析!?
とりあえず疲労回復も兼ねてその辺に座り込み暗闇の向こうを目を細めるように見つめる・・
どうやらこの先も入った時(落ちた時)と同じ単調な狭い通路のみ・・ただしかなり入り組んでいるようだ・・いたるところに曲がり道が点在している・・
「なぁ〜んか・・・いかにも何か隠してますって感じの場所だわね・・・」
私のこーゆー時のカンは結構当たる確立が高い・・一重に好奇心により鍛えられた賜物である・・
・・・・まぁ・・その分の見返りで何度か死にかけてるが・・・
「考えててもしょうがないわね!帰れない以上・・前に進むのみだわ!」
冷静な状況分析(あくまで言い張る)の結果・・といっても選択肢はコレしかなかったわけだが・・とりあえず奥へ歩きだす・・
明かりもないこの状況・・唯一の助けはいたるところに生えてるこのカビのうっすらとした光のみ・・
本で読んだことがある・・コレは多分ヒカリゴケと言うやつだろう・・暗闇に生息しうっすらと発光するとゆー名前どおりのシロモノである
「せめて明かりの呪文覚えておくんだったわ・・」
ある程度進んだところでボソリと呟く・・
いくらヒカリゴケがあっても暗いことには変わりない・・何度壁にぶつかったことか・・
「これ以上壁に激突したらお嫁にいけない・・私の将来設計はめちゃくちゃになっちゃうじゃない!?」
単調な通路を延々と歩くことにすでにうんざりし・・おなかも減ったこの状況で1人叫ぶ姿は思いのほか物悲しいものである・・
しっかし・・どこまで続いてるんだココ・・結構適当に歩いてるから・・実はグルグルまわってるってオチじゃないだろうな・・
「うぅぅ・・お家に帰りたいよう・・」
一時間くらい歩きまわり・・いい加減泣きの入りかけた時・・まっすぐ続く通路の奥に扉のようなものを発見・・
「おぉ!!アレはまさしく扉!?天国への入り口!地獄からの脱出口!待っててね非常口!」
人間空腹と寂しさが極限に達すると良く分からないことを口走るのが世の常である・・よって深くはツッコまないように・・
今までの疲れは何所へやら・・思わずダッシュで扉に近づく私・・見た目以上に距離もなく・・
軽く息切れする程度で扉の前までたどり着いた・・
「うはぁ・・でっかい扉・・・」
思わず見上げるその扉は軽く小ぶりなドラゴンなら通れる位の大きさである・・あ・・蜘蛛の巣張ってる・・
「なんか・・・ますます秘宝とか隠されてそうよねv」
ココに来て好奇心がまた高まるあたり自分で言うのもなんだが懲りない性格である・・
扉に鍵がかかってないのを確認し・・ドアノブに手をかけて扉を押す・・
ぎぎぎぃ・・・・・
錆びた金属の音なのか・・単にたて付けが悪いのかは知らないがありがちな音をたて以外にあっさりと扉は開いた
暗闇の中目を凝らすように中をうかがう・・どうやら扉に見合わず結構狭い部屋のようだ・・
真ん中に何か四角い台のようなものが見える・・
「なんだ・・秘宝じゃないじゃない・・・これ何だろう・・」
扉が閉まらないようその辺に落ちてた石で固定し中に入る・・こんなところで締め出しくらったら泣きだけじゃすまないからね・・
「やだ・・これって・・棺じゃない・・」
台と思っていたそれは・・手で確かめるように触るとどうやら棺のようだ・・ひつぎの上の部分に何か掘り込まれているようだが年代もの
のせいか大半は消えてしまっている・・とりあえず手でなぞり読める部分だけ読んでみる
「えぇっと・・恐怖の根源・・・封印・・火気厳禁・・・落書き禁止・・起こすな危険・・??何これ・・」
・・・なんでこの世界の連中はこーゆーシュールな笑いを取り入れようとするんだ・・伝統かこれは・・
「しかも・・封印って・・この封印符すでに破けちゃってるじゃない・・」
足元にあった紙切れを拾ってみるとどうやらコレが封印として使われたもののようだ・・思いっきり破れてるし・・
とゆーかかなり大昔のものだろう・・はっきり言って風化寸前なものまである
「ってことは・・これ封印解けちゃってるのよね?じゃあけてもいいよね」
まさか封印が解けたのを知らないままいまだ何かしらこの中で眠ってるなんてふざけたことはないだろう・・
とりあえず・・・コンコンと蓋を叩き聞き耳を立てるが何の反応もないことを確認し・・
「どぉりゃぁぁ!!!」
勢いよく蓋を開ける・・そう・・まるで某野球漫画のお父さんのような感じで・・
勢いをつけすぎたせいで壁に蓋が激突して破壊しちゃったけどまぁ見なかったことにして・・
私はいそいそと棺の中を覗き込んだ・・そこには・・
「・・・・何これ・・人形?」
・・そこには封印が解けたことを知らないまま静かに横たわる幼い子供の姿をした人形があるのみだった・・
「これって人形よね・・・どうみても・・・」
棺の中のモノを角度を変えたり半壊した蓋閉めたり開けたりしながら何度も何度も確かめるが
薄暗い中でどう見てもそこに横たわってるのは幼い子供の人形・・
耳が隠れるくらいの蜂蜜色の髪小さな手足には不釣合いなほど袖と丈の長い服・・
裾と襟の部分には古代文字のような刺繍が入っている・・
その衣装にはほころびなど一つもなく・・まるで今着せられたかのように綺麗である・・
「でも・・なんでこんなところに人形が・・・」
恐る恐るその人形に手を伸ばす・・・すると後数センチと言うところで人形の目が開いた・・
「!!!!!?」
その開き方はまさしくぱちっっと音がしそうなほどの勢いで・・思わず私は壁まで退いてしまった・・
「あ・・ぁ・・目・・目が・・」
思いっきり動揺した私は満足な言葉も出てこずにただ口をパクパクとさせるのみである・・
そんな私を尻目に・・その人形は滑らかな動きでむくりと起き上がった・・
虚ろな目は綺麗な紫色をしていた・・そのままゆっくりとこちらを向き・・・
「・・・おはよう」
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
「・・・は?」
「おはようと言ったのだ・・言葉は通じるか?」
ぽかんとする私を見ながら欠伸をかみ殺し伸びをする人形・・
しかし・・・何だ・・あの似つかわしくない言葉使いは・・
「おーい・・お主聞こえとるか?」
棺の淵を支えに頬杖をつき私に向かってもう片方の手を振ってくる・・その姿にはっっと我にかえり・・
「き・・聞こえてるわよ・・ちょっと脳の処理能力がフリーズしてただけよ・・えーっと・・とりあえずおはよう」
どうやら私の脳は今だ少々混乱してるらしい・・落ち着け私・・
「まぁ・・無理もない・・いきなりこんなふるい遺跡の奥にあるのがわしだからのう」
普通はそーゆー反応するわい・・と軽い調子でケタケタと笑うこの子供・・
あっけにとられながらも必死で落ち着こうと私は深く深呼吸し・・
「まぁ・・図書室の奥に何でこんな遺跡があるのかなんてこの際おいといて・・何よりも気になるのは何でこんなところにあなたみたいな子供がいるのよ・・」
見た目だけみれば多少声がうわずってるが冷静な表情になってる・・はずだ・・
「ん?わしか?まぁ話せば長くなるのだが・・大昔のひひじじいどもにココに封印されてのう・・カレコレ300年になるこんな姿じゃが本来はもちっと違うぞ?」
「さ・・・三百年・・・」
かなりの年月をさも昨日のようにあっさりと言うなよ・・ってゆーか・・ひひじじい?
「まぁ・・積もる話はココでは少々出来ぬな・・」
ふと・・・そう言葉を区切り私が入って来た方を見つめる相手・・その視線にあわせるように私も向こうとした瞬間・・
ゴゴゴゴゴゴ・・・
「な・・何の音!?・・何か崩れたような・・」
地響きと何かが落下するような音が混ざり合った感じで遺跡全体に響く・・これって・・もしかして・・
「なかなかいい耳しておるのう・・間違いなく崩れておるぞ・・早く逃げることをすすめる」
「すすめられなくても逃げるわよ!って逃げ道ないじゃない!そもそも何で崩れるのよぉぉぉぉ!!」
完璧に錯乱してる私とは裏腹にあくまでのんびりマイペースなお子様・・緊張感ってゆーか危機感ってものないの!?
「ふむ・・どうやらわしが起きたら遺跡ごと崩して生き埋めにするつもりのようだのう・・つくづく手の込んだ仕掛けだわい」
「呑気に状況把握するなーーーー!!!そんなことより出口はないの!!出口よ!非常口!!」
ケタケタと大笑いする相手の襟首掴み自分の目線まで持ち上げ詰め寄るもまったく動じる様子もない・・
おかしいな・・にらみには結構自信あるのに・・ってそんなことどーでもいいのよ!
「ひひじじいどもがわしを生き埋めにしようと試みるこの状況で非常口なんぞあるわけなかろう?」
ニヤリとなんとも子供らしくない笑いを浮かべ見上げてくる・・そんな表情を見てあまりのショックに立ちくらみが・・
「いやぁぁ!!死にたくない!?」
「おぬしも不憫だのう・・こんなところで死ぬとは・・遺体の発掘は見込みなしじゃぞ?」
まだ魔法も満足に習ってないのに!私の人生設計じゃ数年後私は浮島の中で最高の魔法師になる予定だったのに・・
まさかこんなところでついえるとは・・人生ってわからないね・・
完璧に喪失感と絶望感に打ちひしがれてる私尻目に・・お子様は部屋の中を歩き回り・・途中何屈みこみ何か拾ってるようだ・・
「何してるのよ・・どうせ埋まるならせめて綺麗に埋葬されましょう・・どうせ死んだら土に埋められるんだから・・」
人間いざとなったら諦めと居直りがすべてである・・
「まぁ・・そう言うな・・ちゃんと助けてやるわい・・」
部屋の真ん中に体育座りで座り・・全てを受け入れた私に対しどこか呆れたような口調で答え徘徊をやめ私の元へ戻ってくる
私が座ったことにより目線が下になったのかニヤリと笑ったまま私を見下ろしてくる相手にジト目で睨む
「助ける?どうやってよ・・逃げ道も非常口も脱出口もないこの遺跡の中からどうやって!!」
一気にまくしたてる私・・これはどう見ても一般的な反応だろう・・人間死の瀬戸際になると人格だって変わるのだ
「逃げ道も非常口も脱出口も同じ意味ではないか・・?」
「そーゆー細かいツッコミは却下よ」
キッパリと言い切る私に大げさに溜息をつく・・こーゆーところが益々子供っぽくなくて違和感があるなぁ・・
「わしを誰だと思っておる・・歴代の偉人達を長年ビビらせてた偉大の中の偉大な人物シーナ様じゃぞ?不可能を可能にするのはわしのモットーじゃ・・安心せい」
「シーナ・・?知らないわね・・」
「まぁ・・今の若いのはしらんだろうなぁ・・」
これでも結構有名人なのだが・・と苦笑しつつどこかさみしそうな表情で呟くシーナ・・
いや・・そんな床に「の」の字書かなくても・・
「まぁよい・・家に帰ったら古い文献でも読んでみろ・・削除されなかったら載っておるかもしれん」
「え・・めんどくさい・・」
いや・・だから何も泣かなくても・・あぁ・・拗ねて部屋の端っこに蹲っちゃったよ・・
「はいはい・・謝るから・・いい加減死ぬ前にココから出して」
頭痛がする頭押さえながらしぶしぶと謝る・・疲れるなぁもう・・
「まったく・・最近の若者は礼儀とゆーのを知らんのか・・」
ぶつぶつと愚痴りながらも部屋の中心に立ち何か呪文を唱え始めるシーナ・・・
かすかに聞こえる呪文はまるで聞いたことのない内容で・・
爆音で聞こえなかったが・・シーナが力ある言葉らしきものを発した瞬間・・部屋は眩いばかりの光につつまれ・・
「アリア!?無事でよかった!!?」
「・・・・・・・あれ?師匠?」
はっと我に帰ったとき・・私は図書館の裏にいた・・
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■作者からのメッセージ
初めて書いたファンタジー小説です。
基本的にギャグ思考・・・
最初はギャグ最後はシリアスって感じですかね・・まだ現在進行中