『仄かな月、儚い月』作者:はるか / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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何もかもすべて離れて行く。
勿論止める事なんか出来ない。
留められたメール。
再開など二度とない。
曖昧な返事が狂わせた。
光を出さない月はただ儚いだけだった。

どうして何もかも変わってしまう?
永遠に変わらないものは無い?
玄関を出て少し歩いた所。
人気の無い場所を探し座り込んだ。
手元にあった小石を投げる。
コンクリートの壁を打ち返して落ちた。
無気力にその場に倒れこんだ。
君が何度か言ってくれた言葉。
君が好きだった歌。
また、いつか聞いたら君を思いだすんだろう?
馬鹿みたいだった。
裏切られたらって怖くて信用なんかしてなかったのに。
結構信用してたみたい。
免疫が無いだけで珍しいもの扱い。
気がつけば気になってた。
でも好きではなかったんだよね。
きっと。
ほら、涙も流れない。
今だけの話かも知れない。
だけど頭が痛い。
色々と考え始めると頭痛がする。
撮ってしまった写真。
どうしたらいい?
忘れてしまえ。捨ててしまえ。
それが一番手っ取り早いのが確か。
だけど捨てられないものでしょう?
違いますか?
手に持った写真をユラユラ動かしながら空の眩しさに戸惑う。
見あげた先には自分を嘲笑う様な空が広がっていた。
空にさえ圧倒されて。
君の一言に凹んで。
情けなく、惨めな自分を捨ててしまいたい。
こう思う事は何度目だろう。
信じるという事はただ、儚くて一時的な夢。
幾度と無く彷徨ってしまった夢から逃れたら残酷な現実が待構えている。
度々、現実から逃れたくて本を読んだりする毎日。
見るものもなく瞼を閉じると暗闇で恐怖を感じた。
遠ざかり、消えてゆき、次に目を開けた時には面影だけが確かに残ってて。
写真を捨てようとすると手が動かなくなって捨てられない。
アドレスを消そうとすると苦しくなる。
記憶が覚えてしまっていて忘れようにも忘れられない。

仄かにゆれる月。
窓からもれる光。
ディスプレイ越しに聞える君の声。

すべて幻影で儚くて脆い。
夕日が見えてきて、空が陰った。
「今日は終わりだ」
一言呟いて立ち上がる。
写真を握り締めて、
消えそうにない記憶を踏み消しながら、私は明日へ行く。
今日の名残りはきっと明日にも残る。
歯を食いしばって見上げた空から雨が降ってきた・・・様に感じた。
気がつけば泣いていた。
手に握り締めた写真を見て、空を見て。
遣る瀬無さが自分を押しつぶそうとしている。
自分自身が一番儚かった、弱かった。
これでもかと言うほどに写真を握り潰してコンクリートに打ち付けた。
それでも残る未練・・・。
もう、時の流れに任せるしかない。
時間が忘れてくれるのを待つしかない。
信じてしまった君を忘れるのにはどれくらいの時間がかかるだろうか?
1日でも早く忘れられたら気が楽なのに・・・そんなうまく忘れられるわけがない。
数日間は本に頼るしかなさそうだ。
家に入り本棚にある幾つかの本から一つを選び読み始める。
この本が覚めた時はまた違う本の世界へ行こう。
外の雨が止んだら本の世界から抜け出して現実へ戻ろう。
あの月がくっきりと形を見せるまでに心から笑える様に。
それまで仄めく月を眺めながら君を忘れるとしよう。
「さよなら」
君の優しさ・・・忘れるから。
「ありがとう」
純粋って言ってくれて。

「じゃあね」
無理に笑った自分の顔が窓に映った。
一回のクリック・・・一瞬にして君が消える。


「あっけないな」
一言ディスプレイに向かって呟いた。
2004-01-24 23:22:47公開 / 作者:はるか
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■作者からのメッセージ
感情描写ばかりです・・・。振られた後の少女です・・けどなんか変やね・・(オィ。何もかも忘れてしまいたい時ってやっぱ本読むのがいいですよ。あまりにも現実離れしてると現実逃避には過ぎますけど(苦笑
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