『神になれたら』作者:九邪 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角9049文字
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原稿用紙約22.62枚
「もし神になったらあなたはまず何をします?」
「あ?」
会社へ向かう道の途中、路上の占い師のばあさんの方を振り返る。
「悪いなばあさん。俺今急いでるんだ。他の奴に聞いてくれ」
彼の名前はフビライ=ハン。……ウソだ。スマン、面白くなかった。
彼の名は桜栖柳(さくら せいりゅう)。木へんだらけの名前だ。そこらへんにいる極普通の一般市民だ。
ギャンブルが大好きで、競馬やパチンコはしょっちゅう行っている。そして、しょっちゅう負けている。
とりえと言えばカンのよさぐらい。いやな予感がする、と引越ししたら前いたアパートが火事になったり地震の被害にあったりと結構すごい。
今日は朝から変な感じがしたけどそれが悪い予感だとは少しも思わなかった。


「やっべー遅刻しちまうよ。また課長にどやされる。」
栖柳はパンを銜えながらひたすら走っていた。今日も朝寝坊して遅刻しそうだ。
「急げ急げ」
栖柳は赤信号はまだかまだかと待っていた。信号が青になり歩道を大急ぎで渡ろうとしたとき。横から、トラックが止まらずに突っ込んできた。
「ウワーーーーー!!!!」
栖柳は豪快に吹っ飛び、頭を激しく打つ。即死だ。栖柳は死んだ。





「――――――いてててて……」
栖柳は目を覚ましゆっくりと体を起こす。栖柳が目覚めた場所は周り一面真っ白い雲だった。まさに雲の上、と言う奴だ。
「ここはどこなんだ?」
栖柳は頭をかきながら、辺りを見回す。一面のくもが眼に入り、少々戸惑う。
「よぅ」
突然目の前に、白いひげを生やし、白い服を着た、白いじいさんが現れた。
「……よぅ」
栖柳はとりあえずあいさつし返す。
「いい天気じゃのう……」
「はぁ……太陽なんか見えないんですけど……」
「お茶はどうかな?」
「いや、苦いのは苦手なんで……」
二人はなぜか和んでいた。栖柳はハッと我に帰りじいさんに尋ねる。
「ここは、どこなんスか」
「ここは天界じゃ。んで、わしは神様ってやつじゃ」
「………」
二人の間に沈黙が流れた。栖柳はこのじいさんはおかしい、と思った。
確かに周り一面が雲だがきっとハリウッドレベルの特殊セットはこんな事も出来るのだろう。と納得する。
「じいさん。冗談はよしてくれ。何で俺が天界に来なきゃ何ねぇんだ?」
「お前は死んだんじゃよ。覚えてないのか?ほれ、お前の頭に天使の輪があるじゃろ?」
栖柳は恐る恐る頭に手を伸ばす。確かにそこには輪っかがあった。しかし、これくらいでそんな事は信じられない。
「ハハ〜ン。さてはビックリか?カメラはどこだ?俺TVに映ってるのか?」
栖柳はきょろきょろとカメラを探す。無論、無い
「まったく……頭の悪いやつじゃのう。どれ、わしが証拠を見せてやるわい」
そう言うと、じいさんは両手をくるくると回す。ぽんと剣が現れる。
じいさんはそれを口のところに持っていきどんどん飲み込み始めた。
「お〜スゲェスゲェ。手品ってやつか。生で見るのは初めてだぜ」
栖柳はからかう様にパチパチと拍手を送る。じいさんはムキになってこういってきた。
「では、どうすればわしが神だと信じれるんじゃい!?」
「そうだなぁ……じゃあ、俺を空に飛ばしてくれよ。子供の時からの夢だったんだ」
「よし判った。」
じいさんは手をこちらに向け、何かを念じ始めた。
はじめ栖柳は無理だろうとニタニタ笑っていたが、やがて自分の体が浮き始めていることに気付く。
「フゥ〜どうじゃい?」
「す、すげぇ…いまどきの手品師はこんな事も出来るのか……」
栖流がまだ信じてないようなので、じいさんはさらに栖柳を上にあげ、空中で自由自在に操って見せた。
これにはさすがの栖流も怖くなった。空中で宙返りをさせられたり、地面すれすれまで落としてまた浮かべたりといろんなことをされたのだ。
「わ〜判った、判った!信じるよ、あんたが神様だって」
「判ればいいんじゃい」
じいさんは栖柳をゆっくりと地面に降ろす。栖柳は両足で地面を踏みしめ、やっと一息つく。
「んで、その神様が俺に何の用だい?」
「う〜む、簡単に言うとじゃな。わしと神を代わってくれ。」
「………ハ?」
「じゃから、お前が神になれ、という事じゃ」
じいさんは軽く言う。栖柳はいきなり神様から神になれと言われ口を大きく開け驚く
「それには深い理由があっての……」
「………なんだよ?」
「飽きたんじゃ神に。だって、1年中ここにいるだけじゃもん」
駄々っ子のような口調でじじい……もとい神サマは言う
「むちゃくちゃ浅いじゃねぇか!!その理由っての!!」
「神だってたまには遊びたいんじゃ。最近はぴちぴちのお姉ちゃんにも会っとらんしのう…それに一生をとは言わん。1週間だけでよい」
栖柳は断ろうとしたが考えた。神なればさっきのような神の力が使えるんじゃないか?と。
「フフフ、つまりだ。この俺の隠れた才能に目をつけて俺に神になってくれと?」
「いや、違う。単に目の前で死んだから魂を拾ってきただけじゃ。別に誰でもよかったんじゃよ。あんまちょーしに乗るんじゃない」
「あ…そう…」
栖柳は顔を赤らめる。コホンと咳払いをしてじいさんに話す。
「じいさん。その…なんだ…神になってやってもいいぜ。」
「本当か?」
じいさんは顔を輝かす。
「神になったら、さっきみたいな力も使えんだろ?」
「あぁ、もちろんじゃ。」
「よし。じゃあ、なってやるよ。神様に」
「では、今からお前が神じゃ。神の入れ替えをする。目を閉じよ」
栖柳は言われるままに目を閉じる。じいさんは手を伸ばし、栖柳の額に当てる。
栖流が何か言おうとしたが、じいさんはそれより先になにか“力”を手から送り込んだ。
栖柳の頭の中にはさまざまな知識が入ってきた。この世が出来てから今まで、恐竜が生まれてから絶滅するまで、そして、自分が生まれてから今までなどが。
栖柳は意識が遠くなり倒れそうになる。必死にこらえていたがやがて意識はなくなる―――



「ファ〜、もう朝か…」
栖流が寝ぼけた声を出す。
いつもどおりの朝、いつもどおりの自分の部屋、いつもどおりの自分。
全てがいつもどおりだが何か違和感が栖柳を包んだ
「なんか、変な夢見たな。いきなり神になれ、とか何とか。ちょっと出来すぎだよな……」
栖柳はそういいながら、会社用の服に着替え、朝ごはんを食べる。
「もし、神になれたら俺何をしたかな……」
ふとそんな事を考える。やはり、ギャンブル。それしか思いつかなかった。
栖柳は自分が大勝ちしているところを想像して思わずにやける。
「おっと、時間だ。そろそろ行くかな……やっぱもっかい寝よ。」
栖柳はいそいそと布団にもぐりこむ。めざましを遅刻5分前にセットして。


「ウワ〜遅刻だ!!」
当然だ。
栖柳は猛烈なスピードで走っている。
目覚ましを無視して寝続けていたのだ。そんな自分に腹が立つ。
「もう二度と二度寝しねぇぞ。もう誓った。何に誓おう……今度二度寝したらギャンブルやめよう。……やっぱりやめた。リスクが高すぎる……」
「さぁお水を上げましょうね」
ちょうどその時、アパートの2階の人がベランダの植木鉢に水をかけようとしていた。
しかし、誤って手がぶつかり植木鉢は落ちていく。下には走ってくる栖柳がいた。
「危ない!!」
「え?」
上から声がしたので、栖柳は上を向く。なんと上からは植木鉢が降ってくるではないか!
栖柳は手で頭を覆い、身を縮める。
――砕けろ。植木鉢よ直前で砕けろ!――
栖柳は必死に考えていた。すると、植木鉢は栖柳の頭に当たりそうになった瞬間、バラバラに砕けた。
栖柳は気付かず、まだ身をちぢめている。栖柳はいくら立っても衝撃と痛みが襲ってこないので恐る恐る顔を上げる。
そこには、粉々になった植木鉢があった。
「あれ?なんで?」
栖柳は不思議に思い首を傾げつつ再び会社に向かう。
「さっきのあれは一体?」
栖柳の脳裏には昨日の夢のことが思い出された。――今からお前が神じゃ――
(まさか。あれは夢だ。何かの偶然に違いない……)
考えていると、前の前に野球ボールが転がってきた。
「スイマセ〜ン。ボールとって下さ〜い」
どうやら反対側の走路のフェンスの向こうにあるグランドから飛んできたのだ。
栖柳はボールを拾い、軽く投げた……つもりだった
「ウワワッ!!」
投げたボールはものすごい勢いで飛んでいき、フェンスを貫いて向こうに落ちる。バリー・ボンズでも打てないであろう速度だ。180/mくらい?
投げた栖柳も取ってもらった子供も驚く一方である。栖柳は子供に何か言われぬうちに足早に去っていった。


栖柳は会社に付いて、机に座り書類を書いているときもあのことを考えていた。
「ウ〜〜〜ン、やっぱり今朝の夢は本当だったのかな」
ふと、机の上の書類と鉛筆が眼に入った。
「そうだ!今朝の夢が本当なら、自動的に鉛筆を動かして書類を書かすことが出来るはずだ」
栖柳は書類の上の鉛筆に念じ始めた。
――鉛筆よ。その書類を全て書いてくれ――
何も起こらなかった。栖柳は恥ずかしくなった。
「……当たり前だよな…」
しかし、諦めていたその時、鉛筆がひとりでに起き上がり、自動にかき始めた。
「やった!やっぱり俺は神になったんだ!」
書類はすぐに出来上がった。その書類を課長のところに持っていく。
「課長。できましたよ」
「なに!?お前がこんなに早くできるはずないだろう。どれ見せてみろ……バ、バカな」
課長は驚いている。いつも寝てばっかりで殆んど仕事をしないこいつが……?課長はもう一度じっくりと書類を見て間違いがないかチェックしている。やがて、課長が言う。
「……よろしい」
「では、お先に!」
栖柳はいそいそと帰り支度をしてあるところに向かった。


「ウワ!すげぇ!こんなに出たの初めてだぜ!」
栖柳はパチンコに来ていた。いつもは負ける一方だったのに今日は神の力を使って大もうけしている。
どこの世界にパチンコをする神がいるだろうか。
「神の力を使って、ろくでもねー事をしているのう……」
「うわ、じいさん。何してんだよ?」
ここにいた。“元”とはいえパチンコする神が
気が付かなかったが、横の台ではあのじいさんがパチンコをしていた。箱の中は殆んど玉が入ってなかった。
どうやらこのじいさんも賭け事は弱いらしい。
「神の力を使って何をするかと思えば、まさかパチンコとはの……」
「うるせぃやい。あんただってしているじゃねぇか」
「わしだって一度はやってみたかったんじゃ!……それはそうとなかなか難しいもんじゃのう」
「あ〜それね。台が悪いよ。こうこうこういう台のがいいんだよ」
栖柳は身振り手振りでじいさんに教える。
「ふむ、ではこれ何かどうかのう?」
「あ〜それなかなか良さそうじゃねぇか。あ、ホラ当たった」
「本当じゃ!……大当たりじゃ!!いや、楽しいもんじゃなぁ」
二人はしばらくパチンコにいた。神と元神がいるパチンコ……いいのか?
2時間ほどパチンコをし続け、箱が幾つも一杯になったころ栖柳は引き上げた。
じいさんはいつの間にかいなくなっていた。恐らく別の台に移動したのだろう。
「ヒヒヒヒ大もうけだぜ。さて帰るとしますか。ん?なんだ?」
前の方の銀行になにやら大勢の人が集まっている。
近くによって聞いてみたところ銀行強盗らしい。親子を人質にとって中に立てこもっているらしい。
「フ〜ン、物騒だな……まぁ俺には関係ないか」
「バカモ〜ン!それでも神か!」
「ウワじいさん!また突然現れやがって」
「まったく。神ならば人助けくらいせんか!」
「なんでだよ!俺は自分が可愛いの!自分以外のやつなんか知らねぇよ」
じいさんに怒鳴りつけて栖柳は去ろうとする。しかし、体が言うことを聞かない。
しかも、銀行の方に体が向かっている。
「ほれ、今から強盗を捕まえて来い」
「あ、じいさんが俺を操ってんのか。やめろよ。第一何でもう神じゃねぇのにこんなことできるんだよ!?」
「元神だから!一度でも人を助ければその気持ちは忘れられんわい」
「なんだよそれ!俺には判んねぇよ」
「問答無用じゃ!!」
じいさんは栖柳をどんどん銀行の方に連れて行く。
入り口で警備員が、危ない、と叫んでいるがじいさんはお構い無しだ。
とうとう栖柳は銀行に入る
「何だお前は!!?」
中では銃などで武装して3人の男が、5歳ぐらいの女の子と母親を人質にとっていた。
中は銃撃戦でもあったのかひどく荒れている。
「えぇと……神サマ?」
「ふざけんじゃねぇ!!」
男は銃をぶっ放してきた。弾は栖柳の眉間にヒットする。栖柳は豪快に吹っ飛ぶ。人質の親子は悲鳴を上げる。
「ハハハハハ」
銃を撃った男は声を上げて笑っている。
「イテテテテ……」
「ハァァァ!!!!!!???」
栖柳は普通に起き上がる。男たちは目が飛び出んばかりに驚いている。
「な、なんで!!?」
「神だから」
栖柳はくいっと手を揚げる。男たちの手から銃がふわりと浮き、栖流の元へ行く。
奪った銃を構えながら男たちに近づく。
「待て、待ってくれ。自首するから撃たないでくれ!!」
「いやだね」
栖柳は尚も近づき、男たちの額に銃を当てる。
「バン!!」
男たちはへなへなとその場に座り込んだ。気絶したのだ。
栖柳はもちろん銃など撃っていない。
「本当に撃つわけないじゃん。意外に気が小さいのな」
栖柳はポイッと銃を捨て、入り口から大声で叫ぶ。
「オ〜イ、犯人を捕まえたよ〜」
外の人たちはいぶかしげな顔をした。
そんな簡単に犯人が捕まるはずがない、こいつも仲間なんでは?
しかし、栖流が気絶した犯人を引っ張ってくると、外の人たちはワァッと歓声を上げた。


「いや〜ありがとう御座います。本当に助かりました。」
「いやいやそんな」
栖柳は警察から感謝状をもらっている。その時犯人が連行されていった。
「本当だってお巡りさん!!あいつは、銃が当たっても死ななかったんだぜ!どうかしているよ。俺らよりあいつを捕まえるべきだ!!」
「いいから来い!!」
犯人が中でのことを警察に言うが警察の人はまるっきり無視していた。
警察の人が栖流がこっちを向いているのを気付くと、どうもスイマセン、と一礼した。
帰り際、人質になっていた親子がこっちに来た。
「本当にありがとう御座います!!あなたは私たちの命の恩人です!!」
「ありがとうね。お兄ちゃん」
「いや、その……」
栖柳は生まれて始めてここまでお礼を言われたものだから、どういう顔をして、どんなことを言えば良いのかわからなかった。
「お兄ちゃんは神サマなの?」
女のこが尋ねてきた。栖柳が答える前に母親が言う
「こら!何言ってるの!では、私たちはこれで」
母親は栖柳が撃たれた時怖くて目をつぶっていたため銀行内のことは何も知らない。二人は帰っていく。
「お兄ちゃんバイバ〜〜イ」
栖柳も手を振り別れを告げた。
「どうじゃ?人助けというものは?」
じいさんが横に立っていた。
「…………別に」
栖柳は帰っていった。しかし、その日一日中、あの親子の言ったお礼の言葉が忘れられなかった。


その日、栖柳は空港に向かっていた。
世界一のギャンブルの都、『ラスベガス』に向かうためだ。
自分の神の力があれば、『ラスベガス』で大当たりして大金持ちになれる、と信じて。
「ふぅ、やっと着いた。空港なんて来たの初めてだぜ」
栖柳が来た空港は『ハニダ空港』東京湾の近くにある日本一大きな空港だ
「えぇとラスベガス行きは、と。お、まだ時間あるじゃねぇか、遊んでこようっと」
栖流が空港ではしゃいでいる頃、管理室では大変なことが起こっていた。


プルルルル…プルルルル…
管理室に電話がかかってきた。管理人は急いで電話を取る。
「はいもしもしハニダ空こ…」
「やぁ、素敵なお知らせだ。俺の名前は“ボマー”だ」
管理人は驚いた。“ボマー”というのは今世間を騒がしている爆弾魔だ。
爆弾魔からの電話。管理人はいやな予感がした。
「この空港に爆弾を仕掛けた。爆発すりゃここは木端微塵だ。ハハハハハ」
そういって電話は切れた。
「た、大変だ!!」


「ん、何だ?何か騒がしいな」
空港の中なぜかさっきより警備員が増えているような気がした。
しかも、何かを探しているようだ。皆緊張した顔だ。
「あった!」
一人の警備員が爆弾を見つけた。
待合席の椅子の下に隠してあった爆弾は60?四方の大型のプラスチック爆弾だ。確かに空港を粉々にするぐらいの破壊力はある。
「爆発まで後15分だ……おい、爆弾処理班はまだか!?」
「大変です!!今警察に電話したんですが、爆弾処理班が渋滞に巻きこまれて後30分はかかるそうです」
「な、何てことだ。……しかたない客を全員非難させよう」
その警備員は港内アナウンスをかけた。
《お客様にお知らせです。この空港内に何者かによって爆弾を仕掛けられました。速やかに非難して下さい。繰り返します……》
空港内はパニックになった。
客は我先にと押し合いながら出口へ行く。栖柳も非難しようとした。
しかし、その時頭の中にはあの時強盗から助けた親子が浮かんだ。
――本当にありがとう御座います。――
――ありがとうね、お兄ちゃん――
栖柳は振り返り管理室に向かう。
「クソッ俺もお人よしになったもんだぜ」


「よし次は我々が逃げる番だ。」
警備員が逃げようとしたその時、ドアが開き一人の男が入ってきた。
「爆弾はどれだ?」
警備員たちは驚き、声が出なかった。
栖柳は奥にある物が爆弾だとすぐにわかった。
あと、8分しかない。栖柳はその爆弾を取り走っていった。
「あ、オイ君待ちなさい。どこへ行く気だ?」
「この爆弾を東京湾に捨ててくる!!」
栖柳は警備員が止めるのも聞かず、外にある小型飛行機に乗り込んだ。
そして、神後からで発進させた。
「チィやばい。時間がない」
栖柳はあせった。東京湾はまだ見えない。だが、爆弾はどんどん爆発に近いづいている。
市街地で爆発したら飛行機が下に墜落して大変なことになる。
やっとのことで東京湾が見えてきた。だが、時間がない。
5…
「見えてきた。」
4…
3…
「間に合ってくれ!!」
2…
「よし、東京湾だ」
しかし、爆弾を投げ捨てる時間はない。栖柳は一瞬迷ったがすぐに覚悟を決め、飛行機から飛び降りた。
1…
0 ドカーーン!!!!!!!!
爆弾は大きな音を立てて、爆発した。
飛行機は燃えながら東京湾に落ちていく。
(やった成功だ!!)
しかし、栖柳もまた落ちていっている。もう地面は目の前だ、このままでは地面にぶつかってしまう。
「神なら空くらい飛べるだろうが!!」
栖柳は力を振り絞って、飛べ!と念じた。
しかし、飛べる様子はいっこうもなく地面はもう目と鼻の先……
だが、地面に激突する瞬間、一瞬だがふわっと体が浮き、衝撃がやわらげられた。
「生きて…いるのか?」
栖柳はほっとした拍子に意識が遠くなりその場に倒れる。


「―――またここか……」
見わたす限り雲しかない空間。また栖柳は天界にきた。
「時間じゃ。1週間たった……」
「じいさん……」
目の前には前と同じくじいさんが立っていた。
「どうじゃった?神になった感想は?」
「楽しかったよ。それに新しいことにも気付けたしな」
「ほぅ…してそれは?」
「人助けはギャンブルで大当たりするより気持ちいってことさ」
じいさんは小さくうなずきにっこりと笑う。
「では、神の交替を始めるか……」
じいさんは栖柳の額に手を当てる。
「なぁ、じいさんアンタの名前なんて言うんだ?」
「わしか?わしの名前は神田静流(かんだ しずる)おぬしと同じくはるか昔に神にスカウトされたんじゃ」
「へぇ静流って女みたいな名前だな」
栖柳は笑いながら言う。
「ふん、よく言われたよ」
「なぁ、じいさん。…俺やっぱ死ぬんだろ?本当は死んでんだしさ。神になったから生きていられたんだろ?」
栖柳は悲しそうな顔をして言う。じいさんはニコッと笑って言う。
「そんな事はせんわい」
「え?」
じいさんは今度は反対に栖柳から神の力を吸い取る。
栖柳の意識は遠くなっていく―――……


「ファ〜もう朝か……」
栖柳が寝ぼけた声を出す。
いつもどおりの朝、いつもどおりの自分の部屋、いつもどおりの自分。
全てがいつもどおりだ。
「……なんか長い夢を見ていた気がする…」
だが、栖柳はその夢の内容などは一切思い出せなかった。
栖柳はスーツに着替え会社に向かう。


いく途中、風船が木に引っかかった子供がいた。
栖柳は木に登りその風船を取ってやった
「ほらよ坊主」
「ありがとうお兄ちゃん」
男の子は嬉しそうに走っていった。
「やっぱりいいことすると気持ちがいいなぁ……」
栖柳はふと自分の言った言葉に違和感を覚える。
「やっぱり、って、俺って今までそんなに良いことしてたっけ……?」
栖柳はしばし考える。
「ま、いいか」
栖柳は会社へと向かっていった。
その日は快晴だった。空に浮かぶ雲はまるで神のようで――




                ―――もし神になったらあなたはまず何をします?―――



-完-
2004-04-14 16:38:10公開 / 作者:九邪
■この作品の著作権は九邪さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんにちは。
1話完結の小説を書いてみました。
読んでくれた方はなにかお願します。
最後の問いの答えなんかでも結構です。
この作品に対する感想 - 昇順
なかなか発想の面白い作品だと思いました。途中、元神様の「覚えてねぇんかい?」はちょっと今までの口調とあってないような気がしました。中々面白かったのですが、山場があっさりとし過ぎていてすこし淡々としていたように感じました。もう少し盛り上げてみてはいかがでしょうか?でも、とても面白かったと思います!もし、私が神様になったら…とりあえず、空飛んでみたいですねぇ。笑 もしくは、世界の様々な裏を見に行きたいです。大昔の事とかそういった過去のことを見てみたいです。それでは、次回作、期待しています
2004-03-14 15:15:43【☆☆☆☆☆】冴渡
すいません、最後の最後で失敗しちゃいました。点数
2004-03-14 15:16:07【☆☆☆☆☆】冴渡
すいません、最後の最後で失敗しちゃいました。点数入れときます。
2004-03-14 15:16:20【★★★★☆】冴渡
シンプルで且つ起承転結もしっかりしていて面白かったです。ただ、留意すべきは視点の統一、あるいは簡潔化。人称に注意を払われればさらに読みやすく、面白くなると思われます。生憎、評点はつけられませんがご容赦ください。失礼致しました。
2004-03-14 15:22:49【☆☆☆☆☆】南極三号
冴渡さん、南極三号さ、、ありがとうございます。レス来るとは思わなかったんでかなり嬉しいです。二人のご指摘は参考にします(^^)
2004-03-14 16:47:57【☆☆☆☆☆】九邪
すらすら読めて面白かったです!!俺はこういうテンポのある小説が好きなので、これからも頑張ってください!!
2004-03-14 18:29:06【★★★★☆】流浪人
おもしろいですね。主人公の成長がなかなかほほえましいものだと思いました。読みやすいし、話がしっかりとまとまっていると思います。これからもがんばってください!
2004-03-17 18:13:11【★★★★☆】トミィ
雑談掲示板で「神になれたら」の宣伝を見た時から気になってました。そして掲載されているのを見て、すぐ読みましたよー。僕は映画の「
2004-04-14 17:44:38【☆☆☆☆☆】風
↓ミスです。映画の「ブルース・オールマイティ」という神になった男の物語よりもこっちの物語の方が面白いと感じました。連載でやってほしいぐらいです^^ただ爆弾を神様なら止めることできなかったのかな?と思いました。空も自由に飛ぶことできなくなっていたし、力が弱まっていた? あと植木鉢が頭に落ちてくるときに普通は砕けろと思うよりも当たらないでくれって思うと思います。自分が同じ状況になったらどう思うかを考えながら書き込むとリアリティーが出てグッドです。僕が神になったら、人間に戻りたいと願うでしょうね
2004-04-14 17:50:10【☆☆☆☆☆】風
何度もすいません。点忘れです。おっちょこちょいなとこ治さないと・・・汗
2004-04-14 17:51:40【★★★★☆】風
なるほど。参考になります。プロの監督の映画より面白いと言われ大変感激です。今連載中の「猫と.」が終わり次第連載版にするつもりです。その時は風さんの意見を参考にさせてもらいます。
2004-04-14 19:50:09【☆☆☆☆☆】九邪
風さんと同じく、『ブルース・オールマイティ』を連想せずにはいられせんでした。映画の方は見てませんけどね。もう少し描写を複雑というか、こんな感じっていうのが欲しかったです。ではでは
2004-04-15 00:42:51【★★★★☆】rathi
えーと神様というか、神の概念って難しいですよね。宗教上の神やら哲学上の神やら。話事態はまとまってよかったです。あとは工夫して一つ一つ丁寧なところも織り交ぜていくとかでしょうか。
2004-04-15 23:56:33【☆☆☆☆☆】晶
ごめんなさい。点数付け忘れました。
2004-04-15 23:57:14【★★★★☆】晶
計:24点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。