『鼓動リモコン』作者:月渡り / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
星新一をイメージして書いた読み切り掌編小説です。消音になっている心臓の鼓動のボリュームを操作することのできるリモコンを開発した博士のお話です。読みやすく気軽に楽しんでいただける内容になっていると思います。
全角614文字
容量1228 bytes
原稿用紙約1.54枚
 ある博士が、消音になっている心臓の鼓動のボリュームを操作することのできるリモコンを開発した。
 彼はさっそく自分の心臓をめがけてリモコンのプラスボタンを押してみる。すると『ドクン、ドクン、ドクン……』と、心臓の鼓動の音が耳に届くようになった。どうやら実験は成功のようだ。
 それにしても、博士は一体どうしてこのようなリモコンを開発したのか。
 その動機は、彼の一人娘の生存を自分の耳でしっかりと確認する為だった。彼女は今、原因不明の病に掛かっていて、ガラス張りの部屋に一人閉じ込められていた。中に立ち入ることは許されず、外から見ているだけでは生きているのかどうかさえ分からない。
 しかし、リモコンが完成した今では、もう心配することはなかった。
 彼は誇らしげにリモコンを手にし、娘の心臓に標準を合わせる。そうして少しずつボリュームを上げていく。
『ドクン、ドクン、ドクン……』
 徐々に大きくなっていくその音を聞いて、博士の表情は緊張の面持ちから穏やかな顔へと変化していった。ついに娘の生存を確かめることが出来た。これからは離れていても確かに娘の鼓動を聞くことができる。
 彼はその喜びを抱きしめるように、リモコンをギュッと握りしめた。
 ドクンと鳴る鼓動の主が、娘の周りを飛ぶ小さなハエのものとは知らずに。
 彼女の身体がすでに冷たくなっていることを知らずに。
 博士は幸せの鼓動に耳を澄ませている。
2013-10-11 21:20:17公開 / 作者:月渡り
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■作者からのメッセージ
最近オリジナル小説を掲載するホームページを作りました。
まだまだこれからですが、この作品を読んで興味を持たれた方がいましたら、よろしければお越しください^^
http://www2.hp-ez.com/hp/tsukiwatari/page9
この作品に対する感想 - 昇順
こんばんは、はじめまして。作品読ませていただきました。
うーん、「消音になっている心臓の鼓動のボリューム」というのが何のことなのかよく分からないのと、さすがにハエの鼓動と人間の鼓動では性質が違いすぎて、仮にも博士が間違うとはとても思えないのとで、率直に言って納得の行かない内容に思えました。生きているのかどうかを確かめることが出来ないというシチュエーションにも無理があるように思えます。
星新一氏のショート・ショートをイメージされたということですが、氏の作品群はそういう不自然な点が出ないようにきっちりと構築されています。ぜひたくさんの作品を読んで、頑張って勉強してみてください。
文章は悪くないと思いますし、最後の一行などなかなか良いと思いました。今後の作品に期待しています。
2013-10-11 23:10:28【☆☆☆☆☆】天野橋立
計:0点
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