- 『Connecting with you』 作者:宇多崎 真智 / 未分類 未分類
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原稿用紙約6.3枚
『陽ちゃん、こっちでは今日、日中の気温が35℃まで上がりました。
私は用があったので外に出なきゃならなかったのだけど、そっちとは比べ物にならない暑さです。まるで熱したフライパンを全身に近付けられてるみたい。
陽ちゃんのいる信州が、羨ましくてたまりません。
元気ですか。』
『真由香、暑さに弱い君がそっちで溶けていないか心配です。今日はこちらも暑い日でした。
僕等が住んでた所は標高が高いから涼しい方だけど、学校のあるあたりは大分低い所にあるので(それでもそちらの山くらい高い所にあるかもしれません。笑)、湿度はともかく、気温的にはあまり変わらないと思います。
僕は早速夏バテして、2キロも痩せてしまいました。真由香も気をつけて。』
『陽ちゃん、2キロも痩せちゃって大丈夫ですか?
私は皆に勧められるままにいっぱい食べて、なんとか頑張っています。逆に少し太ってしまったかもしれません。やだな、今度会うとき恥ずかしいです。
今日も暑い日でした。でも、すごく素敵なことを見つけたので報告します。
私の学校の近くに、公園があるんです。公園と言っても、芝生とベンチくらいしかないから、広場と言ったほうが近いかもしれませんね。
ともかく、私はそこの近くに用事があって、その帰り、あんまり暑いからそこで休もうと思ったんです。
そしたらね、ちょうど噴水とスプリンクラーが作動していたところだったの。
スプリンクラーが遠くから見るとキラキラ光ってガラスの華みたいでね、とても綺麗でした。噴水の中に虹が出来ているのを見ると、覚えてますか、昔陽ちゃんや慎ちゃんと釣りに行ったりしたことを思い出しました。
そんな訳で、今日はとても幸せな気分になったのです。今夜は昔の夢が見られるかも知れません。
それじゃあ、おやすみなさい、陽ちゃん。』
『真由香、いい夢は見れましたか?
返事が遅れてしまい、ごめんなさい。でも今日は、久しぶりに釣りに行ってきました。去年は色々忙しくて、それどころじゃなかったからね。実は昨日の真由香のメールを読んで、急に川に行きたくなってしまったのです。
勿論覚えているよ。よく3人で、まだ暗いうちに坂を駆け下りて、川へ行ったね。だんだん明るくなっていく空が川面に反射して、とても綺麗だったのを覚えています。
真由香は夏バテじゃなくて、少し太ったのですか? でも、もともとモヤシみたいにガリガリしてたのだから、少しくらい増えた方が良いのだと思います。
そういえば、最後に会ってから4ヶ月も経つんだね。夏休みは帰って来れそうにないのですか?
そろそろ会いたいなぁと思っているのは、僕だけでしょうか。』
『そうですね、そろそろ会いたいなんて思っているのは陽ちゃんだけかも知れません。だって私はいつも、陽ちゃんに会いたいと思っていますから。
でもごめんなさい、やっぱり夏は帰れないと思います。
ここ数日メールできなかったのは、バイトが忙しかったからなんだけどね、やっぱり生活かかってるから。
陽ちゃんからもお母さんに謝っておいて下さい。
いっそのこと、陽ちゃんがこっちに来てくれればいいのになぁ、なんて思ってしまいます。』
そこまで打って、私は『送信』ボタンを押した。今、見えないけれど確かに、私の携帯と陽ちゃんの携帯は繋がっている。それが私を、ひどく安心させた。
『送信完了』の文字が出て、私は大きく息をつく。
今日は本当に忙しかった。店長さんが、今日がピークだから、と言ってはいたけど、先輩たちの反応を見る限り、あまり信用できない。
はぁ、ともう一度ため息をついたとき、携帯電話が鳴り始めた。
陽ちゃんからのメールかな、と思ったけれど、この曲は電話の着信音だ。私は慌てて、電話をとる。
『あ、真由香? 僕だよ』
懐かしい懐かしい、陽ちゃんの声がした。
「えっ、陽ちゃん? 陽ちゃんなの?」
声が上ずってしまう。滅多に電話なんかしないのに、どうしたのだろう。ああそれより、こんな変な声を出しちゃって、陽ちゃんは呆れていないだろうか。
繋がった電話の向こうから、とても可笑しそうに笑う気配が伝わってきて。
『真由香、真由香。これ、何の音だ?』
え? と聞き返す間もなく陽ちゃんの声が受話器から遠ざかったので、私は受話器に耳を押し付けた。
『ピンポ――ン』
ピンポ――ン
え? ええ?
今、受話器の向こうからと、受話器を当てていない方の耳に直接、音が重なったような気がしたのだけど。
『何の音か、わかった?』
私は立ち上がって、大好きな大好きな陽ちゃんに繋がるドアを、開けに行った。
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2003/08/21(Thu)00:55:21 公開 /
宇多崎 真智
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■作者からのメッセージ
和訳は「君と繋がっている」となります。1つ目のテーマは『携帯』、2つ目は『夏』です。夏は見てるだけなら無害なんだけどなー、と私は毎年思ってしまいます(笑)
このような会話だけで話を進める文体は初めての試みなので、皆さまの評価が気になる所です(笑)。最後まで読んで下さって、ありがとうございました。