『あいつはBLUE。第3章』作者:竜紀 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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第3章


私はゆっくりと、何にも考えないで、マイペースに歩いて行った。

「はぁ・・。」


思わず溜め息をもらして顔をあげると、目の前にはあの公園があった。
気が付いたらそんな所まで来てしまっていたのだ。

ガサッ・・


頭上にある木を手でかきわけて、私はただ黙々と前へ進んだ。

昼来た時より、道が長いような気がした。



・・・青!


昼来たときと同じ湖の前の、あのときと全く同じ位置に青はしゃがんでいた。

青は、こっちを振り返ると、青がするとは思えないような、驚いた表情を見せた。


「っ、雅っ・・!」

青は立ち上がると、私の腕をつかんで湖から数m離れたベンチに座らせた。


「どうしたんだ?何か忘れ物か?」

青はベンチには座らず、ベンチの前に立って、私の目を見た。

私は小さく首を横に振って、下を向いた。

・・・青の視線が、突き刺さるようだったから。


「う、ううん。違うの、違うけど。あおっ・・じゃなくて、神平君こそ、どうしてこんな時間にまだ公園に居るの?」

青は、ふっと一瞬微笑んだ。


「別に。ただ、俺には居場所ってやつが、無いからさ。」


青の寂しそうな横顔が痛かった。


「・・・。どうして?どういう、こと?」

余り聞く話では無いってわかってたけど、聞かずには居られなかった。

私は子供すぎて、自分の気持ちを止める事が出来なかった。


青は、予想通り黙り込んでしまった。
でも、やっと口を開いたかと思うと、呟くように、ボソリと言った。


「・・・雅になら、言っても、言っても良いよな・・。」

そして、ゆっくりと話し始めた。


「俺、一人もんなんだ。ホントに、誰一人身寄りは居ないんだ。」

青の真面目な顔が、寂しそうで、少し怖かった。


「誰も、誰も身寄りは居なくて。でも、俺、小4までは親父と住んでたんだ。
・・・都会に、な。

親父は、俺が小3のときに、話してくれた。

俺のおふくろは、俺を生んですぐに、『旅行に行く』って行って、そのまま帰って来なかったんだそうだ。
俺は、生まれてすぐは、健康とは言えないような子供で、それがおふくろを苦しめたんだ、って。
俺のおふくろはすごくすごくデリケートで繊細で、ちょっとしたことでも心を痛めてしまうような、そんな心の弱い人間だったんだ、って。

俺が小4のとき、親父は都会の街に、深く深く染まってしまった。
心も魂も、全て売ったみたいに。
家に帰るのはいつも朝で、俺はしだいに不安にかられて、おかしくなったときもあった。

不安にかられた俺は、ある日、親父に聞いたんだ。

いつもどこに行っているのか、どうしてしまったのか、と。

親父は、俺にこう答えた。
『都会にはな、大人なところがあるんだよ。ちょっとしたことで金をもらえたり、ちょっとした金でそれ以上の物をもらえたりな。』

俺は、親父がどこで何をしているのか、すぐに想像がついた。
雅にだって想像がつくだろ?少しくらいなら。

親父は、だんだん帰って来る回数も減っていって、ある日、俺にこう言った。

『お前、最近ずいぶんと悩んでいるみたいだな。
・・・だから嫌なんだ。
お前は、母さんに似すぎている。
ちょっとしたことでウジウジ心を痛めて。
それを直せば、ちったぁ可愛がってやるってのにな。』

そう言って、その日以来、親父は帰って来なくなったんだ。

俺は、成り行きで施設送りになった。

それからは、俺の気は狂うばかりで、精神的にかなりダメージをくらっていた。親父のことで・・。

都会が怖くて、俺は施設から一歩も出れないくらいに、都会を恐れるようになっていた。
それで、施設の人に進められて、小6でここの町に来たんだ。
施設のおじさんの知り合いの、人の良いおばちゃんの家に住まさせてもらってな。

・・・雅。
俺は、雅が大事だ。

周りの奴らとは、騒いだり、音楽やったり、そういう仲間だ。

でも、本音は話せないんだ。
真実も、過去もな。

なのに、雅の真っ直ぐな目ぇ見ると、何でも話せる。

雅は、俺には必要な人間だと思うんだ。
雅と出会った事は、運命だと思うんだ。」




青は、真面目な顔で私をぐっと見た。

視線に押されたけど、私も青を見た。

まるで、ドラマみたいだ・・。


けど、真実。

青が、私にくれた、大事な真実なんだ。

青の手が、私の手に触れた。

私は、青の手をギュッとにぎった。

「ねぇ、私、神平君のこと、何て呼べば良い?」

青は、ふっと笑った。目は、寂しそうな表情を浮かべていた。

「ブルー。神平青って名前は、俺の過去を全部知っているから。
周りの奴も、皆そう呼ぶんだ。」


「BLUE・・。わかった。」

ブルーの手をずっと握って、静かな空気の中で、時間はただ過ぎていった。



2004-01-11 21:00:30公開 / 作者:竜紀
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更新が遅れてしまってすいません。
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この作品に対する感想 - 昇順
前回も読まさせていただきましたが、なかなかいいお話だと思います。ただ、「青」と会ってまだ間もないのに、信頼しすぎているかな・・?と思ったのですが、私も人のことは言えませんので、このへんで失礼します。
2004-01-15 15:11:27【★★★★☆】セナ
レスありがとうございますw点数も嬉しいですwそうですよね、私もちょっと信用しすぎかなぁ・・?と思っていました。アドバイス、どうもありがとうございました。
2004-01-19 20:23:02【☆☆☆☆☆】竜紀
計:4点
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