『梓』作者:青木 ユカ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 梓――。 彼は、そう 私の思い人だった。
今は、何度呼び掛けても、それに答えてはくれない……
あの夏、あの地で出会えたことは、永遠だよ――

『梓』

 あなたと初めて会ったのは、私が中学2年の夏休みの時。
父の会社の所有する別荘に行っ時のことだった。
広すぎる程のその処は迷子になるには十分過ぎる条件を
兼ね揃えていた―― 知らない土地で、迷子になった
私は寂しさから来る孤独で胸が押し潰されそうな思いでいた…

 方向感覚も失い、同じ場所を何度も何度も歩いた。
「もう、ダメだよ」
 そう、思った時に彼は現れた。
「大丈夫? どうしたの??」
 彼は、そう 私に話しかけて来た。
その姿は絶望の淵で見る、最後の希望の光のようだった。

 それから、この地に住んでいる彼の案内の元、
別荘に戻ることが出来た。
 彼には、沢山のお礼を言って去ろうとした。
いや、去ることが出来なかった…

 優しい性格と良い、整いすぎる容姿。
全てがパーフェクトである人間。 と、言うのは
彼のことをいうのだろう―
 彼に、ここで別れては行けない気がした…

 でも、それは私だけではなかった。

「あの…」
 そう、2人同時に言った。
合わせたわけじゃないのに、タイミングが合ってしまい
2人で「ププッ」って笑ってしまった。
 その笑った顔も、すごく素敵だった。

 
 それから、自分の名前を教えたり、住んでいる所は何処?
ってお互い聞いてみたり。
学校の話、趣味の話。 本当に、色んな話をした。

 それでも、彼との別れは来るのだった。
 そもそもココに私が来たのは、最後に日本の思い出を作るため。
海外留学を希望していた私に、そのチャンスが回ってきたのだ。

 彼とは、今日初めて会ったばかりだった。
でも、驚く程意気投合しちゃって。
すぐに仲良くなった。
もう 会えなくなるかもしれない。
いつかは、多分会えるかもしれない。
明日にはニューヨークに旅立つ私。
それを、まだ知らない彼。

 いつかは、話さなくてはいけない。と、いう事実。
その反面、別れが辛すぎるから。と、いう本音。
 どちらも、本当。 どちらか選ばなければいけないのだけれど…


 私は、悩んだ―
そして、結論を出した。





 次の日。
朝一番の新幹線へ、自分のうちへ帰っていく私がいる。
でも、そこには彼の姿はなかった。


 私は、『海外留学』の事実を伝えなかったから。
別れの事実は、辛すぎて。

「さよなら」

 なんて、言えないから。
そんなこと言われたら、あなたの元から離れられなくなりそうだから。

 辛すぎる程の決断を下した。
神様、あなたは私の味方ではないのですか―?
2003-12-05 21:17:45公開 / 作者:青木 ユカ
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