- 『復讐』 作者:加古絽 / 未分類 未分類
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石で出来た扉を男は何度も何度も叩き
叫び続けていた、手から血が滴り始めている
「・・・・何?」
扉の向こうから幼い声が聞こえてきた
「扉を開けてくれ!!俺をここから出してくれ!」
男は泣きながら懇願した
扉に付いた小さな窓が嫌な音を立てて開く
窓の隙間から少女が部屋の中を覗く
「駄目だよ、貴方自分がどうして其処に居るか分かってないの?」
少女はクスクスと愉しそうに笑った
「俺はまだ死にたくない、死にたくないんだ」
男は脅えながら少女に訴える
少女の顔から笑顔が消え憎しみと怒りで満ちていく
「あの人も、あの人も死にたくなかっただろうに!!」
グチャッ
次の瞬間男の頭が潰れた
少女が愛する男を殺した男は
男が愛した少女の手により殺された
これはこの国で定められた法律
『復讐』
次の日中央広場には復讐が終わったことを示す深紅の旗が掲げられていた
今朝からずっとこの復讐のことで国中持ちきりだった
それは偶然この国に来ていた旅人の耳に届くほどであった
途切れ途切れに聞こえてくるその噂に旅人は興味を持ち
昼食を摂っている時思い切って隣に座りお茶を飲む男性に聞いた
「一体この国の人々は何の噂をしているのですか?」
「あ?ああ、あんたこの国の人間じゃねえな?」
男はどうやら結構な量の酒を飲んだらしかった
「はい。昨日この国に観光を目的として入国したイオリと申します」
イオリと名乗った旅人はにっこり微笑む
「俺の名前はサイロ、この国の憎しみの家で働いている」
「憎しみの家?何ですかそれは」
イオリは興味心身に訊く
「本当の名前は×××××なんだけど、そこでは自分の大切な人を奪った奴を
殺す事が出来るんだ」
「それっていわゆるあれですか?」
「ああ、復讐ってやつだな」
「そんなこと許されているんですか」
「刑法にちゃんと復讐法ってのがある」
「じゃあ、結構当たり前に行われることなんですね」
サイロは深いため息を吐き
「いや、この国は平和で滅多にそんな事にはならない」
その言葉を聞いたイオリは
「教えてくれませんか?お茶お代わりどうですか」
「ああ、貰おうかな」
サイロは無理やり笑顔を作り話し始めた
「少女の名はハルカ
男の名はヒイロ
二人は恋人同士だった
あと数日で結婚する筈だった
だけど悲劇は起こった
ヒイロの家に強盗が入って
そこに丁度ハルカも居たんだ
強盗は銃やらナイフやら持っててなあ
ヒイロはハルカを逃がすために
強盗に立ち向っていって、死んだ
強盗はあとで捕まったんだが
その強盗ってのが実は・・・・」
サイロはそこで話をいったん切った
言いにくそうに何か呟いている
「実は・・・・?」
イオリは話の先を促した
「ヒイロの唯一無二の親友だった」
「へえ、それでどうなったんですか?」
「ハルカは犯人が捕まったら復讐を心に決めていた。
だけど、ハルカの心はヒイロを失った悲しみで壊れてしまったんだ
我々がどうしようか相談していると
ハルカにその男が助けてくれって頼んだんだ
そしたら、ハルカは復讐用に壁に掛けてあった銃で
そいつの頭をぶち抜いちまった」
男は暗い顔で「それでお終いさ」と締めくくった
「ありがとうございました、でも最後に一つ良いですか?」
イオリの耳にした噂ではハルカは最後に
「ハルカさんは最後にどうなったんでしょう?」
「・・・。」
「自殺したよ、男を撃ち殺してすぐにね」
あの人を殺した男が
最後に吐いた言葉
「 ゆ る し て 」
私は神じゃないから
許すことなんて出来ない
許すことなんてしない
だけど
貴方が死んだら
貴方を殺したら
許してあげても良いよ
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2003/07/17(Thu)15:13:59 公開 / 加古絽
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■作者からのメッセージ
初めて小説書きました
小説を書くのって楽しいですね!!
下手ですが、また書きたいと思います