- 『内に秘めた恐怖』作者:千夏 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
- 全角5257.5文字私の学校は特別。それは、『能力』を持った子どもだけが入ることができる学校。
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原稿用紙約13.14枚
みんな内にはその能力を秘めているもの。ただそれを、表に出すか出さないかってこと。
私の名前は如月さな、中学2年。能力は記憶を消すこと。
「さなー!」
手を振って廊下を走っているこの子は私の友達、小林翼。能力は、
「A組の近藤康季がどうかしたの?」
人の心を読むこと。読むわけであって、読めるのではないと言っていた。今読んだのは多分、
私が何か知りたそうな顔だったからだろう。
翼が言ったとおり、私はA組の近藤康季という人物について知りたいことがある。
彼の能力は特殊な能力らしい。無口な彼について知っている人は極少数なのだ。
人を殺した、という噂もいつだか広がっていた。
「うんー・・なんか気になるんだよね」
翼は意味が分からない、というような顔をしている。分かって欲しいわけでもないが。
(キーンコーンカーンコーン)
予鈴のベルが鳴った。
「ほら翼、もう教室戻らないとっ」
私は言った。この学校はけっこう色々と厳しいのだ。時間にも厳しい。
○
放課後になった。
「さな。今日、一緒帰っていい?」
「いいけど、図書館と塾の先生のトコ行くよ?それでも良ければ」
「ごめんバイバイ」
翼には可哀想だけど、私は嘘をついた。彼女は読んでない様子だったから良かった。
意外に気の短い彼女は、図書館に付き添うのでさえ我慢できない性格なのだ。
なぜ嘘をついたかというと、もう分かっていると思うが、近藤康季について調べる為だ。
ほとんど興味本意でやっているのであまり知られたくない気がしたのである。
これから彼を呼び出そうと思う。一歩一歩彼の教室に近づいて行く。
ここ一週間彼を見ていたのだ。彼は夜まで学校に残っていることが多いということが分かっている。
A組の教室に確実に近づいている。私の心臓もドキドキしている。
教室のドア前に立った。彼は居た。私は思いきってドアを開ける。
(ガラッ)
「近藤康季くん。ちょっといいかな」
彼は何も言わずにこちらを見ている。目が合った。心臓が、破裂するかと思った。
ドキドキはまだ続いている。
(人を殺したという噂も―)今、思い出さなくてもいいのに。
まだ目が合っている。と、彼は動いた。手を「こっちに来い」というふうにしている。
私は行ってもいいものか迷ったが、用心して行かなかった。
彼は私を見て、バッグから紙とペンを出して、何かを書いた。
その書いた紙を、私に見せた。紙に書いてある言葉は一言、
【なにか用? 如月さなさん】
名前を知られていた。今感じた。彼は、私の行動に気付いてたのだ。
「名前知って・・たのね」
彼は手に持っていたペンでまた紙に何か書き始めた。
【用事はなに?】
彼は、自分の用事が先だと言わんばかりに早々書いた。
「聞きたいことがあるの。あなたはなぜ、話さないの?」
彼は少し下を向いた。少しの間があり、そしてまた紙に書いた。
【オレの能力を知らないんだね 教えてあげるよ オレの能力は―】
こっちを見た瞬間、何か、とてつもなく悲しい気がした。
【声にしたことが現実になるんだ】
私は咄嗟に悟った。彼はこの能力のせいで悲しい過ちを犯したのだってことを。
彼は小さく息を吸って、言った。
「如月さなさん、かばん、重いだろう?置きなよ」
私は手を離した。いや、意思とは別に、離れたのだ。身震いした。
この能力は危ない。人を殺すことだって、ペンを握るのと同じくらい簡単にできてしまうのだ。
私はその場に立ち尽くした。彼は微笑して、帰りなよ、と言った。
私は帰った。恐怖でその場に立ち尽くしてるままか、すぐさま帰るかと言われたら、
絶対に帰るほうを優先するだろう。けれど、得たものは恐怖だけじゃない気がした。
でもやはり、この日から彼の話はしないようにした。いや、できるわけが無いだろう。
○○○○○○
私の名前は如月さな。中学2年生。私が通ってるこの学校は、他とは少し違って、
「特別な能力」を持った子どもだけが入れる学校。
私の能力は記憶を消すという事。隣りに居るこの女の子は私の友達、小林翼。能力は心を読むこと。
「さな〜、最近近藤くんのこと話さないね。なんかあったの?」
私は最近、興味のある人がいたのだ。A組の近藤康季。私が彼に抱いた興味は、
恋心とか憧れなんて素晴らしいものではなかった。
気になっていただけ、なのだ。
彼について知りたくて、私はこの前本人に問いかけに行った。
が、とてもじゃないが恐怖で問いかけるどころでは無かったのである。
彼の能力は、声にしたことが現実になってしまう能力。悲しい、能力。
「なんでもないよ。全然。ただ興味がなくなっただけだよ」
翼は手に持っていたシャーペンを筆箱に入れるところだった。もう、話題に飽きたらしい。
彼女のこういうところはけっこう好きだ。なにか、面白いと思う。
(キーンコーンカーンコーン)
予鈴が鳴った。なにかと厳しいこの学校では、本鈴の時には席についてないといけないのだ。
翼と私は、教室に向けて走った。私達は同じB組なので行く場所は決まっている。
教室に向けて全力で廊下を走った。(本当は廊下を走るのもいけないが)
その時、私は目を見開いた。ある人物から目が離せなくなった。途端に胸が高鳴り、
心臓はバクバクと音を立て、恐怖が沸いてきた。彼だった。近藤、康季だ。
○
私は今、彼の後を追っている。こんなに恐怖感を抱いているのに、興味には恐怖も負ける。
今ごろ言うのも変かもしれないが、はじめて授業を放棄してしまった。
彼はどこに行くのだろうか。あの時の恐怖は、どこに行ってしまったのだろうか。
今はけっこう冷静さを保っていられている。心臓は、相変らずだが。
人通りの少ない道に出た。光りが当たる面積が少ない。暗い。
「止まれ」
私の動きは止まった。体が、動かなくなった。
「いつまで追う気?如月さん」
彼はまた私に気付いていた。二度目の失敗。
「な・・なんで分かったの?」
声が震えている。恐怖という太い針が、体を突き抜けた気がした。
彼は前と同じように、こちらを見ている。いや、睨み、付けているのだ。
「目障りなんだけど。こういう時困るよね。能力を公にはできないのがさ」
彼は私を見ている。心の中では「ざまぁみろ」と笑っているように見える。
「なん・・」
言葉が途切れてしまった。彼から発せられているオーラの色が、手に取るように分かる。
真っ黒だ。私は追いかけて来てしまったことを、今更ながら後悔した。
彼からは、殺意さえも隠し持っている感じがした。
「今から行く場所は病院だよ。親が働いている病院。僕は君が嫌いじゃないからね。
生かせて、あげるさ―」
私は本当の恐怖を知った気がした。前のとは比べ物にならないものだった。
「もう付きまとわない方がいいよ」
彼は優しい笑みを浮かべた。
私は帰った。彼が怖いからじゃない。そういう雰囲気だったのだ。彼が最後に言った
「もう付きまとわない方がいいよ」は、どういう意味だったのだろう。
邪魔って意味なのか、それとも、気遣ってくれたのか。
私が彼に対する恐怖感は並じゃない。また、興味のほうも、並じゃない。
でも、絶大な恐怖の中に、なにかが埋もれているのではないかと、私は感じた。
彼は案外、恐怖の固まりというわけでは無いんじゃないか、というふうにも―
○○○○○○
私の名前は如月さな。中学2年。私の通ってる学校は少し風変わりな学校。
っていうのは、特別な能力を持った子どもだけが入れるっていうことである。
私の能力は記憶を消すこと。私自身はけっこう在り来たりだと思ってる。
私は今、近藤康季くんを意識し始めてる。はじめは怖いと思ってたけれど、
今は気さくに話したりしてるし、「会話」ができる。前は会話なんてできなかった。
私は気になっていることがある。ずっと前、彼が人を殺したという噂が流れたのだ。
私にはそれが納得できなくて、彼に聞こうと思ってる。
○
「近藤くん、放課後、暇?」
彼は小さな声で、うん、とうなずいた。
「良かった。ちょっと、聞きたいことがあるんだ」
彼は不思議そうな顔をして頭を斜めにかたむけた。
私は、放課後来るねと言ってA組の教室を離れていった。
○
放課後になった。私は授業が終わってから少し経ってから、A組に行った。
ドアの前。ガラス越しに彼が見えた。
(ガラッ)
ドアを開ける。
「こんにちは」
「こんにちは。如月さん、で、用はなに?聞きたいことって・・」
「あ、うん。聞きたいことがあるのよ」
彼はあまり気にしてないように外を見ていた。
「あのね、大分前にさ、噂・・あったの知ってる?」
私は恐る恐る聞いた。彼が知らなかったら、聞かないほうが良いと思ったからだ。
「噂・・?俺の噂なんて流れたの?」
彼は知らなかった。私は話をずらそうと思って言った。
「や・・やっぱいいよ!何でもない!!」
彼は目を大きく開いて、私の手を掴み取った。強引に腕を引っ張られて、腕がミシッと言った。
彼は人が変わったかのように私に問いだした。
「なに?噂の内容は、なに?」
冷静に彼は言った。手がどんどん締められていく。
「痛いよ!近藤くん!」
彼はハッとして、手を離した。さっきまで自分が何をしたかも分からない様子だ。
なぜあんなに動揺したのだろう。そんなに隠さなければいけなかったのだろうか。
彼は申しわけなさそうに、
「如月さん、ごめん。冷静さを保っていられなかっただけ・・だから。でさ、あのさ、
その噂の内容って・・教えてくれるかな?」
さっきとは全然違った感じだ。私は少しびっくりした。
「如月さん、噂の内容教えて」
口が勝手に動き出す。
「あ、近藤くんが小さい頃、友達と遊んでいたときに―」
彼は下を向いた。汗が一粒、落ちた。
「友達と普通にじゃれていたと思ったらいきなり、友達が、倒れて、その・・」
「僕がその友達を殺した―」
私は彼を見た。彼の目には涙が浮かんでいた。なぜだか、よく分からなかった。
「僕が殺してしまいそうになったんだ。命はなんとか取り留めたけど、その後一週間
その友達は入院したんだ。殺しかけ・・」
私は彼を強く抱きしめた。彼がこんなになりながら話してくれている。
私はそれだけで胸が痛くなった。ズキズキとしてくる。とても、痛い。だけど、
痛みは彼のほうが強いだろう。
「分かった。分かった。もういいよっ・・」
私は泣きそうになりながら言った。彼は手で涙をゴシゴシと拭いた。
そして、私に微笑みながら言った。
「ありがとう。如月さん、本当の事を言うから、ちゃんと、聞いててね」
言われなくてもちゃんと聞く気だった。彼はポツリポツリと喋り出した。
「僕はさっきも言った通り、人を殺しかけたんだ。噂みたいに殺したわけじゃないけどね」
彼は強いと思った。私にはこんな時に話なんてできないと思った。
「で、小さいときっていうのはまだ僕が園児のとき。友達3人くらいと遊んでたんだ。
僕はその頃にはもう能力のことは知っていたんだ。危ない能力だからって、
親がいろいろ教えておいてくれたんだよ。僕も小さいながら口数を少なくしてた」
私は悲しくなった。彼はそんなに小さな頃から能力のせいで苦しんできたなんて。
「遊んでたときに、3人の内の1番ヤンチャな奴に野球やろうぜって言われてたんだ。
僕は断ったよ。でも段々取っ組み合いになって、よく言うだろ?死ねとか消えろとかさ、
本当に思ってないのに。僕は意識してそんな言葉使わなかった。けど・・」
私は今すぐ耳を塞ぎたくなった。彼のこんな過去を聞くのは、正直つらかった。
でもがんばって話してくれてると思ったら、聞かざるを得ない気がした。
「言ってしまったんだ。いや、言いかけてしまったんだ。彼がくそって言ったから
僕は死ねって言いそうになったんだ。途中まで、「死っ・・」って」
私は怖かった。今すぐにでも人を殺せてしまう彼の隣りに私が居る。そう考えると
今居る教室を逃げ出したくなった。私は弱いのだ。
「もういいや。聞くの疲れちゃったよ。近藤くんも、疲れたでしょ?」
彼は私を見て微笑んだ。
最後に彼は一言、言ってくれた。
「ありがとう」と。
私はそのとき、とても嬉しかった。 end - 2004-03-19 19:30:56公開 / 作者:千夏
■この作品の著作権は千夏さんにあります。無断転載は禁止です。 - ■作者からのメッセージ
はじめまして!みなさん凄い小説ばっかりだったので
下手な私が投稿しても良いものか迷いましたけど
投稿しました!!(どうにでもなっちゃえ。
続きがありそうですが無いですよ。多分ね。
感想などぜひください!アドバイスも、きつくない程度に宜しくお願いします!(小心者
>続き書きました〜〜。。がんばって書きましたよ!
続きからでも読めるようにしたつもりです。
けど続きから読んだら前が気になるかも・・??(ぉ
前のときに続きが読みたいと言ってくれた人たちが
どう思うかは分かりませんが、多目に見てください。
思ったのですけど、正直、如月さなさん怖いです。(笑)では。
>またまた頑張ってみました!
出だしがいきなり仲良くなってますが、
気にしないでくださいねvv
これはこれで終わりですよ!「内に秘めた恐怖」
最後まで読んでくれた人達!有難うございます!!
次回もがんばりますvv宜しくですvv
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