『今日の良き日は 2』作者:茄音 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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その町は懐かしい匂いがした。
なぜが小さい頃、感じたような匂い。
「ミャァー、ミャァァ」
「えっ?どこ?」
さっきの猫の声が聞こえた。
あたしは辺りを見わたした。
「ザワッ」
「ん?」
右の壮大なコスモス畑から音が聞こえた。
「誰なのぉ?」
静かになった。風だけが音を奏でている。
「君ー」
「はっはい!」
「この町の人じゃないね、どこの人?」
コスモス畑からあたしと同い年ぐらいの男の子が出てきた。
「あっあたしは、あっちの林から来た、新絵山に住んでる北川あんずです!」
「新絵山?そんなのあるっけ?・・・そうなんだ。俺は大石祐太郎、よろしく」
「オオイシ?もしかして、あなた猫飼ってます?」
「うん、なんで知ってるん?」
あたしはハッと気づいた。この人が飼い主なんだと。
「今なぁ、うちの猫、ベィって言うんだけど居なくなっちゃってさぁ
 どこいるか、知る?」
「さっき、見かけましたよ!赤い首輪ですよね」
「うん。探すの手伝ってくれる?」
丁度、いい暇つぶしになる。
「はっ、はい」
「んじゃ、コスモス畑は調べたから次は、絵山寺に行こうか」

絵山寺はそう遠くはなかった。けど
階段が48段もあって、辛かった。
あたし達はぐるっと寺をまわってみた。居ない。
「居ない・・・」
「まだ、調べるところはあるじゃん」
「えっ?」
「床下」
正直、すごい野生児だと思った。
そんなところまで調べるなんて、すごい。
「前もいたんだよなぁ、ベィ。ここに」
「よく逃げるんですね」
「太陽が嫌いなんだ、ベィは。だから暗い床下とか、
 日陰の木の下とかね。ん・・・あれ?」
奥に真っ白い物がうっすら動いてる。
「居た!」
「ミャァ!」
猫は鈴を鳴らして、走っていく。
「待て!」
祐太郎君も走っていく。
「ちょっと!まって下さい〜!」
あたしも出来る限り走った。
祐太郎君は階段をどんどん走っておりていく。
それで猫にどんどん近づいていく。
「よっしゃっ!それっ」
すごいジャンプで祐太郎君は猫に飛び掛った。
「すごいっ!飛んだ!」
ナイス捕獲だった。
祐太郎君はポケットから紐を取り出し、首輪につけた。
「すごいねぇ。おめで、きゃっ!」
あたしは階段をひとつ踏み外した。
そして石の階段に叩きつけられた。
「大丈夫?あんず・・・ちゃん」
「イテテ・・・うわっ足ひねったかもしれない・・・」
足がズキンと痛む。
祐太郎君はあたしに寄ってくる。
そして背中を向けた。
「えっ?」
「まだ階段。降りれないだろ?」
「あ・・・」
「早く!」
あたしは祐太郎君の肩に手をかけ、ゆっくりと乗った。
「すいません」
「いいよ」
ゆっくりと降りた。
久しぶりのおんぶ、何故か昔感じたような、暖かいおんぶ。

祐太郎君は階段を下りるのを途中でやめた。
そして、横にまがっていった。
進んでいくとそこには、素晴らしく急な坂道があった。
「ほらっあそこ」
祐太郎君は眩しい太陽の真下に指をさした。
「えっ?木・・・?」
「林檎だよ、今は蜜を入れ始めて甘いんだ。さっ行こっ!」
「はっ!!」
祐太郎君は私をおんぶしながら走り出した。
「きゃ!!うわっ!!うっっ!!えぇぇ!!」
「そろそろお腹すいたでしょ!!もうすぐだから!!」
隣をどんぐりが転がり落ちていった。
考えてみれば、もう秋なんだと。
「はーはーはー、ついたぁぁ!!」
広大に広がる野に林檎の木が一本あった。
祐太郎君はあたしを優しく林檎の木の真下の丸太の上に下ろした。
「大丈夫ですか?あの、ハンカチどうぞ」
「あっありがと、はぁ・・・腹へった」
祐太郎君は出始めた額の汗を拭いて
あたしの隣に座った。
「よしっ、ベィ、林檎とってこい!」
「とれるんですか?」
「ベィは急な斜面でも登れるからさ。。。はぁはぁあ」
祐太郎君が紐を解くと、ベィは真っ直ぐに林檎の木に向かっていった。
そしてあたしたちの上に行って、林檎を落とした。そしてキャッチ。
「よしっ!ほいっ甘いぞー、あれっ?おい」
あたしは眠っていた。                                  つづく
2004-01-09 18:23:21公開 / 作者:茄音
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■作者からのメッセージ
恋模様、うゎ。アリエナイ。
父親と同じ苗字の少年、何か深い奥があります。
呼んでくださってありがとう御座います。
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