『謳われし者の鎮魂歌〜レクイエム〜【始まり】』作者:蘭華 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角6337.5文字
容量12675 bytes
原稿用紙約15.84枚
 ここは京都の何所かにある『聖桜神社』と呼ばれている社(やしろ)。
 この社には日々、悪霊に頭を悩ませる人々が身を寄せにくる。
 そこで、そのような人々に力を貸しているのが聖桜神社の神主である、秋山 翔。そして、今、日本中で、話題になっている除霊師・RIO。
 そして、意外なことに、普段、RIOの姿が社には無く、神主・翔の妹の秋山 蘭華の姿がある。蘭華は、大抵は学校が終わった後、この社で巫女をしている。ついでを言うと、翔は23歳、蘭華は、14歳である。
 ある日、そんな聖桜神社に一本の電話が鳴り響いた。

「はい。聖桜神社。」
『あ、兄さん?私よ私!!』

 急に聞こえてきた馬鹿みたいに明るい声に翔は思わず溜息をついた。
 それもそのはず、電話の主はもう一人の妹である、秋山 楓、18歳のものであった。

「で、なんの用だ?」
『さっすが兄さん!!物分りがいいね!!』

 内容はこう。
 今、楓の暮らしている東京がおかしな気配に包まれているというのだ。
 しかも、そのおかしな気配のせいで、楓は占う力が明らかに弱くなっているというからさらに問題になる。

『と、いう訳なのですが・・・いかがなものでしょか?』
「・・・俺がここから離れるわけにはいかない・・・」
『んなこと分かってるよ!!だから、RIO貸して。』
「RIOは物じゃないぞ・・・?それに、RIOなら調べるのにも日数がかかるだろう・・・」
『かまわないわよ!!どうせ、蘭華もこっちに来るんだし、ついでよ、つ・い・で!』

 この破天荒な妹には毎回の如く、頭を痛めている翔ではあるが、今回は深刻な様子を読み取り、渋々頷いたという。

「ただいま・・・」
「お帰り。話があるから、着替えたらおいで。」
「・・・分かった・・・」

 午後6時過ぎ、部活であるテニスを終えた蘭華が買い物袋を手に提げて帰宅した。
そこを翔が呼びとめ、自分の部屋(翔の部屋は和室)に来るように促した。

「《コンコン》兄さん、入るよ・・・」
「あぁ、入りなさい。」

 翔に了承を得て部屋に入ると、蘭華は律儀に正座をした。
 その姿に翔は少々苦笑を浮かべた。

「崩してもいいんだよ?」

 翔に言われたが、蘭華はフルフルと首を横に振って、否定の意思を示した。

「で・・・用事は・・・?」
「ん〜・・・実はな、昼間、楓から連絡があったんだがな・・・」

 翔は、昼、カエデと話した事を全て蘭華にも話した。蘭華は翔の話を真面目に聞き、しばらくして頷いた。

「つまり、私が東京に行けばいいのよね?」
「そういう事だな。いいか・・・?」
「選択権ないよね?なら、私の返事は決まってるわ」

 “イエス”
 蘭華は、そう意思表示した。
 翔もその返答に満足して笑顔になった。

「それじゃぁ、夕飯の支度するね。」
「あぁ。出来たら呼んでくれ。」
「解った。」

 蘭華は翔の部屋から出ると軽く溜息をついて部屋の前をあとにした。
 この溜息の意味を理解できるのは、おそらく神のみというものである・・・。

《上京当日》
「それじゃ、兄さん、行ってくる。」
「あぁ。気を付けてな。駅に着いたら楓を探すんだぞ。」
「探されるんじゃなくて、探すのな・・・。そういうところは抜けてるよね・・・」
「だな・・・。ま、お前も自分で探す方が安心だろう・・・?」
「まあね。じゃ、兄さんも気を付けてね。」
「楓によろしくな。」

 このときの蘭華、翔は東京で起こる出来事を、何一つ分からないのは当然の事と言えよう。
ただ、このとき、蘭華は妙な胸騒ぎだけが心の奥底にあったというのは、また、しばらくして明らかになることだった。
東京に着いた蘭華は突然眩暈を覚えてその場に蹲った。

「大丈夫ですか?」

 突如、頭上から聞こえてきた声に驚いて顔を上げると、見知らぬ・・・と、それもそのはず、東京は初めてなのだから。

「すみません・・・少々眩暈がしまして・・・」
「え?ホントに大丈夫なんですか?」
「はい。心配して下さり有難うございました。それでは・・・」

 蘭華は心配してくれた男性にお礼を言うと、足早にその場を立ち去った。
 とにかく、あの場にいたくなかったのだ。

 今は春。東京も暖かくなってきているらしく、コートなどを羽織っているものの姿が見えない。
 蘭華は改札口を出ると、新春になったと同時に東京に上京していた姉の姿を探し始めた。
『人混みって苦手なのよ・・・』とか思いつつ、いかにも『私はだるいです』なんて顔をしながら不機嫌ということが丸分かりの態度をしていた。

「蘭華――――――!!!!!」

 蘭華はこんな人混みの中で叫ぶのはあの破天荒な姉しかいないと悟り、溜息をつきつつ振返ると、案の定、予想通りの人物が物凄い勢いで走ってくるのが見えた。

ヒョイ  ベチッ!!

 思わず避けてしまった蘭華はその場に派手に転んだ姉の姿を冷ややかな目で見ていたという(笑)。
 暫くすると、やっと自分がどんな状況になっているのか理解したのであろう楓がムクリと起き上がり「たはー・・・」とか言いながら立ち上がった。

「お姉様が可愛い妹を包囲してあげようというのに、避けるとはいい度胸だ。」
「別にいらないし・・・むしろ、するな。」
「酷い!!お姉様に向かってそんなことをいうなんて!!そんな子に育てた覚えはありません!!」
「育った覚えはあるけどね・・・」

 一人でヨヨヨと泣いていた楓は、妹の冷たい反応に今度は隅の方でイジケ始めた為に今日、何度目か分からない溜息を再度ついたという。

「・・・んな馬鹿な事してる暇があるんなら行くよ・・・」
「もう!!とことん冷たくなって!!そんなんじゃ彼氏できないわよ!!」
「できなくて結構!!」
「うぅ・・・」

 更に冷たくされた楓は一昔前の少女マンガのような体制になり泣いていたという(笑)。

「さ、着いたわよ。」
「・・・汚い・・・もう少しさ・・・掃除しようよ・・・。」
「あはは☆昔から苦手だったしね〜☆」

 笑って誤魔化そうとする楓を見て再度溜息をついたのは言うまでもないだろう(笑)。

「姉さん、掃除機何処?」
「え〜・・・と、あった☆はい。」
「・・・まったく・・・姉さんも、もう少し女らしくしたら・・・?」
「はいはい。分かってますよ」

 蘭華はこの春から双翼学園という中学校の3年になる。
 成績は元々良いほうだったため、編入試験は軽々合格。ついでをいうと、別に試験なんか受けなくても、テニスの実力だけで編入することが可能なのだ。
転校することにあまり関心は無いのだ。友人なんか必要ないと思っている蘭華にとって、という話ではあるが。
転校してくる前の蘭華は、やはり友人が少なく、一人、図書室で静かに読書をしている方が好きなタイプだった。

「姉さん、学校の制服は・・・?」
「ん〜?はい。これ。」

 蘭華に問われた楓は紙袋を渡し、洗濯物の整理を始めた。

「いつも、そうやって進んでやってくれると有難いんだけど・・・」
「はいはい。ごめんなさ〜い☆」
「反省してねぇな・・・」

 かすかに怒気を孕んだ声で睨むと流石に怖くなったらしく、楓は大人しくなった。
 蘭華は渡された紙袋から制服を取り出すと、着替えてサイズ確認をしてみた。

「あら!!似合うじゃない!!」
「そうかな・・・?」
「そうよ!!うん。あんただったら『白波学院[シラナミガクイン]』の制服でも似合ったんじゃないかしら!!『双翼学園[ソウヨクガクエン]』のも可愛いんだけど・・・」

 一人でぶつぶつと呟く楓を尻目にして蘭華は元着ていた服に着替えて掃除を再開する。

「転校は楽しみかな〜?」
「別に・・・。なんで楽しみにしてなきゃならないのよ・・・」
「なんでって・・・普通はそうでしょう?」

 蘭華はそう言って頬を膨らませる姉を睨んで、

「私が普通だとでも・・・?」

と、冷たく言い放った。

「・・・そうでした・・・(泣)」

 楓は小さくなって部屋の隅でイジケ始める。
 勿論、蘭華はそんなもの眼中に入れていない。哀れ楓(笑)。

 そんなこんなで、無事転入日が訪れた蘭華は、制服に着替えて家を出た。
 学校に着くと、まずは、当然と言うかのように教員室に向かい教師達に挨拶をしていく。

「それじゃあ、教室に行くぞ・・・。」
「はい。分かりました。」

 蘭華の担任となる教師はまだ若く、20代前半といったところだった。
 蘭華は、この担任の男を知っていた。
 理由など簡単。兄・翔の友人だからだ。
 この男の名は水梨 誠哉〔ミズナシ セイヤ〕。他人がどう思うかは分からないが、かなり無茶苦茶な性格をしている。

 ガラガラ
「席に着け!!今日は転入生を紹介する!!入れ!」

 教室中が転入生という言葉を聞いてざわざわと騒ぐ中、蘭華は教室に入った。
 瞬間、教室中の生徒が息を呑んだのを蘭華は感じ取った。

「秋山 蘭華です。京都から来ました。・・・よろしくされるつもりはありませんので関ら
 ないで下さい。以上です・・・」
『・・・嘘!!』

 蘭華の反応に戸惑ったのは言うまでもないだろう。
 蘭華は常に冷たい瞳で全員を真っ直ぐ睨みつけていた。

「と・・・とりあえず、光輝の隣の窓側に座ってくれ・・・」

 流石の誠哉も驚いたらしく動揺を隠せずにいた。
 平然と、しかも、涼しげな顔で立つ女を見る目は何故か、尊敬が含まれて(は!?)いたという・・・

「秋山、お前の席は・・・そうだな・・・」
「先生!僕の隣、空いてますよ!」
「ん?光輝か・・・そうだな。秋山、あいつの隣の席に行け。」
「はい。」

 蘭華は余所見もせずにその席へと向かう。

「やぁ。あのとき、大丈夫だった?」
「・・・お前は・・・」

 蘭華は声をかけてきた少年に見覚えがあった。
 そう、上京してすぐに苦しさを覚えた時声をかけてきた人物。
 正直、蘭華はこの少年を女だと勘違いしていたため、学ランを着ている少年を見て驚いていた。
 そして、この一言・・・

「お前・・・女じゃなかったのか・・・?」
『は?!』

 クラス中の人間が笑い出したのは言うまでもなく、

「・・・俺は榊神 光輝。女顔だけど、男だよ・・・」

 困ったように微笑む光輝が居たという・・・。
 その事が関連してか、蘭華の校内案内役は光輝が任命(笑)された。
 放課後・・・

「秋山さん、部活は何に入るの?」
「できればテニス部がいい・・・」
「テニスか・・・でも、男子がほとんどだから、女子は、男子と合同だよ?」
「・・・かまわない・・・むしろ、その方がいい・・・」

 蘭華は光輝の疑問に答えてニヤリと不適な笑みを浮かべた。
 その笑みを見た光輝は心なしか顔が赤かったという・・・(後日談)

「で、でも、どうして?」
「女子じゃ相手にならない。私は1年の頃からJr選抜に出ている。この意味、分かる?ちなみに優勝もしてる。」
「・・・それって・・・実力あるってことか・・・」

 二人が会話をしていると後ろから光輝に対して体当たりをかまして来る輩がいた。

ドーン!!!!!★

 光輝、ものの見事に転倒(笑)

「あ〜にき!!なんだよ、こんな美人と歩いてよ!!」
「ば、馬鹿!!光大!!」
「・・・(しらけ)」

 むしろ、蘭華と光輝が歩いている事より、光大と呼ばれた少年が光輝を押し倒している
方が見物だと思われる。
 その証拠に蘭華は呆けてしまっている。

「・・・何なんだ・・・それは・・・」

 光大という少年を指して「それ」呼ばわりしている蘭華はやはり只者ではないようだ。

「人を『それ』呼ばわりかよ・・・いくら美人だからって返答によっちゃ手加減しねえぞ・・・」

 それ呼ばわりされた事によって目が据わっている。勿論、そんな事に動じる蘭華ではな
い。むしろ、逆にかなり睨みつけているのが周りから出ているオーラで分かる。(←本人そ
んなつもりなし。)

「名を知らねばお前かそれと呼ぶしかない。によって私は後者を選んだ。」
「なんで後者なんだよ!!?」
「後者の方がお前に相応しいと感じたからだ。」
「勝手に決めんじゃねぇよ!!馬鹿か!!?」
「少なくともお前よりは馬鹿ではない。私は世界模試で1位をとっている。」

「「世界!!?」」

光輝と光大の声が見事にはもった。
それに蘭華はふと気付く。

「・・・お前等・・・双児か・・・」
「あん?そうだ!!わりぃかよ!!」
「僕は否定したい・・・」

 光大何気にショック。

「ちなみに僕が兄。」
「妥当だな。」
「ひでぇ・・・(泣)」

 蘭華にこっぴどく毒舌を吐かれ、かなりショックを受けている光大。
 だが、立ち直りも早い。

「んでだ。俺は榊神 光大。さっき言った通り光輝の弟。」
「秋山 蘭華。」
「クール・・・?(大)」
「そう思うよな?(輝)」
「・・・腐っても双子か・・・」

 鼻で笑う蘭華。勿論周りは氷点下(笑)。
 光大はショックの為に石化(笑)。
 その光景を見ていたのか何処からか「キャハハ☆」と馬鹿笑いのような女の声が聞こえてきた。

「キャハハ!!言われてやんの〜☆」
「アホだな・・・」
「まぁまぁ。光大にもいい所はあるんだしね?」

 人込みから現れたのは馬鹿に明るい女と馬鹿に冷静な男と馬鹿に身長のでかい女の3人組。

「璃穂!龍登!実!!」
「参ったな〜・・・君達に見られたなんてな〜」

 悔しそうと言うかなんと言うか怒った感じの光大に対して光輝はとても楽しそう。

「・・・またお前等の知り合いか・・・」
「知り合いというより腐れ縁・・・」

冷静な男が答えた。

「・・・俺の名は水速 龍登。その2人とこっちの3人はいわゆる幼馴染というやつだ。」
「・・・そう・・・。私は秋山 蘭華。一応転校生だ。」
「転校生!!?私、神風 璃穂!よろしくね!!」
「私は如月 実。よろしく。」
「よろしくするつもりはない」

 キッパリハッキリ言う蘭華に対して璃穂と名乗った者だけフリーズ☆
 あとの2人は答えが分かっていたのか、龍登と名乗った者は黙っているし実と名乗った者は苦笑しているのみであった。

「なによ!!あんたムカツク!!」
「勝手に言ってろ・・・」
「あ〜!!今見下したでしょ!!?くやし〜!!」

 璃穂は勝手に蘭華に絡んでいく。
 蘭華が相手にしていない事は言うまでもないだろう。


 いずれ、ここで出会った5人が蘭華にとって、素晴らしき親友になる。
 それはまだまだ先のお話・・・。
2004-01-04 19:02:11公開 / 作者:蘭華
■この作品の著作権は蘭華さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして。蘭華と申します。
投稿は初めてですのでドキドキしてます。
小説の中にも蘭華が出てきますが、私とはまったくの別人ですので、そこのところ、よろしくお願いいたします。
感想、意見なんかもどんどん書き込んで下さい。参考にしながら頑張っていきたいと思います。
ではでは、また。
この作品に対する感想 - 昇順
まったくの別人でも「本人出て来ちゃったよ!」と言ってしまいました(^^;)あと社(やしろ)と言っている所で文の内容が理解しずらかったです。「・・・」は三点リーダーにした方が良いですよ。
2004-01-04 19:13:22【☆☆☆☆☆】PS-2918
小説の発言の中で☆や(笑)など感情を表す物は必要ありません、上手く説明で表してください(^^;)これからもがんばってください(^^)
2004-01-04 22:30:13【★★★★☆】紫の折り紙
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。