- 『だから。』 作者:エラ / 未分類 未分類
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 原稿用紙約4.8枚
 
 「ねぇっ!」
 私は前を歩く二人を呼び止める。
 「何さ平川ー、あっし早く帰って風呂入りたいんだけどー」
 「あぁっ!その前に一緒にマック行こうっつったじゃん!朝マックしようよ!!」
 「だぁーっうるっせ分かってるってばだからひっつくなー!!!」
 「本当に分かってんのー?池澤いつも忘れるじゃん!!」
 面倒臭そうに言う池澤に、丸井が丸一日前に交わした約束を突き出す。
 こんな二人の遣り取りは、そこいらを歩く女子大生と変わりない。
 
 ほんの三十分前まで、麻薬関係の危ないサン達と闘っていたとは、とても想像がつかない。
 
 「そんなんじゃなくてッ!人の話は聞く!!」
 私はもう一度叫ぶ。
 …一時間程前の池澤の台詞が鮮明に思い出され、私は段々とムカムカしてきた。
 
 「…だぁーら何だっての〜、用があるなら早くしてちょんまげ」
 「ちょんまげー!」
 心底ダルそうに答える池澤。
 それを嬉々として真似する丸井。
 
 嗚呼…あの池澤の台詞を丸井が聞いたら、どんなに悲しむだろう。
 悲しそうな丸井の顔を想像していたら、居た堪れない気分になってきたが…こういう事はハッキリしておいた方がいい。
 このままだと、後々丸井は傷付く事になるからね。
 
 いらぬおせっかいかもしれないけど、私には黙っておく事は出来なかった。
 私は意を決して、口を開く。
 
 
 「…ねぇ、丸井。アンタ、池澤の事なんて言ってた?」
 「へ?」
 私の質問が脳に浸透していないらしく、首を傾げる丸井。
 私はさっきより、口調を強くして言い放つ。
 「だからアンタは、池澤の事が好きか嫌いかって話!」
 言われて丸井は、にっこりと微笑む。
 そして、さも当然じゃん・と言わんばかりに、口を開く。
 「あったりまえじゃ〜ん?池澤の嫌いな所なんか欠片も無いよ〜☆」
 
 その言葉を聞いて、私は更に気が重くなる。
 しかし…と、私はニコニコしている丸井に向かって言葉を続ける。
 
 「その池澤がアンタの事なんて思ってるかって、聞いた事ある?」
 「平川ー、何か目つき怖い…」
 「聞いた事あるかって訊いてるの!」
 笑顔を崩そうとしない丸井に対しても、とうとう怒鳴ってしまった。
 丸井は何故私が声を荒げているのかも分からない・といった様子で、きょとんと私をみつめてる。
 「ぁんだよ、ンなこと」
 そんな丸井の肩を引っ掴んで、池澤が出てくる。
 その表情は先程と同じく面倒そうで、更に私の逆鱗に触れようともする。
 コイツはなかなかもって勇敢なヤツだ。
 
 池澤はけふんっ、と咳払いをし。
 「私は丸井の嫌な所はイッパイあるね。つーか嫌な部分の集合体?って感じ」
 はっきりきっぱりと、そう言い放った。
 私は今度こそ彼女に殴りかかろうとしたが、私よりも先に池澤の口が動いた。
 
 
 「そんな丸井だからこそ、愛せるんだよな」
 
 
 彼女は、誇らしげにそう言った。
 
 
 
 何を言っているのかが分からなかった。
 
 ワケが分からない、何矛盾した事言ってるワケ?
 
 そう言おうとしたが、言葉にならなかった。
 
 
 それはお互いをみつめ、にぃっと笑いあう二人を見て。
 私の心の中で。
 この二人が何故にこれほどまでに信頼しあっているのかが。
 感じ取れたような気がしたから。
 
 
 
 私がこいつらの間に入り込む余地なんて、無さげだねぇ。
 
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2003/03/19(Wed)22:54:47 公開 /  エラ
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■作者からのメッセージ
 こういう掲示板初めてなので、ドキドキしました!
 良かったら、駄目出ししてやって下さい☆
 楽しかったです!