- 『欲張少女』作者:湖悠 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
- 欲にまみれた少女の物語。
- 全角2709文字ある所に、欲張りな少女が居ました。
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原稿用紙約6.77枚
裕福な家に生まれたわけではありませんでしたが、彼女はとても欲張りでした。
3歳の頃、親がおもちゃを買ってあげた所、彼女は言いました。
「なんでいっこなの? もっとちょーだい、ちょーだい」
その頃は彼女も小さかったので、親はただの可愛い我がままだと思い、もう一個おもちゃを買ってあげました。少女は喜びましたが、欲が埋まることはありませんでした。だから、彼女はもっと頼みました。
「なんでにこなの? もっとちょーだいよぉー」
親は、その日から二個目のおもちゃを買ってくれなくなりました。
やがて彼女も大きくなり、小学生になりました。
彼女は運動神経もよく、頭もよかったのですが、欲張りだったため、友達は一人も居ませんでした。
彼女は寂しくなりました。欲張りだったので、友達が欲しかったのです。一人友達ができるのでは満たされません。全員と友達になりたくて、彼女は毎日様々な事を考えていました。
お菓子を皆に作ってあげる事を考えました。でも、作ったお菓子を全部自分が食べてしまい、失敗しました。
誰かを笑わせる事を考えました。でも皆を笑わせたくなり、全員が笑えるギャグを考えている内に彼女は眠りに落ちていました。
時は過ぎました。
欲張りな少女は、自分の性格を変えることなく、中学校に入学しました。
初めこそ友達は出来ましたが、時々ボロが出て、すぐに友達は少なくなってしまいました。
図書室に行った時、何故本が二つしか借りれないのか、もっと借りちゃいけないのか、と先生と口論したら、皆に引かれました。
少女は見た目が良かったために彼氏ができましたが、おごってくれると言われた時に遠慮なくおごらせすぎて、貢がされる女という悪い噂が広がりました。
修学旅行の時、回る場所が少なかったため、もっと回りたいと言っていたら、いつの間にか話を聞いてもらえなくなっていました。
少女は孤独でした。
そこで少女は初めて変わりたいと思いました。自分を変えよう。もっと好かれる自分になろう、とそう思ったのです。しかし今からでは難しいと思い、高校から変わろうと決意しました。
そして、塾で猛勉強した三年の秋の帰り道でした。少女は、ボロボロの服を着て、ボロボロのリュックを背負った男の子に出会いました。男の子は5、6歳に見えました。
「おねえちゃん、ほんかってくれない? ぱぱのほんなんだけど、ぱぱしごとがないからおかねがないんだって。だから、ほんをうらなきゃならない、ってそういってた」
男の子の目は純粋無垢でした。「おねえちゃん。ほんいっさつかって。そうしたら、ぱぱやさしくしてくれるから」
少女は――やはり欲張りでした。
「なんで私が一冊の本を買わなきゃならないの?」
男の子の表情が暗くなりました。
少女は腕を組み、男の子に言いました。
「一冊じゃ足りない。だから全部買うわ。あなたのお父さんの本、全部買うから」
男の子の背負ったリュックに入ってた古本を、彼女は全て買い取りました。欲張りだったので、リュックサックも買いました。欲張りな少女のお小遣いは全部なくなりましたが、彼女は満足感にひたっていました。
翌日、その光景を偶然見たクラスメイト達が彼女に話しかけました。
その日、少女に友達ができました。
彼女の高校が決まりました。
その頃、友達は前に出来た子たちだけでした。少女は少し不満な気持ちもありましたが、居るだけ素晴らしい事だ、と自分を納得させました。
合格通知が届いた翌日、学校に不審者があらわれました。不審者は前々から学校に忍び込んでいたらしく、爆弾を何か所かに設置していました。
不審者は言いました。「可愛い女の子を体育館倉庫に集めろ! そしたら爆弾は解除してやる」
恐怖に怯えた生徒達の一部が、可愛いと評判の女子を集めました。先生たちは、それを止めようともせず、ただただ黙認していました。集められた少女の中には欲張りな少女も居ました。
不審者は、飢えた顔で、集められた女子達を舐める様に見ました。女子達は、これから自分が受けるであろう痛ましく惨たらしい事への恐怖で涙を流していました。
しかし、欲張りな少女は全く動じていませんでした。
むしろ、彼女は笑っていました。
「よ〜し、皆服を脱げ。そうすればお前達は殺さないでやる。まぁ学校は爆破させるけどな」
皆、悲鳴を上げ、体育館倉庫から出ようとしました。しかし、外側から鍵が掛かっており、逃げられませんでした。
「オラオラ!! 抵抗するとお前らも殺すぞ! 早く脱げって言ってんだよ!」
不審者はナイフを取り出し、女子らを脅しました。皆凍りつきました。
その中で、欲張りな少女だけが服を脱ぎはじめました。
「おっ、素直で良い子だな」男は汚い笑みを浮かべます。「君は絶対に殺さないであげるよ。君だけはね」
欲張りな少女はその言葉を聞いた時、眉をぴくりと動かしました。
「私だけ?」
「そうだ。君だけだ。まぁ他の子も脱いだら殺さないであげるが……」
「嫌だわ」
「あ? ――おわっ!」
欲張りな少女は、脱いだブラウスを不審者に投げつけました。不審者はブラウスで顔を包まれ、一瞬隙を見せました。
「私だけじゃ足りない。全員助けなさいよっ!」
少女はやはり欲張りでした。
近くにあったバスケットゴールを出す時に使う棒状の器具を手にとり、思い切り振りきりました。Yシャツをやっとこさ顔から取った矢先、不審者はフルスイングで放たれた棒で頬を殴られ、その衝撃で壁に勢いよく頭をぶつけ、気絶してしまいました。
ブラウスを拾い上げ、着直す少女に、女子達が涙ながらに笑顔を浮かべて駆け寄りました。皆、目を輝かせて欲張りな少女を称え、感謝していました。
体育館を出て、事情を先生に説明すると、先生たちは皆身勝手ながらも感動し、他の生徒達もその話を聞いて、欲張りな少女にねぎらいの言葉を投げかけました。いつの間にか、少女は胴上げされていました。
少女は高校生になりました。
しかし、欲張りな性格は依然として変わっていません。変えるつもりもないようです。
恐らく、神様が「君一人だけの願いを叶えてあげよう」と言ったら、彼女は言うでしょう。
――私だけじゃ足りないわ。
――全員の願いを叶えなさい。 - 2009-11-03 23:56:07公開 / 作者:湖悠
■この作品の著作権は湖悠さんにあります。無断転載は禁止です。 - ■作者からのメッセージ
珍しくライトな感じです。こういうのもありかなぁ、と思って書いてみました。とてもしつこいです。“欲張り”って言葉何回使っただろう(汗)
祭りムードはまだ続いてますね。こういうのは大好きです^^
11月03日:訂正。
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こんにちは! 羽堕です♪
欲張りというのも、見方を変えると良い物なんだなって素直に思えました。制限された中にいるのは楽だけど、その枠を超えて望む少女は無謀とも思える勇気に私には思えるけど、どこかで、ちょっと憧れる部分もあるのかなって感じました。取り合えず方向にいって良かったですw
であ連載の続きも楽しみにしています♪2009-11-02 17:49:18【☆☆☆☆☆】羽堕はじめまして湖悠様、頼家と申します!
作品を読ませていただきました。
いやー痛快、爽快とはこの事をいうのでしょう。冒頭は、題名もありなにやら説法話のような暗い話を想像していたのですが。読み進めると一転、どうやら某役者様の「二兎を追っていたら三兎めがやってきた」のようなお話で、読み終えた後スッキリいたしました^^こう言う話は大好きです……あやかりたい。
それでは、次回作を心よりお待ちしております!
頼家2009-11-02 18:07:15【☆☆☆☆☆】有馬 頼家拝読しました。水芭蕉猫です。にゃあ。
これは!!! どこか切ないムードが漂う少女シリーズで、物凄い明るい少女が出てきたと喜んでいます。そうですね。欲張りってそういう見方をすれば、どこまでも善意を孕んだものになるのですね。多少無茶で無謀だろうと、欲の皮が突っ張ってりゃ多少のことはどうでもよくて、全てを手に入れるか、もしくは全てをやらせるまで気がすまない。独りよがりだと「なんだこいつは」になるけれど、皆に利があればそれを咎めるものは居ないのね。
なんかつらつら書きましたが、カラリと晴天のような少女はとてもよかったです。2009-11-02 23:47:49【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫羽堕さん>>
童話のアンチテーゼ的なものを書きたいなぁと思い、構想を練ったら、「性格が悪い少女が、その性格の悪さで周りの悪事を解決する」というのが思い付き、すぐさまパソコンを開いたわけです。逆に考えると色んな可能性が見えて面白かったです^^
欲望にうもれた少女なので、あの行動が勇気ある行動だったのかは、描いた自分でもわかりませんが、しかし結果オーライなら文句なしですね。結果的に彼女は学校の生徒のほとんどの信頼を手に入れたわけですから^^
有馬 頼家さん>>
初めまして^^
俺も題を始めに決めた時は「こりゃバッドエンドしかなさそう」と思っていました(汗) 痛快、爽快な話を自分が描けたなら、もう鼻血が出るくらい幸せですw
後味の良い話をかけてよかったです^^
また今度もよろしくお願いいたします。
水芭蕉猫さん>>
ちょっと空気読んでないかなぁ、俺。と心配しつつも投稿しましたよ(笑) 何か、何の不思議な雰囲気も持たない少女ですね。欲張りで、すぐに思った事をしてしまう困った奴ですが。
無謀で無茶で、ちょっぴりお馬鹿な少女を書けてよかったです^^
世の中にも、小さな事を気にしない、痛快な欲張りが増えてほしいものですな。
皆さまご感想ありがとうございましたっ!
2009-11-03 00:13:12【☆☆☆☆☆】湖悠こんにちは。
うは、やられた。最後の一文、私には、少女が女神に見えました。我が儘とかではなく、民衆を率いる現人神。
とても明るく元気を貰えるお話でした。
では、またいつか。2009-11-03 04:13:28【☆☆☆☆☆】ミノタウロスこんにちは。
うーむ。そう来たか。
冷静に考えると都合の良すぎるストーリーだけど、描写がほとんどないので寓話みたいに読めました。「ものぐさ太郎」の逆みたいな? ちょっとちがうか。でも、そんな感じ。
少女のキャラも、陰影も色気も(脱ぐにもかかわらず)無くて逆によかったです。
えーと、ただ、先生が可愛い子を選んで集める、というのは、いくらなんでも無さそうだなあ、というのと、女の子の制服のばあいも「ワイシャツ」っていうのかなあ、「ブラウス」なんじゃないかなあ、と思いました。でも細かいことなので、作品の面白さに影響ないですよ。2009-11-03 08:54:47【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウこんばんはー、再びお祭り巡りのもげきちでっす。
おおー、これは面白い。純粋な物欲ってこんなに気持ちいいんだw
ソドムの市のような展開があって、うげげ? と思ったら素晴らしく裏切られて読んでる自分も気持ちよくなりました。おー、湖悠さんやるぅ! なんておこがましくも思ってたり。
とても面白かったです! ではでは〜2009-11-03 17:33:56【★★★★☆】もげきち作品を読ませていただきました。オチがいいなぁ。最初は主人公が強欲故に不幸の道を進むのかなと思っていたら、途中から明るい方向になり、そしてこのラスト。楽しかったですよ。描写とか排しているけど、それがかえって童話的な雰囲気を醸し出していてよかったです。しかし、強欲がこんなにも清々しく書かれているのは湖悠さんの力量ですね。では、次回作品を期待しています。2009-11-03 23:30:32【☆☆☆☆☆】甘木ミノタウロスさん>>
一人だけじゃなく、全員の幸せをねがう。それは確かに女神のような慈悲深い心の持ち主だからこそ思えることかもしれませんね。少女は欲深いだけですが^^
終わった後、明るい気持ちになれるように最後の文章を書いたので、とても嬉しいですっ。
中村ケイタロウさん>>
まぁ、都合の良い話ですよね。童話を意識した面は、丁寧語を使った時点であったので、逆に描写がなくてよかったとホッとしています。
先生じゃ不自然っすなぁ。ちょっと訂正してみます。ブラウス!! きゃーー! 間違えてしまいました(汗) なんてこったい。こっちも訂正しておきます。
ご指摘ありがとうございまっす。
もげきちさん>>
俺も明日から再びお祭り巡りを始めようと思います。今日は休日でちょっとバタバタしてたので。
ソドムの市を調べたら、もの凄く惨たらしいものだったということがわかり、「うわっひゃあ……;;」となってしまいました(汗) 俺にはこんなドロドログチャグチャとしたものは書けないっすw
ポイントまで加算してくださって本当にありがとうございます。創作意欲がぐんぐんと沸いてきますよ^^
甘木さん>>
不幸のラストかと思いきやのハッピーエンド。色んな映画や漫画を見て、とても憧れていました。何か凄くうれしいですw
最初の予定では、主人公にマッチ売りの少女的な感じで死なせるつもりだったんですが、生存エンドにしといてよかったです^^
皆さまご感想ありがとうございましたっ。感謝の限りです!
2009-11-03 23:53:55【☆☆☆☆☆】湖悠計:4点 - お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。