『夢と夢の挟間の場所で』作者:冬椿 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約13.24枚
1、追う者、追われる者

「待ちやがれ!」
男の声が町中に響き渡った。
「この盗人!捕まえたらただじゃおかねえ!!」
どうやら彼は二人の少年ーー彼等が『盗人』なのだがーーを追いかけているようだ。
「ったく。リンゴの1つや2つ、盗ったからってあんなに怒らなくてもいいじゃないか。なあ、フロート。」
片方が黒、もう片方が薄い緑という不思議な色の目を持つ少年が話しかける。
「過小表現をするな。10個以上も盗られれば怒るのは当たり前だ、リンクス」
フロートと呼ばれた少年は答えた。
文章では分からないが、彼は黒い服、黒い靴・・と、黒で統一している。
「細かいことを気にするな!」
器用にも彼等は会話をしながら走っているようだ。
少したつと二人はT字路に差し掛かった。
「とりあえず二手に別れる!!お前は右の道に逃げろ!!!」
「了解!」
二人は別れて再び逃げはじめた。
店の主人は『小さいほうが捕まえやすい』と思ったらしくリンクスのほうを追いかけはじめる。
「このリンクス様を捕まえようなんて100万光年早い!!」
・・『光年』は時間ではなく距離の単位である。
よほど自分の足に自信があるのだろう。わざわざ後ろを見て挑発までしている。
・・・油断大敵なんとやら。
彼が自分の前を流れている川および危機に近付いているのに気が様子はない。
「み、水!?やば・・」
最後の『い』を言う間もなくそのまま川へと落ちていく。
1分後、川のほとりの道に人を探しているらしい男の姿があった。
彼はリンクスを見失ったらしく他の道へと探しにいってしまう。
無理もない。
『人の』リンクスはそこにはいなかったのだから・・・・

数分後、川の下流には1匹の黒猫の姿いた。
ひょい、と川からあがり、水気を払う。不意に、
「君、迷子?」という声が聞こえた。
声の主はリンクスと同じくらいの年の子供だ。
青い神官服を着ている所を見るとクレリックだろうか。
「一緒に御主人様を探そう?」
その声は不思議と心安らぐ声だった。
子供は猫を抱くと繁華街へと歩きはじめた。


2、不思議な黒猫

丁度リンクスが店の主人と追いかけっこをしている時、フロートは立ち止まった。
(どうやらうまくまけたようだな…)
その足で、今度は相棒を探すべく繁華街へと向かった。
(こんなことなら集合場所を決めておくべきだった……)
数分後、フロートは後悔していた。リンクスを探し始めて早30分。
未だ落ち合うことができない。
(あいつが『あの』姿なら見つかるはずもないしな…)
丁度その時。彼の目に黒猫を抱いた子供の姿が映った。
「そこの君っ!その猫、俺の猫なんだけど…」
「あ、よかった!探してたんですよ、飼い主。ね?」
子供は黒猫に話しかける。黒猫はにゃーと鳴いて答えた。
「『にゃー』じゃない!この馬鹿猫!!」
フロートは黒猫の頭に1発お見舞いした。
「いきなり殴るなよ!フロート!!」
・・・・・ここで考えていただこう。
この場にはフロート、神官服を来た子供、黒猫の三人(正確には二人と一匹しかいない。
フロートが自身を『フロート』と言うわけがない。
子供はフロートの名すら知らない。
すると・・・・今の声の主は黒猫しかいないのである!!
「猫が・・喋った!?」子供も驚いている。
「と、とにかく人気のない所へ!」
フロートは子供の手を引いて裏路地へと急いだ。


3、旅の目的

「あの、もしかしてスズ族の方ですか? 」
「あはは…ばれちった」と黒猫。
「『ばれちった』じゃない! ともかくもとの姿に戻れ!! 」
「はいはい」
ぽん!という音とともに黒猫の姿は消え、リンクスの姿が現れた。
「お察しの通り、俺はスズ族だ。ハーフだけどな。
 普通なら猫になったり人になったりは自由自在なはずなんだけど…
 ハーフのせいか水かぶったり、疲れたりすると強制的に猫になってしまう
 んだよ。」
「に、しても。どこで知ったんだ? スズ族のことなんて。
 存在すら幻と言われているのに…」
と、フロートが子供に問う。
「それが…分からないんです。」
「「分からない? 」」
リンクスとフロートが同時に言った。
「私、フェアリアというんですけど…昔の記憶がないんです。
 それで、思い出すために旅をしているんですよ。貴方たちは、なぜ? 」
「俺たちは『時の挟間の魔術師』を倒すためだ。」
「『時の挟間の魔術師』って…この世に魔物を解き放ち、混沌へ陥れたという、あの!? 」
フェアリアが驚いて二人に問いただす。
「ある人から依頼を受けてね。」
苦笑ぎみにリンクスが答える。
不意に。
表通りから人々の悲鳴が届いた。


4、戦闘<バトル>
「きゃあああ!!! 」
「魔物が…魔物が街に!!! 」
「早く逃げろ!食い殺されるぞ!!!! 」
悲鳴を上げつつ、逃げまとう人々。
それを嘲笑うかのようにゆっくりと、魔物(一応ストーアウォーム(※1)という総称はあるのだが)は人々に近付いてゆく。
「くそっ。この街にまで来やがったか…いくぞ、リンクス! 」
「ラジャー!!! フェアリアも早く逃げて!! 」
フェアリアからの返答を待たず、二人は広場へと急ぐ。
「うわああああ!!! 」
広場は地獄と化していた。
「ここは俺が食い止める! リンクスは街の人を避難させろ! 」
「分かった!! 」
リンクスが街の人を避難させている間、フロートは”一時停止<ストップ>”の呪文を魔物にかけ、足留めさせていた。
(「く…こいつ……予想以上に強い………」)
「全員避難させた!!」リンクスの声が聞こえた。
その声に安心してか、一瞬…一秒の1/100ほどの時間、魔物にかかっていた”一時停止<ストップ>”が解けた。
「フロート、危ない!!! 」
リンクスが叫んだ次の瞬間、魔物の鋭い爪がフロートに突き刺さった。
「ぐ……っ」
「大丈夫か!? 」
リンクスは慌てて駆け寄り、魔物からフロートを離した。
「大、丈夫…だ……。どうってことは…な、い。」
間一髪で急所は避けたものの、そうとうの深手を負っているようだった。
急に、リンクスがフロートを背負ってその場からは慣れた。
離れた次のとき、再び魔物の爪が、ほんの数秒前までリンクスたちがいた場所へとおりて来た。
「う……」
リンクスが着地し多彩の振動が傷に響いたらしく、フロートはうめき声を上げる。
フロートを背負い、本気が出せないリンクスV.S.血に酔っている魔物。
勝負は目に見えていた。
(「くそ…ここまで、か……」)
リンクスが死を覚悟したその時、見覚えのある青い服…空の色のようにすんだ青い色が見えた。
「フェアリア!?どうしてここに!!逃げろって言っただろう!!!!! 」
「……これは、貸しだからね」
笑いかけながらフェアリアは言った。
「何言って…」
リンクスの言葉は呪文で遮られた。
「天地創造を行った万能の神よ。
  今、その大地を血でけがすべく邪悪なるものに炎の鉄槌を下せ……
 ”大地の炎<グランド・ファイヤ>”」
呪文の詠唱完了とともに、この世のものとは思えない深紅の炎がフェアリアの杖からほとばしり、魔物を包んだ。
魔物はすさまじい断末魔をあげ……消えた。
※1 ストーアウォーム
   →大蛇の体に竜の頭を持つ幻獣。知能が低く、魔法も使えない。
    また、空を飛ぶこともない。牙と尾の直接攻撃は驚異的。
    また、怪我の治癒速度が非常に高い。

5、終幕<フィナーレ>

「フェアリア…お前は、一体……? 」
「説明は後です。フロートの治癒を先に。」
「あ、ああ…」
リンクスは我に返ったように道具袋の中を探す。
「あ、道具は要りませんよ。私が治しますから。
 …”完全治療<パーフェクト・ヒール>”…これで傷は塞がったはずです。」
数秒後、フロートは重いまぶたを開けた。
「ん…魔物は…? 」
意識が完全にもどったらしく、体を起こす。
「大丈夫か?」
「ああ。血が足りなくてクラクラするがな。」
「ごめんなさい…さすがに血の量までは戻せなかったんです。
 魔物なら私が倒しましたよ」
相変わらずの笑みでフェアリアが答える。
「で…、フェアリア。一体何者なんだ?
 上級魔法をいとも容易くぽんぽんと……」
当然の疑問をリンクスが投げかける。
「記憶がないのでどうしてかは分かりませんが…。
 基本上級魔法はほぼ全部使えます。」
「な…全部だと!? 」
フロートは驚きの声を上げる。
「一般的に女のほうが魔力は高いが…大抵は上級魔法は1、2個が限界なはず…。
 記録に残る魔術師でさえ、全58個のうち15がやっとだというのに…。」
「………あの。もしかしてお二人とも私のこと女だと思っているんですか? 」
「「え。そうだろ。声は高いし、一人称は私。顔立ちも女らしいしな。」」
2人同時に答えた。
「……………私は男です!! 間違えないで下さい!!!!! 」
フェアリアの声がモンスターが居なくなった街に響いた。

6、旅の途中に

「で、結局黙って街を出て来たけど…どーしてだよフロート!
 ゴチソウが食べれただろうに!!」
「馬鹿。最初にリンゴ盗って追いかけられたのを忘れたのか? 」
「あ゛………」
「自業自得ですね、まさに。」
くすくす、と笑いながらフェアリアがいった。
彼女…いや、彼は『借りを返してもらっていない』という理由でパーティーに加わったのだ。
「腹減ったぁ…。」
リンクスが力なく言う。
「元気出して下さい。次の街には美味しい肉まんがあるらしいですよ。」
「本当か!?じゃ、走るぞ!!肉まんが俺を呼んでいる!!!! 」
「着いて早々食い逃げするなよ!? 」
「わーってるって!!! 」
3人の旅はまだまだ続く…………………

                     <END>


あとがき(?)
『夢と夢の挟間の場所で』やっと書き終わりました……
作者、SSS(ショートショートストーリー=すごく短い話)が中心だったので。
これでも最長です。オリジナルキャラクター作品も初めて。
某テニスマンガのパロディーが中心ですから(苦笑)
〜製作秘話?〜
フェアリア(以下フェア)が最初はいなかった、って事ですかね。
魔法を使える奴が居ない(すこしならフロートも使えますが)という問題が浮上するので
急遽出しました。本当は女の子だったのに作者が女のくせして女言葉がつかえない(書けない)ので男の子になりましたし^^;
〜名前の由来〜
リンクス=山猫座(星座)の学術名、『Lynx(リンクス)』からとりました。
     猫になりますからね♪
フェア=妖精、という意味。何語かは分かりませんが……
    可愛い男の子(というとフェアに笑顔で魔法ぶつけられそうです
     が)という設定だったので。
フロート=ごめんなさい……由来ありません。
     なんとなく頭に浮かんだのを使いました。
     危うく死にかけちゃったために、(4章参考)イラスト書いてく
     れているフロート好きの子に叩かれました;
スズ族=スズは、そのものズバリで鈴のことです。
    猫になる、という特性があるので、首輪なんかについてる鈴をその
    まま名前に使いました。
    説明が本編で書けなかった&リクエストがあったので少しだけ設定
    を……
    リンクスは、人間の父親とスズ族の母親との間に産まれたハーフで
    す。
    スズ族は、いつでもどこでも猫になれる、という特殊体質の一族。
    ただ、リンクスはハーフなので、それがコントロールできないわけ
    ですね。
    いまでは幻の一族とまで激減している理由は……続きを書くときの
    ネタがなくなるので伏せます(ぇ
    書くかどうかは分かりませんが。
〜次回予告?〜
続編は……書くかどうか分かりません。
ネタがないからです(泣
そういう訳でネタ提供お願いします。
ネタが出てこれば書きます……多分。
どっちにしても、ひとまずは期末が終わってから……ですね。
正直に言うと、先に最終話が出来ちゃってるんですけどね。(V.S.時の挟間の魔術師)
ではでは。
この話を最後まで読んで下さった方&誤字、脱字の指摘をして下さった方、どうもありがとうございました!
2004-02-24 20:35:19公開 / 作者:冬椿
■この作品の著作権は冬椿さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ご愛読(?)ありがとうございました!!
この作品に対する感想 - 昇順
会話文の後は改行した方がいいと思います。!や?の後は1マスあかします。…はまとめたほうがいいです。計六個使うと良いらしいです。これは基本的なことなので直した方が良いかと。内容は、まだ初めの部分ですが楽しめました。続き頑張って書いてください。
2004-02-11 21:00:53【★★★★☆】霜
霜さんとほぼ同意見です。内容的には良いと思います。あとは、意外な展開が欲しいですね。期待してます。
2004-02-14 00:27:47【★★★★☆】流浪人
拝読させていただきました。「ーーー彼等が『盗人』なのだがーーー」の部分に見られる「ーーー」は「――」に直すべきでしょう。「ー」は音を伸ばす記号であり、「―(ダッシュ)」とは全然意味が違いますし。それから、「と、とにかく人気のない所へ!」の、セリフの終わりは一体どこなのでしょう。「強制的に猫になってしまうんだよ。」はセリフなのでしょうか?セリフであったとしたら、始まりは一体どこなのでしょう?「」が抜けているのはちょっとまずいかと(^_^;)。私的に、セリフの途中で改行をするのはやめていただきたいです。セリフと描写との区切りが分かり難く、ちょっと読み難いかなと思いますので。それでは、続きも頑張って書いていってください。
2004-02-14 17:07:19【☆☆☆☆☆】エテナ
脱字(?)の指摘ありがとうございます。次回アップする時に直しますね。 意外…になるといいんですが^^;ありがちになってしまいそうで恐いです。ノートには最後まで書いてあるのですが。話が読めても皆には教えないで下さい(切実な願い)
2004-02-14 18:45:37【☆☆☆☆☆】冬椿
続きがよみたいなぁ。楽しそうでいいですネ☆スズ族ってありましたけど、それにもうちょっと説明がほしかったかな・・
2004-02-21 16:28:09【★★★★☆】美禰湖
内容には惹かれるけど、話のテンポが悪いかも。 余計な説明を一切省いてもいいかなって気はしますね(例えば一瞬の後に1/100秒はいらないかも) 説明したいならまとめて人物説明なり、状況説明した方がいいかと…。 次回も楽しみにしております。
2004-02-24 21:48:03【★★★★☆】黒っち
計:16点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。