『天使の日記 FINAL』作者:竜紀 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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最終章


立ち尽くした私達を、道長さんは微笑みながら見ていた。

「私・・ね。実は、誰かにこの日記を読んでもらいたくて、机の上に置いたんだ。」

私もりくも、道長さんの予想外の言葉に、驚いたけど、言葉を口にしたりはしなかった。

道長さんの頬を、涙が撫でていった。道長さんのその姿は、余りにも綺麗で、私は見入ってしまった。

「読んでくれて、ありがとう・・。本当はね、クラスの皆、苦手だったんだ。誰もわかってくれないし、誰にも思いを伝えられないし。どうも、みんな軽いような感じがして、私の重い重い言葉は、きっと重くて皆持ちきれないと思ったから。」

その時、しばし固まっていたりくが、目を覚ますように言葉を発した。

「それなら、これからもずっと読んであげる。ずっとずっと、道長さんの日記を、読んであげるよ?辛くなったら、いつでも机の上に置けば良いじゃない。上手いアドバイスなんてあげられないけど、いつだって読んであげるよ。わかろうと、するから。」

私は、大きく頷いた。正直、りくの言葉に驚きつつも、心がじんわりとあったまっていった。

人との関わりって、大事だなぁ・・。


・・・それから1ヵ月後

私達は、3日に1度ほどのペースで机の上に置いてある日記を読んだ。
相変わらず、道長さんとはなかなか話さないけれど。

でも、道長さんのことたくさん知った。
たくさんたくさん、知った。

辛いことも、美紀って子のことも、家でのことも、好きなテレビも。

どうでもいい話だって、道長さんは一生懸命に伝えてくれた。

心に響くことも、秘密のことも、たくさんたくさん、教えてくれた。


だけど、最近は、机の上に日記が置いてあることが、すっごく減った。
3日に一回なんて、置いてないし。
ここ2週間ほど、いや、それよりは見てるかな?

・・・とにかく置いていない。

りくは、きっと悩みが解消されたんだよ、良いことでしょ! って言うけど。

だけど、私はどうしても、それが気がかり。どうしたんだろう・・?


どうしたんだろう


今日もいつものように、私達は教室で2人、どうでも良いお喋りをしていた。

・・・今日は、道長さんが、なんだか元気がなかったように見えた。

「・・・?ちょっと、りく・・。」

「何?どうしたの?・・!」

りくもやっと気付いたようだった。
道長さんの机。今日、少し元気が無かった道長さんの机。

・・・日記だ・・!

私は、すっと背筋が伸びた。
道長さんの、日記だ。3週間ぶりの・・。

りくは、道長さんの机の所まで行って、日記を手に取った。

りくは、髪を耳にかけて、ふぅ、と1回ため息をついた。

「いい・・?めくるよ。」


りくは、1ページ1ページゆっくりとめくっていった。
今まで見てきた、道長さんのたくさんの言葉が、1つ1つ目に入っていった。

どうでもいいことも、おもしろいことも、悲しいことも。

そして、やっと、一番新しい日記のページにたどりついた。

青いペンで、いつもの丁寧な字で、きっちりと書き綴られている。


『12月10日 水曜日

えっと、今日は、1つ、蹴りをつけたいことがあって、この日記に久しぶりに手をつけた。美紀とは仲直りしたし、今は、あんまり悩んでいないし。

何より、心がすっごくすっごく軽い。

ありがとう、日記を読んでくれた、りくちゃん、ゆいちゃん。
本当に、本当にどうもありがとう。

運命が、私達をめぐりあわせた。

このキモチはきっと伝えきれないなぁ。

余りにも、そう、例えれば、青空みたいな、スカッとキモチイイんだけど、
でも、うーん・・・。

とにかく、感謝でいっぱい。

心のどこかにあった、重い重い鉛が、やっと持ち上がって、やっと外に出たんだ。

こんな安っぽい言葉だけど、もう、これで締めくくらせてもらう。


アリガト。

アリガト。本当に、アリガト。

さようなら、心が通じて、嬉しかった。ありがとう。

                   道長奈美』

こういう内容だった。

元気がなかったのは、きっと、道長さんも、どこか寂しかったんだと思う。


りくは、泣いていた。私も、もらい泣きじゃないけど、涙を流した。

2年ぶりくらいに、泣いた気がする。


道長さんと、もう会えないみたいな、そんなキモチになった。

二人で抱き合って、その日は思いっきり泣いた。


でもさ、この話は、ここで終わりじゃないんだよね。
実は、現在進行形。まだまだ、今も続いてるよ?

今度は、道長さんの日記を一方的に読むんじゃなくて。

そ、交換日記。

3人をめぐりあわせた不思議な運命。
ううん、不思議じゃない。

だって、私達仲良し3人組が、出会わなくてどうするのさ?

今じゃ、もうめちゃくちゃ仲良しの3人組なんだから。


どうもありがと、天使みたいな、日記。
2003-12-22 22:13:39公開 / 作者:竜紀
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■作者からのメッセージ
やっと完結しました。ずっと続きそうだったので、終わらせました。初めての小説だったので、すっごく下手なんですが・・。
これからはもっともっと上手く書ければ良いなぁ、と思います。
この作品に対する感想 - 昇順
全作完結したので、感想を。たいへんよい話だった。私はここの投稿場の「初めて書いた小説です」はごあいさつのようなものだと思っているので、はっきり言ってそんなコメントは本気にはしていない。小説の内容だけ見てどうであるか考えるタイプなのだが、これはストーリーの質のよい作品であると思う。引っ込み思案の道長さんのような人は私の近くにもいる。彼は(男性だが)自分を表現するのが下手で、周囲と距離を上手に取れないせいで、目立つことを極端に嫌う。けれど、どこかで自分をわかってもらいたくて、非常にわかりやすい自分の感情を誰の目にもつくようなところに、日記のような形で晒す。「人はすぐうそをつくから嫌いだ」といいつつも、さびしいのは悲しいから誰かの服の裾を握り締めているような、そんな人だ。根がとても優しい人なのだ。というわけで、やさしい気持ちになりながら読んだ。今後この三人がどうなっていくかとても楽しみだ。感想のみになってしまったが、次回連載ものを書くときは、編集機能を使用したほうがいいと思う。新規投稿の際、PASSWORDというところに好きな文字を入れて、更新の時にはそこを使って更新前の作品を開く。これをみんなやったら、投稿場側の負担も軽減される(らしい)。では次回作も期待しています。
2003-12-23 12:17:09【☆☆☆☆☆】くるみぱんチップ
凄く良かったです!!
2003-12-23 19:55:52【★★★★☆】はるか
くるみぱんチップさん>レスありがとうございます。とても嬉しい感想でした、本当にどうもありがとうございます!後、編集機能のアドバイスもありがとうございました。次回連載ものを書くときに、利用してみます!
2003-12-23 21:19:42【☆☆☆☆☆】竜紀
はるかさん>どうもありがとうございます!点数までつけていただいて、嬉しい限りです。
2003-12-23 21:20:20【☆☆☆☆☆】竜紀
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。