『闇が降りるは我が両手 第一話』作者:   新 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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空を見上げる。日は、既に傾いていた。
周りは見なかった。
そこには、自分の罪があるのだから・・・。

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「アル君」と名前を呼ばれた気がしたのは、
睡眠不足と疲労からくる幻聴などではなく、現実だった。
見上げる空。煤けた建物の屋上から、ミラノは手を振っていた。
特に無視する理由も無く、俺は、軽く手を挙げた。
それだけだった。それだけで充分だった。
逆に俺はそれだけでしか・・・自分の存在を肯定できなかった。



右。左。
大きな歓声が、俺と、その列を迎えた。町に入った途端、それは活気を増したようだ。
こちらに手を振る大勢の観衆。それを無表情で受け止めてやる。
最も、それは俺だけのようだが。「相変わらずだな、お前」と、観衆に向かって騒いでる同僚に、後からドツかれる。
それでも俺は、催眠をかけられたように、振り向きもせず通りを歩いていった。



「諸君の働きに感謝する」
と、軍基地に着いた後、軍の御偉方が言った。
世界中を巻き込んだ戦争から数年、その各地で、集落や町を襲う堕兵が激増。
この国でも、国籍不明、軍隊崩れの野盗との戦いが始まってから、暫くたつそうだ。
最初「盗賊ごときに軍か」と漏らした奴等もいたが、それらは即軍牢行きだった。
攻めてくる以上は、こちらも最小で最大の防衛をしなければならない。
機があらば、殲滅も。との話で、スピーチは終わった。



それぞれ兵士が散って町の祝賀祭に加わろうとしていたとき、
「アル」と愛称で俺の肩を叩く奴がいた。
俺は相手に分かるように面倒くささを表していたが、
「小隊長」との軍の呼ばれ方で、やっとその方に振り向いた。
「何だ、シュガー」皮肉たっぷりに言ってやった。
すると、俺の前の男は、「もうその呼ばれ方にはなれたよ」といった感じで苦笑した。

男の顔には眼鏡が光っている。それは、頭脳明晰の象徴のような物だった。
男の本名はシルキと言う。しかし、軍の中ではもっぱらシュガーという愛称で通っている。
「今日の君は、いつも通り素晴らしかったね。」
と、彼はライフル銃のジェスチャーで言った。俺は不快感を覚え、少し捻くれげに言う。
「終わってまでそんな話をするな。何度言ったら分かるんだ?」
「そんな事言っても、あれを話の種にしない事は無理だよ。
 君の人間離れした射撃と判断力・・・」
延々と駄弁るシュガーを残し、俺はこの場を離れる事にした。
しかしそんな俺の気を知ってか、「ミラノさんにも見せたかったなぁ」と強めたシュガーの言葉に、俺は立ち止まった。

「・・・殴るぞ」
「あはは、怖いなぁー」
おどけるシュガーを見据え、俺は本気で握りこぶしを拵えていた。

2003-12-23 18:55:52公開 / 作者:   新
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■作者からのメッセージ
会話文が少ない・・。読みにくいですね。
素晴らしく苦手なので、段々少なくなってくるんです(汗。
今、必死に慣れようと努力しています。
半端な終わりですが、続いて頑張りますので宜しく。
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