『私の先生(終) 愛してる、遠い人。』作者:ぱちこ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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あのあと私はちゃんと家に帰れただろうか。
どうもあの時のことはよく覚えてない。ショックで何も考えてなかったから。
先生の、結婚。西先生と内田先生の・・・結婚。
考えると涙が出そうだった。でもまだ泣かないよ。真実を知るまでは。
とは思っても、学校には行きたくなかった。
「お母さん、あたし一生インフルエンザかかってる。一生学校行かないからね」
「は?なにいってんの!あんた馬鹿だから風邪なんて引かないでしょ!この馬鹿!」
まぁ母から言葉的暴力を受けつつ家を出た。見上げたら曇り空。

せんせい、本当に結婚しちゃうの?そんなのイヤだよ。私。

学校に着いたらもう1時間目が始まる直前だった。
「うっわ!やっば・・!」急いで1時間目の用意をする。
1時間目・・・・社会だった。西先生の社会だった。
一瞬手が止まったけど再びロッカーの中から教科書を取り出した。

鐘がキンコンカンコンとなりそれと同時に西先生が入ってきた。
何故かうちの担任も一緒だった。
「えー、授業を始める・・・の前にだな。」西先生が少し躊躇しているのがわかった。
どうせ結婚の事を話すんでしょ?そんなのみーんなしってるんだから。
先生からの結婚の話し、聞きたくなかったからノートに落書きをしていた。

「・・・実は、私は来週からここの学校ではなく新潟の学校へ移る事になりました。」

ぼと。思わずシャーペンを落としてしまった。
・・・・は?
他の子が「先生ー。結婚は?どうするんでしかぁ。」と聞いた。
西先生は微笑みながら「結婚は内田先生とします。僕が新潟に行く事になったら
多分内田先生もこの学校をやめて新潟で家事をがんばると言っています。」
すると担任が口を開いた。
「えーとだな。実はこの話し前々から決まっていたんだがな。西先生の希望で 
 ギリギリまで話さないことにしおいた。」
「みんなときまづい空気で授業をやるのは、嫌でした。」西先生が言う。
先生は結婚もするし、この学校からもいなくなる。
私の心の中からも先生はいなくなってしまう。そんな悲しい事はないよ。

授業はあっという間に過ぎてしまった。良く考えたらこれで最後の授業だったんだ。
最後に西先生は深く礼をして「ありがとうございました。」と言い教室を出た行った。
皆は「えー、まじで?」とか「うそぉ〜」とか口々にいっていた。
私は・・・もう何も言えなかった。でも1日はあっという間に過ぎていく。

終礼が終ってすぐ私は社会科教員室に足を動かした。
自分でも分らないほど早く、足は動いた。夕暮れの廊下を通り、
社会化教員室のドアをあけようとした・・・。けど。
手が震えてドアの前で手が止まってしまった。
でも今傷つくのを怖がったら、何も出来ないんだよ。そう言い聞かせて
ドアを空けた・・・。
「あのー、西先生ー・・・?」
「ああ、お前か・・・。」先生は自分の机の上の荷物を整理していた。
ダンボールは書類とか本とか。傍らには女子生徒からもらったのか
プレゼントみたいなものがあった。
「お前まだいたのか。生徒はもう下校するんだぞ。」
「先生。」
「だいたいお前が居ると荷物整理の邪魔だ。出ていけ。」
「先生!」
部屋がしーんとなった。先生は「いったいなんなんだ。」と呟いて
また荷物を整理し始めた。
「なんで・・・いっちゃうの。なんで結婚しちゃうの?」
「そりゃあ俺だってもう良い年だし。結婚ぐらいしないとヤバイからな。」
「そんな風に思ってて、内田先生の事愛してるの?」
一瞬間が開いて、「心の底からアノ人を愛してる。」と先生は言った。

私、何を聞きたかったんだろう?先生の口からそんな事聞きたかったの?

「じゃ、じゃぁ! 私も来週からここの学校辞めて先生と一緒に新潟の高校行く!」
先生は少し笑って「無理に決まってるだろ」と言い捨てた。
「やっぱり無理だよね・・・でも。」
「・・・でも?」
「でも先生のことは、諦められないんです。」
先生は何も言わない。ただガサゴソと音をたてて荷物をしまってるだけ。
「おまえ、そんなんだから一生おれのこと諦められないんだよ。」

「・・・じゃぁ、諦める。先生のこと、あきらめるよ。」
「今回は聞き分けいいんだな。」

「だからキスして。諦めるから、キスして」

そしたら私、きっぱり諦められるから。
「ほんき?」「ほんき。」

・・・あ、先生困ってる。私先生を困らすつもりでここきたんじゃないのに。
じゃぁ、先生の望んだとうり、聞き分けの良い子になったげる。
「う・そ! 嘘だよ先生!そんなにマジになんないでよ。あはは・・・それに・・」

突然一瞬視界が先生の顔でいっぱいになったと思ったら、

唇になにか触れた。

「・・・・・!!!!」
先生の顔が遠ざかって唇の感触も遠ざかる。
「・・・これで、良いんだろ?」
目を見開いてぼうの様につっ立てたけど、ようやく状況を把握した。

キスされた。ううん、してくれた。

「あ、あぁ、あたし・・嘘って・・言ったのに・・・」
「俺、一人でも生徒に未練残されながら向こうに行くの嫌だったから。」
心が何かで一杯になる。あったかいような、つめたいような。
ドクドク心臓がいっている。先生に聞こえちゃうんじゃないかってくらい。

いっつも、私の我侭につきあってくれた。
保健室まで連れていってくれた。
痴漢に助けてくれた。
怪我を消毒してくれた。
走馬灯の様にかけだすこの思いではどこにしまうべきか。
一生鍵の開かない心の引出しがあれば良いのに。
キスしてくれたから先生のこと、諦めなきゃいけないのに。
ずっと見ていた黒い髪、黒い背広が何かで滲んで見えた。
それは頬をつたって床を次々と濡らしていく。
「あー。目にゴミ入った。いたたた・・た・・」
違う、ゴミが入ったわけでもないし、どこかが痛いわけでもない。

先生の存在が遠のいてしまっていくことが悲しかった。

「あたしぃ、先生のこと諦める・・・けど、先生の事忘れないから・・・。」
泣きながらいった言葉だからちょっと聞き取り難かったかもしれないなぁ。
でも先生は「それは嬉しい事で。」と言った。
いつも聞いてるこの意味わかんない皮肉。いまじゃ最高に悲しいよ。

夕暮れが差し込んで私達を照らしている。
泣いてる私、荷物ずっとかたづけてる先生。
夕日が沈んでなくなるように、私も消えてしまえばいいのに。
先生はこっちをむいて、今までに見た事ない、すこしはにかんだ優しい笑顔で
「じゃぁな」って言ってくれた。がんばれよ、とも言ってくれた。

あたし、頑張れるかな?また先生に笑顔であえる強い人間になれるかな。

*******
それから、何ヶ月もすぎた。先生は当然だけど新潟に行ってしまった。
新しい社会の先生はかわいい女の先生だった。
私はもうすぐ高校3年生になる。受験で頑張って辛い時は先生の顔を見たかったけど
もう先生いないもんね。

私はあのとき「諦める」っていったけど結局諦められてない。
ケジメのない奴だなぁって思われてもいい。
でも、

あのとき最後に見せてくれた優しい笑顔も、私の中にある先生の思い出、
これは全部誰のものでもない。私のだけものだよ。

横を向いたら青空が広がっている。先生もこの青空、きっと見てるよね?


愛してる、遠い人。それは、私の先生。


私だけの先生。
2004-01-22 10:23:55公開 / 作者:ぱちこ
■この作品の著作権はぱちこさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お・・終り・・ました・・・。
なんか途中で意味わかんないけど・・・。
すいません。
今までレスとか感想くれた皆様方。
ありがとうございました。それでは。
この作品に対する感想 - 昇順
…何かいいですね〜甘酸っぱいっていうか…w面白かったです!また投稿して下さい!
2004-01-22 21:56:07【☆☆☆☆☆】夕貴兎
すいません・・・点忘れました;いつも忘れるんですw
2004-01-22 21:57:10【★★★★☆】夕貴兎
あっ!ついてた…!点数…。すいません。何度も。
2004-01-22 21:58:22【☆☆☆☆☆】夕貴兎
ありがとうございます!!甘酸っぱい・・ですかぁ!!(^^)嬉しいです!
2004-01-22 22:32:37【☆☆☆☆☆】ぱちこ
良かったです!!てか辛いですねぇ・・結局先生行っちゃうなんて・・・戻ってこんかこらぁ!!(キレ/笑
2004-01-22 22:34:45【★★★★☆】はるか
そうかぁぁぁ・・いっちゃうんですね、先生。悲しいなぁあぁ。すっごく面白かったです
2004-01-23 18:53:14【★★★★☆】sarina
終わりがせつなかったです。。次回作も楽しみにしてますっ☆
2004-01-23 19:34:41【★★★★☆】律
みなさん。ありがとうございます。ぱちこは涙が出そうでたまらないです。自分の作品に色色な人が「おもしろい」って言ってくれる事、すっごい嬉しかった。ここにきて小説投稿して良かった、って思った。みなさんありがとうございました。
2004-01-24 17:19:46【☆☆☆☆☆】ぱちこ
計:16点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。