『Destity』作者:瑠威 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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よく漫画やドラマなどで運命に逆らうというのがあるが、それは本当に可能なことなのだろうか。
運命とは生まれたときから決まっているから運命というのではないのであろうか。
それでは運命という言葉を変えた少年の話をしようではないか。
それは幸せを求めた二人の少年の話である。






一人目の少年は、名をエンと言った。
彼は裕福な家に生まれ、何不自由ない生活を送っていた。
望むものは手に入り、嫌なものは全てなくなる。
だけど彼は幸せではなかった。
裕福なのが幸せではない。彼はそんな幸せは要らなかった。望んでいなかった。
自分だけそんな裕福な暮らしをしていていいのだろうか。
自分だけ幸せを手に入れていいのだろうか。
それでは意味がない、と彼は考えた。
何故?と訊かれるととても困ることなのだが、誰もそれを彼に訊くことはなかった。
なぜなら彼はそれを誰にも言わなかったから。
言ったらそれはそれで今の彼の生活が壊れてしまう。彼自身にとって、それはどうでもいいことなのだが、家族のことを考えたら別である。
家族が同じ考えだとは限らない。むしろ違う、と思ったほうがいいだろう。
こんなことを考える自分がおかしいのかもしれないと思ったこともあったが、それは紛れもない自分の考えだから。

―――もし運命に逆らえるのならば。

このまま裕福に暮らしていくのが運命ならばそれに逆らいたい。






二人目は、名をスイと言った。
彼は孤児であった。
生まれて間もない頃に今、彼が住む孤児院に捨てられ、それからはずっとその孤児院で生きてきた。
自由はないこと以外は彼にとって、その生活は幸せだった。…自由がないことを除けば。
血のつながりはないが、皆家族だ。家族以外になんと呼べば良いのか分からないぐらいに。
毎日が大変で生きるために必死だけど、それはそれで充実している。
生きていると実感でき、かけがえのないものも沢山出来た。
小さかった時、自分が育ててくれていたのが血の繋がりがないと知ったときでも、彼はくじけずに前向きにいった。
でもそれは苦痛。
自分の本当の気持ちを押し殺し、育て親に尽くしてきた。
自由というもとは存在せず、ただ同じ日が続くだけで。
自分では幸せと思っている。が、それは紛れもなく嘘の幸せ。
本当の幸せは自由あってこそのものであろう。自分で考え、行動し、掴み取るものであろう。

―――もし運命に逆らえるのならば。

自由を手に入れることが出来ないのが運命ならばそれに逆らいたい。






二人は求めるものは違えども、目的は一緒だった。
―――幸せが欲しいから。
運命を、運命を逆らってまで欲しい。
いや言葉を変えよう。
逆らうも何も彼らにはなかった。
運命はそう決まっていたから。
彼らは幸せのために運命の流れにも乗った、とも云える。
逆に言えば幸せのために運命に逆らった、とも云える。
人生も運命も最初からなんて決められていない。
その時その時がパズルのピースのように組み立てられていって、自分が死ぬときにようやく完成するのだと。
そう…それが運命。
最初からあるものなんかじゃない。






『幸せが欲しいと思った。
それを手にするには自分から動かなきゃいけない。
幸せは自分で手にするものだから。待っていても何も起こらないから』





彼らの結末までは語られていない。
運命とはたった一つの言葉。
それは人の行く末を見つめている…。




2003-12-06 18:14:42公開 / 作者:瑠威
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