『リベンジ〜もう一度チャンスを!』作者:美散 / ِE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
どこにでもいる普通の小学生・レナ。しかし親友の舞と喧嘩したまま、舞は転校してしまう。やり直すためにレナは、仲間たちと異世界へと旅にでる。
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原稿用紙約9.28枚
プロローグ
 冬の風が吹きつける駅のホーム。朝の空気は冷たく澄んでいて、少女の肌に刺さる。辺りには雪が薄く積もっている。
 そんな中、ガランとしているその場所に立つ、一人の少女がいる。
 山城(やましろ) レナ。12歳。
 彼女は一人の少女を待っていた。吐く息も白くなる12月の朝に、物陰に隠れるようにして。
 少しもしないうちに、レナと同じくらいの歳の少女とその家族らしき人たちが現れた。その少女は何かを探すように辺りをきょろきょろしている。
 目が合いそうになると、レナはあわてて隠れる。

――だめだなぁ、私。

 レナは大きくため息をついた。
 少女はしばらく周りをうろうろしていたが、あきらめて列車に入っていったようだ。レナは少しだけ近づいて、列車の中を見る。

――舞……。

 列車の中の少女はうつむいていたが、時々顔を上げて窓の外に何かを探しているようだった。
 やがて列車は音を立てて走り出した。レナは列車の姿が見えなくなるまでずっとその場を離れなかった。
 たまっていく涙をこぼさないように、こらえることしか出来なかった。


第一章
 帰り道、レナは一人で、駅から出た。
 朝の9時。冬休みということもあってか、子供たちがたくさん出歩いて遊んでいる。

――みんな、気楽でいいなぁ。

 そんな中、一人の少女が向かい側から歩いてきた。

――何だろう? この感じ。
 
 レナはその少女から目が離せなくなった。確かに可愛い少女では合ったが、特別には見えない。年のころは、レナと同じくらいか少し年上くらいだろうか。
 少女はこちらに気づいて、微笑みかける。そして、レナに近づいてきた。
「おはよう。はじめまして」
「え……? あ、はじめ……まして……?」
「私は裕香。ね、あなたは?」
「私? レナ。山城レナ」
 裕香はレナをじっと見つめた。そうしていると心の端まで見透かされているような気分になる。
「そう……レナ、ついてきて!」
裕香は強引にレナの腕を引っ張って走り始めた。
「は? え? ちょっ待……ッ!?」

――うわっ何!? この速さ

 少女はまるで自転車のような速さで走った。レナはほぼそれに引きずられるような形で走った。
 公園の裏の小さな森に差し掛かったとき、少女の足が止まる。レナは息を切らせてその場に座り込んだ。
「な、何!??」
 すると、周りから二人の少年と少女が出てきた。レナは裕香に感じたものと同じ感覚になった。その二人からも、目が離せなくなりそうだ。
「紹介するわ。翔子と、健太」
「初めまして」
「あ、初めまして」
レナは何がなんだか分からなくなって混乱した。この唐突にでてきた翔子という少女と健太という少年は、どこにでもいる普通の子供なのに、何故だかレナをひきつける何かを持っている。
「さて、ここからが本題。レナ、歳はいくつ?」
「12歳。小6」
「じゃあ次の質問。『パワーストーン』って、知ってる?」

――パワー……ストーン?

 すると、翔子が何かを取り出してレナに見せる。
「これなんだけど……」

――何だろう? 石……かな。とっても綺麗だけど。

「パワーストーンはいわゆる宝石に近いもの。何か力を秘めていて、人が身につけると何かの力が湧いてくる宝石。それがパワーストーンなの」
翔子の持つパワーストーンは赤く輝いていた。レナがそれに見入っていると、裕香が続ける。
「次は、私たちのこと」
 すると、裕香、健太もパワーストーンを取り出して、何かささやいた。
 レナは言葉を失った。
 三人の持つパワーストーンが光を発している。周りの草木はざわめきを止め、風は止まり、雲も動かない。不気味な静けさの中、光は強まり、辺りのものをすべて包み込む。レナは強く目を瞑った。

――!

 目を開いた時、レナはまた驚いた。
 さっきまでいた3人の顔が変わっていたのだ。
 日本人とは思えないその顔つき。しかし3人の服装は変わっていないので、3人に間違いなさそうだ。
「レナ、これが私たちよ。私たちはここでは日本人の格好をして、偽名を使って暮らしていたの。私は、裕香じゃなくてセレンティア。翔子じゃなくてヴァネッサ。健太じゃなくて、クリス」
セレンティアは栗色の髪をしている美人だ。ヴァネッサは赤髪の元気な少女、クリスはブロンドの好青年、という感じだ。
「え……えぇ!? ちょっと待って?」
「色々驚かせてゴメン。私たちは見てのとおり、普通の人間じゃないわ」
 レナは頷いた。確かに普通じゃないことは分かる。
「私たちはこの世界の人間ではない。ここと違う、別世界から来た人間なの」
「別……世界……」
レナは混乱しながら必死に話を聞く。
「えぇ。私たちはパワーストーンの秘められた力を引き出して魔法を使うことが出来る」
「ま……魔法!?」

――――はい??

「パワーストーンには属性がある。私たちはその属性の魔法を使うことが出来る。使えるパワーストーンの種類はその家柄によって違うの。例えば私はサファイアで風魔法。ヴァネッサはガーネットで炎魔法。クリスはエメラルドで草魔法が使えるわ」
「えっと……それと私に、何か関係があるの?」
もちろん今の説明で納得いくわけがないが、とりあえずそこを明確にしたかった。
「私たちは属に石使いと呼ばれる。でも、石使いだけではそのパワーストーンの力を十分に出し切ることが出来ないの。それには、こちらの世界に住むもの……いわゆる“本物の人間”の力が必要なの。その魔力を持たない人間の子供が、一番パワーストーンの力を引き出すといわれている」
「その人間が……私?」
3人は頷くが、レナは全く信じられずにいた。
「ハ……ハハ。そんな話、信じられない。私はまだ子供だけど、それくらいの常識はあるつもりよ。冗談やめて。じゃ、私帰るね」
一刻も早く帰りたい気分だった。
 しかし、見えない壁にさえぎられるように、ある場所から先に進めない。

――?

「ここはすでにレナのすむ世界とは違った場所。レナの世界と私たちの世界をつなぐ場所だから、レナ一人では通れない」
「そんな……」
これまでずっと説明していたセレンティアが立ち上がり、もう一度サファイアを取り出す。
「レナ、信じられないっていったよね」
「え? うん」
「証拠があったらいいのよね?」
「し、証拠?」
 するとセレンティアが何かをつぶやく。すると、またサファイアから光が出てくる。

――また……だ。

 次に目を開けたとき、レナの目の前に風竜が現れた。

――!

風竜はレナのほうへ飛んできた。そしてレナに当たる寸前のところで消滅した。
「これが、風の魔法」
レナは呆然としていた。これまで教わってきたすべての常識を覆された気分だ。その場から動くことが出来なくなった。

――この人たちは、本当に……魔法を……。

「レナ、信じる?」
「……信じる。信じます」
「でも待って。私がその人間になるかは、私が決めることでしょう?」
「もちろん。あなたが嫌というなら、私はレナの記憶を消して駅まで戻すわ」
「じゃあ、私の回答は聞かなくても分からない?」
セレンティアは、一度目を伏せて、口を開いた。
「断るでしょうね。突然すぎる」
「だったら……!」
「レナ、あなたやり直したいと思わない?」
「?」
「後悔しているでしょう。出来ることならもう一度、もう一度チャンスが欲しいと思わない?」
「え?」
「私たちは石使い。あなたの力になれるの。もちろん異世界にいっている間は人間界の時は止めておくから」
 レナは一瞬で今までのことを思い出した。
「どうして……」
「ごめんね。少し見てた」

――舞とはやり直したい。
――それは確か。出来ることならって、何度も思った。

「レナ、僕はリベンジを応援する」
「みんな、あなたの力が必要なの。私からも、お願いします」

――どうするって?
――そんなの初めからわかっているじゃないか。
――――やり直せるなら、なんでもやるって。

「分かった。私も行く」
「今……なんて?」
「協力する。私も、みんなと行く」
セレンティアたちは、本当に何度もお礼を言った。
「有難う!! 本当に有難う」
 「クリス、あけて?」
 クリスはエメラルドを使って何かを唱え始める。今までよりもさらに強い光が、あたりを包み込む。
 レナは硬く目を瞑った。
「レナ、本当にいいんだね?」
「もう決めたから」
「いくよ」
 光が、さらに強くなる。
 レナはその中で、いつしか気を失っていた。
 そしてそこから、レナたちの過酷で辛い旅が始まったのだった。
2009-11-01 11:53:05公開 / 作者:美散
■この作品の著作権は美散さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めての投稿ですので、ぎこちないところだらけだと思います。
チョクチョク更新するので、読んでいただければ光栄です。
お手柔らかにお願いします><
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは! 羽堕です♪
 話の展開が早いような気がしました。一瞬で顔立ちなどが変わったら魔法の存在を、風の竜を見なくても、ある程度は信じられたんじゃないかなと。それと人間界の時間を止められるだけの力があるなら、レナの助けなんていらないんじゃないだろうかと少し思いました。
 冒頭の駅の雰囲気は良かったです。レナの決心の早さも、舞を想えばこそなのかなとも思えました。これから異世界を、どう書かれるのか期待しています。
であ続きを楽しみにしています♪
2009-11-01 13:53:20【☆☆☆☆☆】羽堕
はじめまして美散様!突撃する落ち武者、頼家と申します。
作品を読ませていただきました♪
い、いや〜ジェットコースター展開。いきなりの魔法行使とパワーストーン……なにやら冒険心をくすぐる作品の臭いがいたします^^はたして何をリベンジするのでしょうか?
少し気になった点といたしましては、情景描写などを入れて、状況把握やテンポの調整等をなされては如何でしょうか?さらに物語りの面白さが増大するのではないか……っと小生意気にも想いました^^
それではワクワクしながら、続きをお待ちしております!
            頼家
2009-11-01 16:49:13【☆☆☆☆☆】有馬 頼家
作品を読ませていただきました。物語の展開が早すぎるかな。もっと地の文(風景や人物の描写、レナの心の動き)などを書き加えた方が、物語世界に深みが出て読者を物語世界に引っ張り込んでいけますよ。では、次回更新を期待しています。
2009-11-03 17:47:07【☆☆☆☆☆】甘木
こんばんはー、はじめましてもげきちと申しますでっす。美散様の作品拝読させて頂きました。
先のお二人が仰っているように、かなり展開が速いですね。書きたいへ早く行きたい! 早く行きたい! そんな気持ちが見える気がします(間違ってたらすみません)
でも、そこをぐっと耐えて書きたい部分へ行くまでの接続に膨らみ……ここで言うなら状況描写や、主人公の心情でしょうか、を頼家様の仰るように――今の文章を骨格としてちょっと肉をつけて見るのもいいかもです^^ 書くことは苦しくも楽しいですよね。続きも楽しくドンドン書いて言っちゃってください! 色々失礼しました。もげきちでしたー

あ、自分もパワーストーン好きですw 今はタイガーアイとファントムクォーツにハマってます。
実際力もらえますよねー、とか、うわ、すみません余計なことを書いてしまいました。ではでは!
2009-11-03 17:48:27【☆☆☆☆☆】もげきち
最高です!続きを、まっています
2010-04-09 18:44:52【★★★★★】鈴音
計:5点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。